ミニマル・アートとコンセプチュアル・アートの生成

DIC川村記念美術館は「ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960–70年代美術」を2021年10月5日(火)から2022年2月13日(日)まで開催する。ミニマル・アートは1960年代に主にアメリカで展開されたアートの潮流として知られている。レンガや金属板、蛍光灯といった工業用素材や既製品が使用されること、正方形や立方体などの単純で幾何学的な形態やその反復による構造が一般的な特徴として挙げられる。アーティストの感情の痕跡や身振りを伴う表現を排し、作品はその物質性を前景化させる。

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ミニマル・アートに続いて現れ、同時代にムーブメントの拡がりをみせたコンセプチュアル・アートは、実際の制作物よりも、作品のもととなるコンセプトを作品の成立条件として重要視した。つまり、アートにとって最も重要な要素とはアイデアやコンセプトなのだと考えた。特定の形態に限定されることなく、言葉をはじめ、写真、映像、印刷物、日用品、自然物、そしてアーティスト自身の身体など多様な媒体や形式が用いられた。

こうした新しい傾向をもつアートを紹介する国際的な拠点のひとつとなったのが、コンラート・フィッシャーが1967年にドイツのデュッセルドルフに開いたアートギャラリーであった。フィッシャーはアメリカやヨーロッパの若いアーティストたちとコンタクトを取りながら、斬新なプロセスで展覧会を実現させていく。完成した作品を高い費用をかけて海外から輸送するよりも、アーティスト本人をデュッセルドルフに招聘して現地で制作する方法がとられた。さらにアーティストが記した指示書に基づき、フィッシャーをはじめとし、職人やエンジニアなどが作品制作と展示設営を行った。

フィッシャーは妻のドロテとともに、展覧会を手がけたアーティストたちの作品を蒐集し、同時に書簡や指示書、展示のためのドローイングといった資料を記録、保管してきた。本展では、故フィッシャー夫妻のコレクションを収蔵したノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館の全面的な協力のもと、1960年代から70年代のミニマル・アートとコンセプチュアル・アートを中心とした貴重な作品や、その生成を紐解くアーカイブを展示する。さらに、国内所蔵の主要作品を加えて、異なる主張や特性を有しながらも、アートとは一体何かを問い直し、今日のアートにも多大な影響を与えたこれらのアート動向を振り返る。

出品作家(予定)

カール・アンドレ、リチャード・アートシュワーガー、ローター・バウムガルテン、ベルント&ヒラ・ベッヒャー、マルセル・ブロータース、スタンリー・ブラウン、ダニエル・ビュレン、ハンネ・ダルボーフェン、ヤン・ディベッツ、ダン・フレイヴィン、ギルバート&ジョージ、河原温、ソル・ルウィット、リチャード・ロング、ブルース・ナウマン、ブリンキー・パレルモ、ゲルハルト・リヒター、ロバート・ライマン

「ミニマル / コンセプチュアル」展概要

会期2021年10月9日(土) 〜2022年1月10日(月・祝)
会場DIC川村記念美術館
住所〒285-8505 千葉県佐倉市坂戸631
休館日月曜(ただし1月3日、1月10日は開館)、12月25日(土)〜1月1日(土)
 URLhttps://kawamura-museum.dic.co.jp/