四半世紀にわたる活動と思想を概観する
「藤本壮介の建築:原初・未来・森」が森美術館で2025年7月2日(水)から11月9日(日)まで開催される。藤本は2000年の《青森県立美術館設計競技案》で注目を集めたのち、《武蔵野美術大学美術館・図書館》(2010年、東京)、《サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013》(ロンドン)、近年では集合住宅《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス、モンペリエ)や音楽複合施設《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)などのプロジェクトを次々と完成させ、高い評価を得てきた。現在は「2025年大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーを務めるなど、いま最も注目される日本の建築家の一人。
本展は藤本にとって、活動初期から現在進行中のプロジェクトまで網羅的に紹介、四半世紀にわたる歩みや建築的特徴や思想を概観する初の大規模回顧展。展示では模型や設計図面、竣工写真に加え、インスタレーションや空間を体験できる大型模型、プロトタイプなども含まれ、誰もが藤本建築のエッセンスを体感できる、現代美術館ならではの展覧会となる。さらに、藤本の提案を通じて建築の存在意義や可能性についても考察する。
アーティストステートメント
今回の個展は、いわゆる回顧展というより、現在進行形で、むしろ未来を向いているものです。これまでの集大成であると同時に、これからの方向性を模索する展覧会になると感じています。建築家とは、人と人、人と自然の関係を紡ぐ「場」を作る仕事でもあり、それは私にとっては自然と人工が溶け合う「未来の森」のような場所だといえるかもしれません。様々な価値観がバラバラであることの良さと寂しさが行きかうこの時代に、そこに豊かな「つながり」を作り出せないかと模索しています。「こんな建物や街で暮らしたら、世界はどう見えてくるのだろう」とみなさんの想像と希望が膨らみ、未来をポジティブに考えるきっかけとなれば嬉しいです。
藤本壮介
本展の構成
模型の森
活動初期から現在計画中のものまで、藤本のすべてのプロジェクトを紹介する大型インスタレーション《模型の森》が展示される。300m2を超える空間に模型や素材、アイデアの断片であるオブジェなどが年代順に配置される。
年表
建築史家の倉方俊輔とのコラボレーションにより、藤本の活動の軌跡を総覧する年表を掲示。
ブックラウンジ
「間(あわい)」をコンセプトとするブックラウンジが設置される。藤本自身の著作のほか、ブックディレクターによる選書も並ぶ。
人が動く模型
建築模型にプロジェクターで人の動きを投影。藤本の空間に対する思想を読み解く。
「2025年大阪・関西万博」大屋根リング
万博会場のシンボルであり世界最大級の木造建築物となる「大屋根リング」の1/5部分模型(高さ約5m)を展示。
建築同士の対話
藤本が手がけた複数の建築作品が擬人化され、それらが会話を交わす設定の作品。
国際センター駅北地区複合施設(仮称、仙台)
仙台市に建設される、音楽ホールと震災メモリアルの拠点となる複合施設(2031年度竣工・開館予定)の大型模型を展示。設計や提案に至るプロセスがわかる資料も公開し、プロジェクトの全貌が紹介される。
藤本壮介
1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では「2015年大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーに就任。2024年には《国際センター駅北地区複合施設(仮称、仙台)》の基本設計者に選定される。
「藤本壮介の建築:原初・未来・森」開催概要
会期 | 2025年7月2日(水)~11月9日(日) |
時間 | 10:00~22:00(火曜日のみ17:00) |
会場 | 森美術館 |
URL | https://tinyurl.com/35r38a9k |