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不確かさの時代における個の肯定

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AISUKE TANABEは2026年に発表するシーズン04「atom」で、個人という最小単位に視点を落としていく試みとして新コレクションを南青山の3E STUDIOで2026年2月9日から2月15日まで提示する。前シーズン「x」では、James Blakeの楽曲『Like the End』を起点に、不要な関心の増幅がもたらす社会の無関心を主題とし、未定数や不確かさの象徴としての“x”を用いた表現が行われた。今シーズンの「atom」は、その霧を晴らすための答えを提示するものではなく、霧の中にいながら希望を見失わないための試みとして構成されている。ここで言うatomとは、これ以上分割できない不可分なもの、外部から解体され得ない核の比喩である。

転換点としての「アトムの子」

コレクションの転換点となったのは、昨年の夏に耳にした山下達郎の「アトムの子」である。理屈に先立って体温だけが立ち上がるような感覚は、「自己肯定」という別の選択肢があることを身体が先に知る経験として位置づけられる。本コレクションにおいて希望とは、世界が明るくなることを保証する言葉ではなく、今ここにある自分自身を肯定するための静かな選択であると定義されている。

思想的背景とユニフォームとしての衣服

思想的背景には、映画『ブレードランナー 2049』が提示した実存主義がある。主人公Kが、自らの意志による選択によって実存を確立したように、個人もまた自らを定義する存在として捉えられている。衣装デザイナーRenée Aprilは同作を「ファッショナブルな映画ではない」と捉え、衣装を装飾ではなく、環境に耐えるためのユニフォームとして設計した。本コレクションでは、その姿勢が参照されている。

防護としての衣服と機能主義の系譜

視点を拡張するため、身体を守るために洗練されてきた機能主義の系譜にも着目している。1892年創業のD. Lewis(現Lewis Leathers)が手がけた航空用装備「Aviakit」や、第二次大戦期にRAFパイロットが生存のために私費で装備を求めた歴史を参照し、衣服が装いから防護へと役割を拡張してきた過程をリサーチの基盤としている。一方で、本コレクションが目指すのは、生存のための機械としての衣服ではない。Le Corbusierの機械主義に対し、Eileen Grayが提示した「精神の避難所」としてのデザインの考え方が参照され、衣服を心理的な充足をも包み込む装置として捉えている。

カラーパレットと素材表現

カラーパレットの起点は、Eileen Grayが描いたラグのデザインにある。幾何学的なラインを理性、温かみのある配色を感情の象徴として再解釈し、抑制されたトーンの中にブルーとゴールドが配置されている。ブルーは孤独な空白の中で自らの位置を特定するための座標として扱われ、「青い炎」として位置づけられる。シルクとカシミヤのダブルフェイス、ベージュゴールドのファスナーテープ、カルガンラムのファーなどの素材使いにより、内側に残る体温や揺らぎが表現されている。

常に「今」を最大出力で表現する

常に今の自分の最大出力を表現すること。次があるという考えを捨て、「今」にすべてを注ぐ姿勢が、本コレクションの制作態度として示されている。

daisuke tanabe

2024年設立のウィメンズ・メンズウェアブランド。映画、小説、写真を元に構築したフィクションをベースに、世界各地の伝統的な職人技術と前衛的なテクノロジーを組み合わせたコレクションを展開する。

デザイナー情報

  • 2021年、京都大学経済学部卒業後、細尾に入社。
  • 2023年に独立し、ファッションブランド「daisuke tanabe」を設立。
  • 2024年2月にファーストコレクションを発表。

「daisuke tanabe season 04 Tokyo showroom」情報

会期2026年2月9日から2月15日まで
会場3E STUDIO
URLhttps://tinyurl.com/bdzxn8dt