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見えないものの存在を捉え、さまざまなスケールでその実体とイメージするものの関係性を問いかける

公募展や企画展、海外派遣などを通じて、段階的、継続的にアーティストの活動を支援しているトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)は、TOKASのプログラムに参加経験のある作家を中心に、注目すべき活動を行なっているアーティストを紹介する企画展ACT Vol.5「引き寄せられた気配」を2023年2月11日(土・祝)から3月26日(日)まで開催する。adf-web-magazine-act-vol.5-signs-of-attraction-1

2018年度に開始した「ACT(Artists Contemporary TOKAS)」は、今年度で5回目となる。本展では、海老原靖、鮫島ゆい、須藤美沙を迎え、見えないものの存在を捉え、さまざまなスケールでその実体とイメージするものの関係性を問いかける。

展覧会について

海老原靖は静止された一瞬の映像、鮫島ゆいは古代遺跡の史料、須藤美沙は宇宙観測データを題材として作品を制作。それらは、知覚しても認識できないものや、失われてしまったもの、実際には目にすることが叶わないものなど、断片的な瞬間や事象を切り取っているが、その前後にある広大な時空間へと想像を誘う。また、物理的に手を動かし構築された作品からは、アーティストそれぞれの視点と豊かな想像力が窺えると同時に、遠い存在のものに対して、潜在的に好奇心や憧れ、恐怖などを抱いていることに気づかされる。本展で紹介する3名のアーティストはその視座も手法も多様で、それぞれの作品群の背後から不可視の存在が蠢き、漂う気配となって立ち現れている。

海老原靖 / EBIHARA Yasushi

「3331 ART FAIR 2022」参加:海老原は、大衆に消費される存在や薄れていく記憶の儚さを探求し、絵画や立体、写真、パフォーマンスなどさまざまな表現をしている。本展で発表する「NOISE」シリーズは、映画のビデオテープを一時停止した状態の一瞬を捉えた油彩作品。断片の連続として流れる映像が時間を引き止められたかのように固定され、走査線によって乱れる画面は静止画でありながら、動きを感じさせる。そこに描かれた女優の顔や風景は本来のストーリーとは切り離され、鑑賞者に異なるイメージを想起させる。映像の中に認識されない瞬間があることを提示することによって、生活する中でも認知し、意識に残る記憶はごく一部であることを気づかせると共に、消えていく図像と増殖するイメージの混沌を往復させる。adf-web-magazine-act-vol.5-signs-of-attraction-2

1976年茨城県生まれ。茨城県を拠点に活動。2001年東京藝術大学大学院修了。主な展覧会に「美男におわす」(埼玉県立近代美術館、島根県立石見美術館、2021)、「Garden—隙間をうめること」(KEN NAKAHASHI、東京、2021)、「Colors」(Wada Fine Arts、東京、2021)、「Sing」(KEN NAKAHASHI、東京、2019)、「BONDAGE CULKIN」(Bar星男、東京、2019)など。主な受賞歴に「エプソンカラーイメージングコンテスト」特選(2006)、「GEISAI#10」GIANT ROBOT賞(2010)。

鮫島ゆい / SAMEJIMA Yui

「TWS-Emerging 2013」参加:古来より人びとは自然信仰など「目に見えないもの」を信じ、五感で感じ取ろうとしてきた。鮫島はそうした精神性に興味を持ち、「見えるもの」と「見えざるもの」をつなぐ、あるいはその両者の境界を示すことをテーマに絵画表現を中心に制作している。本展では、近年取り組む絵画シリーズ「呼び継ぎ」を中心に、古代遺跡や使われなくなった誰かの道具、伝承、オカルトなどを題材として、多角的に空間を構成。絵画制作に「呼び継ぎ」を取り入れ、作品の中でつなぎ合わされた異なる歴史や物語を持ったイメージの断片から、そこには描かれていない存在を手繰り寄せる。また、鮫島が多用する変形キャンバスは、何かの断片のようであり、組み合わせることでまた別の次元を出現させ、遺物や言説など、手に取ることができない対象を描く際、「依り代」と称する小さな立体物を制作する。こうした行為をとおして、そこに宿る精神を捕捉し、身体的な解釈から二次元へと再構成を試みる。adf-web-magazine-act-vol.5-signs-of-attraction-3adf-web-magazine-act-vol.5-signs-of-attraction-4

1988年京都府生まれ。京都府を拠点に活動。2010年京都精華大学芸術学部版画専攻卒業。主な展覧会に「∃に接続するための方法論」(TENSHADAI、京都、2022)、「ブルーピリオド展~アートって、才能か?~」(寺田倉庫G1ビル 、東京、2022)、「Fragments of unvoiced voices」(KATSUYA SUSUKI GALLERY、東京、2022)、「UMEKOUJI MEETING vol.00 」(河岸ホテル、京都、2021)、「もつれるルーパ tangled rūpa 」(GALLERY VALEUR、名古屋、2021)など。主な受賞歴に「NONIO ART WAVE AWARD 2021」ペインティング部門グランプリ、NONIO賞など。

須藤美沙 / SUDO Misa

「TWS-Emerging 2015」参加:須藤は天体観測や神話に深く関心を寄せ、宇宙の画像や天文に関する事物をモチーフに、体感し難い宇宙空間を表現し、宇宙との距離を縮めることを試みる。紙にピンで無数の穴をあけ、光をあてることで、画面上に星々や銀河、惑星などのイメージを浮かび上がらせる作品を主に制作。宇宙で起きている現象は、日常ではなかなか把握できないものですが、小刻みに手を動かし、描き出す須藤の宇宙からは、手触りや重力が感じられる。鋭利な道具を用いて紙を突き刺すことで生じた凹凸や裂け目に注目すると、宇宙の神秘的な印象とは裏腹に、荒々しい宇宙の険しさを想起させ、ある種の恐怖感を覚える。本展では、太陽観測衛星「ひので」が捉えたX線画像をはじめ、研究者へのインタビューや集積したデータをもとに、太陽や土星、天の川などをモチーフとしたインスタレーションを発表。個々の作品と向き合い、それぞれの星の微細な特徴を味わう空間を構築する。adf-web-magazine-act-vol.5-signs-of-attraction-5adf-web-magazine-act-vol.5-signs-of-attraction-6

1982年生まれ。埼玉県を拠点に活動。2007年埼玉大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術教育専修修了。主な展覧会に「巡りゆく星たち」(SYP GALLERY、東京、2022)、「星のアトリエ」(ギャラリー彩光舎、studio study / 彩光舎美術研究所、さいたま、2020)、「SUPER OPEN STUDIO『野良のつきあたり』」(STUDIO ISSEI、東京、2019)、「In My Room, Into SPACE」(S.Y.P Art Space、東京、2018)、「するがのくにの芸術祭富⼠の⼭ビエンナーレ2016」(旧五⼗嵐邸、静岡)など。

ACT Vol.5 「引き寄せられた気配」開催概要

会期2023年2月11日(土・祝)から3月26日(日)まで
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
時間11:00 ~ 19:00(最終入場は30分前まで)
休館月曜日
入場無料