日本庭園の新しいアーカイブを構想する
山口情報芸術センター[YCAM]は、日本庭園研究者の原瑠璃彦と共に実施する「庭園アーカイヴ・プロジェクト」の一環として「Incomplete Niwa Archives—終らない庭のアーカイヴ」展を2021年10月8日(金)から2022年1月30日(日)まで開催する。本展は、メディア・テクノロジーを用いて制作された山口市の常栄寺庭園(通称、雪舟庭)のアーカイブを体験できる展示会となる。
日本庭園は、海外からも注目度の高い重要な文化資源であり、アートや建築といった様々な場面で再注目されている。YCAMは、2019年度から日本庭園研究者の原瑠璃彦とともに、日本庭園の新しいアーカイブを研究開発する「庭園アーカイヴ・プロジェクト」を実施しており、本展はその成果の一つ。本展では、日本庭園を3Dスキャンなどの映像技術や立体音響、バイオ・テクノロジーなどを駆使して収集した日本庭園のさまざまなデータをもとに、庭のアーカイブそのものを、さながら庭のように体験できるインスタレーション作品を発表する。
庭のアーカイブをぼんやりと体験する
本展は、「庭園アーカイヴ・プロジェクト」の成果をインスタレーション作品の形式で発表する展覧会。プロジェクトでアーカイブを制作した3つの庭園のうち、「雪舟庭」の名で知られる山口市の常栄寺庭園を取り上げ、そのデータを素材に、建築集団・ALTEMY(アルテミー)と、プログラマーの白木良とのコラボレーションのもと空間的に展開していく。
作品では、日本庭園における鑑賞者のぼんやりと眺めたり、聴いたりする半意識的な体験に注目。常栄寺庭園にまつわるさまざまなデータを再構築し、可視化・可聴化することで、絶えず変化を続ける庭園に対する複合的な観点を提供する。また、作品空間内にはホワイエから2階ギャラリーに続く大階段にオリジナルの座具を設置。鑑賞者はそこに寝そべりながら、映像やサウンドに身を委ねる。
更新し続ける庭園のアーカイブ・ウェブサイトも公開
展示会のオープンと同時に、プロジェクトの過程で集めたさまざまなデータを閲覧するためのウェブサイトも公開します。KARAPPO Inc.(カラッポ)と共同で開発したウェブサイトでは、研究対象となった3つの庭園を3DCGで再現したデータを閲覧できる。この3DCGで出来た仮想的な庭園内には、各所に静止画、映像、サウンド、テキストなどが埋め込められており、ユーザーは庭園内を仮想的に移動しながら、実際の庭園を歩くことでは知り得なかったデータを参照することができる。
原瑠璃彦 プロフィール
1988年生まれ。静岡大学専任講師。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。日本の庭園、能・狂言をキーワードに分野横断的な研究をおこなう。主な業績に共著『Promise Park』(workroom press、2017)、共編『大倉源次郎の能楽談義』(淡交社、2017)等。また、パフォーマンスや展覧会などの創作の現場に関わる活動として、これまで、坂本龍一+野村萬斎+高谷史郎による能楽コラボレーション「LIFE-WELL」(2013)、ムン・キョンウォン+YCAM「プロミス・パーク――未来のパターンへのイマジネーション」展(2015)に参加。
「Incomplete Niwa Archives — 終らない庭のアーカイヴ」展 概要
会期 | 2021年10月8日(金)~2022年1月30日(日) |
時間 | 10:00~19:00 |
会場 | 山口情報芸術センター[YCAM]2階ギャラリー |
休館日 | 火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日) |
入場料 | 無料 |
URL | https://special.ycam.jp/niwa/ |