新しい言語アートとしての書道とは何か
ADF(NPO青山デザインフォーラム)は、アート展「ADF Art Gallery Project」の20回目として、「SHODO NEW WAVE」を2023年3月4日(土)から3月13日(月)まで開催いたします注。美術手帖の展評、アートコレクターズでも特集された新たな美術の一潮流としての「新たな書道=ART SHODO」を展観することを目的とした今回の開催を、「これが新しい書なのか?」という驚きと共に、是非お楽しみください。
既にコマーシャルギャラリーから作品を発表しプロデビューしている書道家、文字をモチーフとしたアーティストたち、そして新人を加えた、新しくそして個性豊かな意欲に溢れる展覧会を目指すこの企画は、年に数回、新しい言語アートとしての書道とは何かを紹介します。
参加アーティスト
Ouma(オーマ)
現代アーティストとして、山本尚志と同じウナックトウキョウからデビュー後、発表の場を海外に移し、世界各地にて現代アートの作品を発表。2020年ごろから、オノマトペを意識した言語アート的な作品を次々と発表し、注目を集めている。アート書道の展覧会「SHODO NEW AGE」にもゲスト参加。タグボート所属。精力的に作品を発表している。
プロフィール
東京都出身、元獣医師。臨床医時代に100以上の動物の絵をご家族に贈り、小さな絵に感動していただいたことをきっかけにアートの世界へ。アートを通じて獣医師の仕事の本質である「ヒトの心の癒し」が全うできる方法はないかと考え始める。
2016年よりSwatch Art Peace Hotel(上海)、ACCR(フランス)、Danish Art Workshops(デンマーク)など世界13か所のアーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加。
世界各地を渡り歩いた経験をもとに、これまで考えてきた生命観を医療に結び付けた「社会治療」という概念を提唱。 ヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」を踏襲しながら、すべての人を社会という生命体を治療する医師に変え、社会から治療される患者にするという「社会とヒトとの関係」について思考する。創作を通じて、人と社会の最適な関係性を模索している。
岡淵静
この世に生まれる文字の数々がごく細やかなものであることを、我々に伝えてくれるようである。心に届く声、そして世の中に伝わるはずの文字がここでは消えるか消えないかくらいの、そんな誤差によって導き出されているかのようだ。僧侶でもある彼女の祈りの声は、そんなふうに目の前に降り注ぐ。
プロフィール
1990年兵庫県生まれ
KOUSAI
KOUSAIは一行詩を書く。何気ない日常の一コマだったり、辛辣な一言だったりする。それは時にユーモラスであり、時に心に残る何かになっている。ヒトは言葉を発するときに「たった一言」から、いつもスタートする。その意味において、KOUSAIの作品は常に新鮮。それは新鮮な気分で発話することから、彼女の書が成立するからにほかならない。掛け軸を開いたときに目に飛び込むのは、作家の人生における一コマである。
プロフィール
1977生生まれ、金沢市出身白山市在住。幸才書道教室主宰。2021年ASF富山剛成賞受賞、2023年より船舶、漁業権を取得し、船上で作品制作を行う、陸を捨てた書家である。
Kofu Hijikata
何種類かの赤いパステルコンテで書かれている作品は、書かれる文字が全て同じ赤ではない。その理由は、その言葉の性質と関係しており、作者の微妙な心情、意識の差異、そこから生じた出来事などを表している。書かれる言葉はその都度異なり、アクションにも変化が加わる。文字群が示す「図形」は毎回異なり、同時に常に流動的かつ微妙な意識の変化が表れている。
プロフィール
1976年愛媛県松山市生まれ、現在は横浜在住。2021年より芸術運動「ART SHODO」に参加。全国で開催されるグループ展・企画展に出品(東京・神奈川・京都・大阪・福岡)。
2021年「ART SHODO FESTA2021」山本尚志賞受賞
2022年4月 企画展「書の現在」(岐阜・田口美術)
Saori Kunihiro
新人のSaori Kunihiroは、円形のパネルに仮名文字の羅列が印象的な作品が特徴的な作家。そもそも古典の仮名には「ちらし書き」の概念があり、どこに文字が書かれるかは自由だが、彼女の場合は意図的に、そして時に偶然に書きつけられる。それは場が円形であるが故である。書かれる文字群は直線的な「行」の概念を予め離れ、それが故に作品はさまざまなニュアンスを育み、変幻する。
プロフィール
書家 / アーティスト
1985年広島県出身、京都在住。6歳から書を始める。会社員を経験したのち、2011年に書を基盤とした活動のため上京。2015年、ひらがなをモチーフにしたジュエリーブランドを立ち上げる。2019年、京都へ拠点を移し、現代アートのアーティストとして活動中。
2020年 グループ展「ART SHODO FESTA 2020」(東京)
2021年 京都市・パリ市共同プロジェクト「Savoir-faire des Takumi 対話と共創」
2021年 アートフェア「ART FAIR TOKYO 2021」 (東京)
2023年 グループ展「MAGIC HOUR」(L.A.)
2023年 アートフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023」 (京都)
高濱渉
高濱渉の書は、繰り返し書かれるとめどないアクションの連続体として、画面いっぱいに広がる。それはまるで、細胞分裂による増幅の様子のようだ。彼の書はそんなふうに、生き生きとして見える。それは書としては理想的な成り立ちなのではないだろうか。そう思わせてくれるほどに、彼の愚直なまでの行為はこのままずっと続く。
プロフィール
1986年 北海道旭川市生まれ。現在は帯広市に在住
2009年 四国大学文学部書道文化学科卒業
2011年 授賞式の為上京し、震災に遭遇。今までの価値観が大きく変わる。
2012年 村上隆著「芸術起業論」に出会い現代アートを知る。村上隆氏に感銘を受け、GEISAIに出展(♯16 17)。
2017年 所属していた書道会をすべて退会する。
2018年 ART SHODO TOKYOに出展。以降ART SHODOの芸術運動に参加
2020年 スミワングランプリ12グランドチャンピオン大会山本尚志賞受賞
2022年 NAGOYA SHODO FESTAに出展(名古屋栄三越)
2023年 ART SHODO SELECTION in Tokyo #2審査員次点受賞
目時白珠
目時白珠の作品は、情報そのものだ。それは情報の中身ではなく、情報の輪郭を表すという意味である。「何も書いていない」社会風刺となっていて、そして何を風刺するのかも決まっていないのだが、新聞のドットのように書かれるその一つ一つを見ると、それがそのまま現代の書だとわかる。文字を書かずとも文字がそこにあることを、彼女の書は雄弁に語っている。そんな不思議な作品である。
プロフィール
1976年生まれ。岩手県二戸市出身。東京都内で「しら珠書道教室」を主宰。2018年から芸術運動「ART SHODO」に参加し、国内各地のグループ展に出展。2020年「ART SHODO FESTA」で山本尚志賞、2022年「ART SHODO SELECTION in Tokyo」で次点受賞。WebサイトやSNSで大量に消費される情報と現代生活の在り方に目を向けた作品を制作している。
2019年〜ART SHODO FESTAの各種展覧会(東京、大阪、京都、福岡)
2022年 NAGOYA SHODO FESTA(名古屋栄三越 ARTECASA)
2022年 ART SHODO GARDEN(銀座 ギャラリー枝香庵)
野口裕司
書の映像作品を発表して数年経つ。コンペでは審査員からの評価も高く、映像作品自体がまだ根付いていないこの国のアートシーンに書道から初の映像作家として昨年デビューした。まだ目新しい彼の作品を見る機会はそれだけで貴重なものである。作品はやや拍子抜けなこともあるが、それは作家の個性と言える。今後注目されるアーティストの一人。
プロフィール
1968年北海道札幌市生まれ、石狩市在住。1989年、北海道教育大学札幌校美術工芸課程、日本画研究室所属。箔や墨をベースにした平面・立体・映像の抽象表現作品を制作。現在は、書かない書道として、デジタルフォントを使った映像表現を行う。
2020年4月より、芸術運動「ART SHODO」に参加
2021年 ART SHODO FESTA in Fukuoka にて、「車窓」山本豊津賞受賞
2022年 SHODO NEW AGE(Eastern conference)にて、「つぶやく」優秀賞受賞
キュレーター 山本尚志
井上有一を世に送り出したギャラリー「ウナックトウキョウ」の海上雅臣から、次世代の書を託された現代アートとしての書道の第一人者。2015年に「ウナックトウキョウ」にて個展デビュー、その後はユミコチバアソシエイツの専属作家として、活動。ART SHODO FESTA事務局を担当。
「SHODO NEW WAVE」開催概要
会期 | 2023年3月4日(土)から3月13日(月)まで |
オープニング | 2023年3月4日(土)16:00~17:45 |
時間 | 10:00 ~ 18:00(3月4日:15:00 ~ 18:00 / 3月13日:~ 16:00) 3/5(日)、3/12(日)は完全予約制となります。日曜日にお越しの方は、090-3170-9386(山本)までお電話下さい。 |
会場 | GARDE Gallery (東京都港区南青山5-2-1 ALLIANCEビル4F) |
入場 | 無料 |