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伝統織物産業と現代アートが織りなす布の芸術祭

国内唯一の布の芸術祭「FUJI TEXTILE WEEK 2023」が、テキスタイルの街・富士吉田市で2023年11月23日(木・祝)から12月17日(日)まで開催される。今年で3回目を迎える本展は「アート展」と「デザイン展」で構成され、今年のテーマは「BACK TO THREAD / 糸への回帰」。

「アート展」では、国内外11組のアーティストがテキスタイルをテーマに、織物の産地として1000年の歴史を持つ富士吉田の旧糸屋や工場跡地を舞台に作品を展示。南條史生を総合ディレクターに、キュレーターにアリエ・ロゼン、丹原健翔らも加わり、海外の美術館やアートフェアに出展する国際的なアーティストから今後の活躍が期待される若手まで、多彩なアーティストが参加する。織物産地の歴史、物語をリサーチし、機屋との対話を重ねながらテキスタイルから発想される多様な表現が展開される。

「デザイン展」では、伝統的な織物である甲斐絹(かいき)を様々な視点から読み解く。現在地域内で保管されている数百点を超える資料の中から厳選された生地や羽織、当時使われていた道具をさまざまな視点から鑑賞するアーカイブ展示をはじめ、新たな創造の契機を目指し、ビジネスマッチングプログラムや様々なイベントを開催する。

また今年は、富士山の世界文化遺産登録10周年を迎えたことから、「富士山借景」を企画し、富士山ビュースポットを特別開放する「FUJI SKY ROOF(フジスカイルーフ)」やフォトコンテスト、またアーティスト達が参加するトークイベントなど、より多角的に楽しめるイベントが実施される。

「アート展」の見どころ

世界の6の地域と国内から11組のアーティストが参加

世界6の地域と国内から11組の現代アーティストが参加。彫刻、写真、刺繍作家、パフォーマーら多岐にわたる表現形態で、代表作からFUJI TEXTILE WEEKのために制作した新作まで多角的な視点でテキスタイルにアプローチする。参加アーティストはネリー・アガシ、池田杏莉、沖潤子、清川あさみ、スタジオ ゲオメトル、顧剣亨、筒 | tsu-tsu、津野青嵐、PACIFICA COLLECTIVES、ユ・ソラ、ジャファ・ラム(50音順)。

テキスタイルの街で制作されるサイトスペシフィックな新作インスタレーション

これまで旧糸屋や喫茶店など空き家を展示会場に取り入れてきたが、今年はかつての機織機の工場跡地、旧山叶(やまかの)がメイン会場に追加された。地上約9m、幅約20mの工場跡地では、シカゴを拠点に活動するネリー・アガシが、現地でのリサーチを重ね、山梨県産業技術センターの技術提供を受け制作した生地を使用し、ダイナミックな大作を発表する。一方、顧剣亨(こ・けんりょう)は、旧山叶の事務所で、複数の写真データをピクセルごとに編み込む独自の手法で、傷などの都合により一般に流通しないB反に富士吉田の異なる時代の地図を織り込んだインスタレーションを発表する。

テキスタイルによる多様な表現で織物産地を再考する

清川あさみの作品は、写真や雑誌、本や布に刺繍を施す独自の手法で、ソーシャルメディアなど大量の情報が氾濫する現代社会で、個人のアイデンティティの内と外の間に生じる差異や矛盾に焦点を当て可視化する。また捨てられた傘など廃材を使った作品づくりで知られる香港のアーティスト、ジャファ・ラムが制作する、B反を使用した雲のような新作は、鑑賞者に見ることを問いかける。展示ではアーティスト独自の着眼点で、テキスタイルによる多様な表現の作品を発表する。

地域との交流から制作される作品群

地元の方から古着や思い出の品を提供してもらいインスタレーション作品を制作するのは、「喪失」と「還り」をテーマに作品を制作する池田杏莉。人との繋がりが失われ、捨てられようとする道具たちに焦点を当てる。また地元山梨を拠点に活動するドキュメンタリーアクター筒は、戦後に富士吉田市の繊維産業を牽引した織り手を演じるドキュメンタリーアクティング作品を発表。これは実在の人物を取材し、演じる表現方法で、地域の人たちから話を聞く中で、繊維産業の地で長年繰り返されてきた物語を演じる。また付随して、現地に住む人々から直接聞いたオーラルヒストリー(地域の歴史、物語)を筒が演じ直す音声作品も発表。参加者はガチャガチャで音声キットを購入すると、通常は見落としてしまう各会場への道中が、さまざまな個人史を聞きながら歩く、オーディオ・パフォーマンス体験となる。

作品紹介(一部)

ネリー・アガシ《mountain wishes come true》
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技術協力:山梨県産業技術センター
制作協力:槙田商店
ネリー・アガシ 参考作品 From the exhibition No Limestone, No Marble The Quiet Before the Storm 2022 Photo by Clare Britt
Sound: Ryan Packard

清川あさみ 《わたしたちのおはなし》
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参考作品|Serendipity, 2023

デザイン展「甲斐(かい)絹(き)をよむ」の見どころ

デザイン展では産地で100年前に織られていた幻の織物「甲斐絹」を多角的な視点で解き明かし、再発見する展示会を開催。織物を構成する「textile」は、ラテン語の「texere」から派生しており、これは「織る」または「組織する」という意味がある。テキスタイルは、糸や繊維が織り合わされて形成されるが、それだけでなく、文化的、歴史的な意味やメッセージも内包している。このようなテキスタイルから得られる情報は、言葉や文脈と同様に、現代の人々にもその当時の思い、時代背景、歴史、人々の営みを伝える力がある。現代では「甲斐絹(かいき)」を作る技術も、その意味やメッセージを理解する知識も失われているが、展示では4つのキーワードで、失われた「甲斐絹」に再び光を当て「甲斐絹」が持つ未解明の美と深みに迫るとともに、新しい解釈と理解が生まれることを目指す。

富士吉田で今を飾る建物と風景

織物産地の歴史がつまった展示会場

富士吉田には街のいたるところに織物産地の歴史と物語が詰まった建物がある。FUJI TEXTILE WEEKでは、使われなくなった織物関連の工場や倉庫、店舗などを展示会場として再利用することで、産業の記憶の保存と街のアイデンティティ形成に取り組んでいる。

展示会場風景 2023年 新たに展示会場となった旧山叶(やまかの)

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2023年の総合案内所および、アート展会場として再生した旧山叶の建物。鉄鋼一次製品卸売業(織機の部品など)を扱う商社だった。

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旧山叶の社屋となりの工場跡地。2023年は地上約9m、幅約20mの広大なスペースで、ネリー・アガシによるテキスタイルを用いた巨大な作品が展示される。

展示会場風景 2022年 かつて糸屋だった建物を再生
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撮影:吉田周平

FUJI TEXTILE WEEK 2022では、かつて糸屋だった建物を再生しアート展の会場にした。

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《頑健な情報帯》 村山悟郎 撮影:吉田周平

FUJI TEXTILE WEEK2022旧糸屋での展示風景

織物産業と共に栄えた飲み屋街「西裏」

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会場となる富士吉田市の中心市街地、下吉田は機屋と商人、そして飲み屋を営む人々の街であった。街の真ん中を走る「本町通り」と、その両脇を走る「東裏通り」「西裏通り」、この3つの通りを中心に人々の暮らしが営まれていた。織物産業が栄えた時代、東裏からは機織りの音が、西裏からは酔っ払った人々の笑い声や芸者の三味線の音色が聞こえてきたという。現在の西裏 新世界乾杯通りは、一度は衰退し廃墟街となったが、近年地域の人と移住者たちが力を合わせ再生中で新店舗が次々とオープン。FUJI TEXTILE WEEKでは、西裏の地域も会場として様々なコンテンツを配置し、織物産業を通して発展した街全体の物語を来場者に伝える。期間中には台湾のクリエイターとのコラボ企画を同時開催予定。

「FUJI TEXTILE WEEK 2023 開催概要」開催概要

会期2023年11月23日(木・祝)~12月17日(日)
時間10:00 - 16:00(各会場への入場は15:30まで)
休み期間中の月曜日(11月27日、12月4日、12月11日)
会場山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺地域
料金一般 1,200円(税込)※高校生以下及び18歳未満、65歳以上、心身に障害のある方及び付添者1名は無料
チケット購入PeatixまたはArtstickerより購入
主催山梨県富士吉田市
企画運営FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会
URLhttps://fujitextileweek.com/