アメリカのアール・ブリュットの作家と日本の作家とを同じ空間で展観
東京都渋谷公園通りギャラリーは2022年春の企画展として、2022年4月23日(土)から6月26日(日)まで展覧会「線のしぐさ」を開催する。本展は近年日本においてまとまったかたちで紹介される機会の少なかったアメリカのアール・ブリュットの作家と日本の作家とを同じ空間で展観する。
ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションだけでなく、ニューヨーク近代美術館やパリのポンピドゥー・センターなどに作品が収蔵される作家を含む10名が「線」をテーマに一堂に会す。
本展の見どころ
一本の線はあるときはひとつの範囲を分け、またあるときは離れたものどうしをつなげる。相反する機能をもつ線は空間の中で自らをさまざまに変化させ、かたちをつくり、ときにはかたちにならない何ものかを表す。「アール・ブリュット」の作品における線はしばしば意図や計画とはかけ離れた、即興や偶然の結果とみなされ、反面それは作家の抑えがたい衝動や愛着、それに応じた身体の心地よい動きと離れがたく強く結びついている。そのため作家のからだと心のしぐさは線にのりうつり、線はしぐさを生む。本展では10人の作家がつむぎ出す線のしぐさをなぞる。
10人のさまざまな「線」
ペンや色鉛筆、水彩によるドローイングや木彫、針金を用いた立体作品、糸や毛糸、布を用いたファイバー・アートなど、10人の作家がそれぞれの方法で生み出すさまざまな「線」とその表情、しぐさ。
日本とアメリカの作家がつくる「線」の世界
日本の作家5名とともにアメリカ、カリフォルニア州オークランドのクリエイティブ・グロウス・アート・センターから5名の作家が紹介。日本初展示のスーザン・ジャノウのほか、世界的に注目を集めるジュディス・スコットは2003年以来の日本での展示となる。同じテーマのもと、日米それぞれの作家の特徴を際立たせる。
すぐれた「アール・ブリュット」の数々
出展作家にはスイス、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションだけでなく、パリのポンピドゥー・センターやニューヨーク近代美術館、ブルックリン美術館などに作品が収蔵される作家が含まれる。美術のメインストリームとの境界について再考を迫られるような、すぐれた作品の数々が紹介される。
齋藤 裕一(SAITO Yuichi)
1983年埼玉県生まれ。2002年より川口市の「工房集」で活動。文字を書くことがきっかけとなり、好きなテレビ番組名などを連ねるドローイングへと展開。特定の文字が抽出されることが多く、それらの線が絶えず余白とせめぎ合い緊張関係を保ちながら、濃淡のある層と塊をなしていく。近年、作品がパリのポンピドゥー・センターに収蔵された。
坂上 チユキ(SAKAGAMI Chiyuki)
1961-2017兵庫県生まれ。洋の東西を問わず神話や物語などに着想を得て、太古から自然をいきる生物、特に自ら愛でた鳥類をたびたび表す。息づかいを映し出すかのように微細な線を引きつなげて、青や水色を基調とするドローイングを多く手がけた。作品は、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクション、東京国立近代美術館などに収蔵。
西村 一成(NISHIMURA Issei)
1978年愛知県生まれ。気迫に満ちた絵画のほかに、疾走感のある線を絡ませ、大胆な角度で対象を表したドローイングも制作。愛する音楽に触発され、また、動物的直感で世界の情況に感応し、あたかも手から繰り出すか、掘り起こすかのようにして、瞬時にかたちを捉えていく。作品は、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクション、京都市美術館に収蔵。
東恩納 侑(HIGASHIONNA Tasuku)
1987年沖縄県生まれ。粘土に親しんだ後、機関車やロボットなどをモチーフに、針金のゆがみを利用しながら3次元的にかたちを捉える作品を制作。ボタンや生活の中にある素材をモチーフの一部に見立て、素描のように題材を映し出す。「アートキャンプ2006素朴の大砲」展(浦添市美術館、沖縄、2006年)のほか、県内を中心に発表を重ねる。
スーザン・ジャノウ(Susan JANOW)
1980年カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。2003年よりCGACに参加。グリッドを描き、細い線のクロスハッチングで念入りに埋めるドローイングを多く制作。近年は、格子のサイズや配置、枠内の色づけに新たな変化をみせる。また、映像作品でも注目を集めている。作品は、ニューヨークのブルックリン美術館、パリのポンピドゥー・センターなどに収蔵。
ドワイト・マッキントッシュ(Dwight MACKINTOSH)
1906-1999 カリフォルニア州ヘイワード生まれ。70歳を超えた1979年からCGACに参加。人物や乗り物など自身の経験に由来するモチーフを、X線透過画像のように線で捉える。手の動きのリズムを映すかのごとく、線は密度の濃淡を伴いながら画面に増殖する。作品は、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクション、パリのポンピドゥー・センターなどに収蔵。
ダン・ミラー(Dan MILLER)
1961年カリフォルニア州カストロバレー生まれ。1992年よりCGACに参加。関心を持つものに伴うかたちやアルファベット、数を重ねる。ペンの細い線、絵具のダイナミックな線が層をなし、時折、単語を浮かび上がらせつつも、意味から解き放たれた線の集合体を生んでいる。作品は、ニューヨーク近代美術館、パリのポンピドゥー・センターなどに収蔵。
展覧会「線のしぐさ」概要
会期 | 2022年4月23日(土)から6月26日(日)まで |
開館時間 | 11:00~19:00 |
会場 | 東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室1、2 |
入場料 | 無料 |