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ル・コルビュジエとクセナキスの共作を写真空間で再解釈する「音楽の建築」

写真家 石塚元太良の個展「Ondulatoire」が、2022年2月5日(土)から3月31日(木)までの期間、六本木のアートギャラリー KOTARO NUKAGAにて開催される。

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石塚元太良《Ondulatoire #003》2017/2022

写真空間の再解釈を徹底して作品を創り出してきた石塚。「デッドパン」のスタイルを用いた石塚のアート写真は、大げさな感傷や主観から切り離された無表情な表現で、世界の全てをイメージとして平面的に見るデジタル写真の時代に、別の目で見る世界の姿を私たちに経験させる。

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石塚元太良《Ondulatoire Chandigarh #013》2018/2022

20世紀の偉大な建築家であるル・コルビュジエ(1887-1965)は合理的精神に基づき、建築に新素材やドミノシステムなど革新的な建築方法を積極的に持ち込むことで、建築の造形を自由にしたことで知られる。そのコルビュジエは自身の設計したリヨンのラトゥーレット修道院(1960年竣工)の開口部を弟子で建築家、数学家や作曲家でもあるヤニス・クセナキス(1922-2001)にデザインをさせた。整然と整理されてしまう対位法的な音楽を真っ向から否定したクセナキスは、音楽に複雑性を取り入れ、ミクロには揺らぎを、マクロにはダイナミックな大きな塊として表現される音楽を作った。ラトゥーレット修道院の開口部のデザインは彼の代表的な曲である『メタスタシス』の譜面との間に共通するものがあるとも言われている。

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石塚元太良《Ondulatoire #002》2017/2022

クセナキスが「オンデュラトワール(波状の)」と名付けた不均質な幅にデザインされたルーバーは、ラトゥーレット修道院という空間に音楽的な要素を加えることを高度に成功させており、この建築空間に新たな解釈を作り出している。彼の作った開口部に差し込む太陽の光は譜面である窓枠を通して影を地面に創り出し、閉鎖的な修道院という空間の中で続く修行の1日、1年といった日々が、周期の中で揺らぎながら変化していることを気がつかせる瞑想的な場となる。この揺らぎこそが「オンデュラトワール」であり、ここで光と影によって奏でられ続ける管弦楽曲のタイトルであるとも言える。

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石塚元太良《Ondulatoire Chandigarh #001》2018/2022

石塚が今回作品のモチーフとして選んだのはクセナキスの作り上げた譜面に記され、差し込む光によって、この場所で演奏されたシンフォニーである。石塚はラトゥーレット修道院の回廊で年間を通して奏で続けられる演奏の揺らぎの中から、冬至と夏至の日の場景を選び出している。これによって揺らぎの最大幅に線を引くこととなる。つまり、この日々揺らぎの中でつづく演奏を大きな塊、全体像としてその広さを捉えることとなる。

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石塚元太良《Ondulatoire #001》2018/2020 (C)坂本理

本展「Ondulatoire」はコンダクター石塚元太良によるシンフォニー「オンデュラトワール」のコンサートである。建築、音楽、写真という3つの領域を思考の中で再編し、「音楽を観て、写真を聴く」空間として堪能できる展示会となっている。

石塚元太良(Gentaro Ishizuka) プロフィール

1977年、東京生まれ。2004年に日本写真協会賞新人賞を受賞し、その後2011年文化庁在外芸術家派遣員に選ばれる。初期の作品では、ドキュメンタリーとアートを横断するような手法を用い、その集大成ともいえる写真『PIPELINE ICELAND/ALASKA』(講談社刊)で2014年度東川写真新人作家賞を受賞。また、2016年にSteidl Book Award Japanでグランプリを受賞し、写真『GOLD RUSH ALASKA』がドイツのSteidl社から出版される予定。2022年にはKOTARO NUKAGA(六本木)の個展の他、アーツ前橋のグループ展や新国立美術館で開催されるDOMANI・明日」展にも参加予定。

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石塚元太良 (C) Mina Soma

石塚元太良「Ondulatoire」開催概要

会期2022年2月5日(土) - 3月31日(木)
会場KOTARO NUKAGA(六本木)
時間11:00-18:00 (火-土) ※日月祝休廊
ウェブサイトhttps://kotaronukaga.com/news/1948/