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第7回目のゲストカントリーは北欧5か国

TOKYO ART BOOK FAIR (TABF)が、2023年11月23日(木・祝)から26日(日)まで東京都現代美術館で開催される。国内外から約300組の独創的なアートブックを制作する出版社、ギャラリー、アーティストらが集結し、作り手たちが本の魅力を伝える4日間となる。ひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介する企画「ゲストカントリー」では、第7回目を数える今年は北欧のアートブックの世界をフィーチャーする。北欧5か国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランド)をゲストカントリーとし、北欧から合計18組の気鋭の出版社が出展するほか、展覧会やトークイベント、スクリーニングなどさまざまなプログラムを通して、北欧のアートブックの世界を紐解いていく。

Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点

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ムーミンの生みの親として、日本でもよく知られるトーベ・ヤンソン。1914年にリベラルな芸術家の両親のもとに生まれ、創作が常に身近にある環境で育ったトーベは、7歳で「トーベ出版」を立ち上げ本を出版し、その後も出版社から数多くの絵本や小説を出版した。

TABFでは、フィンランド、ヘルシンキ在住のトーベ・ヤンソンの研究者、翻訳家である森下圭子をキュレーターに迎え、これまで刊行された絵本や資料などを一堂に集め、トーベを「本を作るアーティスト」として紹介。またセレクションには、トーベによる日本版の印刷物や資料なども含め、トーベと日本の強いつながりにもフォーカスする。

さらには、トーベとパートナーのトゥーリッキ・ピエティラが20回以上の夏を過ごしたサマーハウスがあるクルーヴハルを始めとする群島の美しくも荒々しい自然、またそこに生えるキノコを捉えたホンマタカシによる写真を展示。トーベを長年追い続けている森下が「トーベを探すのでなく、トーベの眼差しを感じる作品」と語るホンマの写真を通して、トーベの視点を感じながら彼女の軌跡や思考を巡り、独自の世界観と北欧の魅力に迫る。また、ホンマの写真と森下が群島にまつわるさまざまなエピソードを執筆したエッセイを収録する作品集『群れた島々と キノコたち』もTABFの開催に合わせて刊行される。

ホンマタカシ

2023年には『Thirty-Six Views of Mount Fuji』(MACK)、『TOKYO OLYMPIA』(Nieves)を刊行。2024年1月21日(日)まで、東京都写真美術館にて個展「即興 ホンマタカシ」を開催中。

森下圭子(来日予定)

1969年、三重県生まれ。ヘルシンキ大学でムーミンの研究をするために1994年秋、フィンランドヘ渡る。以降ヘルシンキに在住し、現在はコーディネーター、翻訳者/通訳者として活動している。「Tove’s Perspective」展のための撮影のコーディネートも担当。映画『かもめ食堂』ではアソシエート・プロデューサーを務める。主な訳書は、ミイのおはなし絵本シリーズ、『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』『ムーミンとトーベ・ヤンソン 自由を愛した芸術家、その仕事と人生』など。

Nordic Art Book Store

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Illustration: Hyuga Watanabe

北欧5カ国のアートブックシーンを牽引する5名のキーパーソンにおる、コンテンポラリーなアートブックやZINE(約40〜50タイトル)と、自国の出版文化に影響を与えた重要な書籍をセレクトした4日間限りのブックストアがTABFに登場。ノルウェーからは、自身が立ち上げたファッションリサーチ国際図書館のディレクターを務めるエリス・バイ・オルセン、スウェーデンからは2018年からマルメという都市でアートブックビエンナーレを開催する「Malmö Artist’s Books Biennial」のチームが参加。そしてフィンランド、デンマーク、アイスランドのキュレーターは、各国の首都を拠点に自身のアーティスト活動を行いながら、アートブックフェアや本に関わるイベントを積極的に行う、西田ひかり、ヨハン・ローゼンムンテ、シグル・アトリ・シグルソンが務める。まだ知らない表現や才能とのたくさんの出会いがあり、北欧のアートブックシーンのこれまでといまに触れる機会となる。

ノルウェー

エリス・バイ・オルセン / Elise By Olsen(来日予定)

1999年生まれ。若干13歳にして創刊したカルチャー誌『Recens Paper』が、テート・モダン、ドーバー ストリート マーケット、10 Corso Como、パレ・ド・トーキョー、コレット、蔦屋書店などに並び話題を集め、2017年に18歳になるまで同誌の編集を手がけた。2018年にファッション業界で批評的な対話を生み出すことを目的に掲げる雑誌『Wallet』を立ち上げ、2020年にはファッションリサーチ国際図書館を創設し、現在はそのディレクターを務める。

スウェーデン

「MABB – Malmö Artist’s Books Biennial」

MABB は、本という形態の構造的・概念201的な特性にインスパイアされたアート作品のためのプラットフォームである。2018年にスウェーデン南西部に位置する都市、マルメでスタートした。2022年には、北欧諸国、ポーランド、英国、アイルランド、フランス、ドイツ、オランダ、日本、イタリア、アメリカなどから約30組の出展者が出展した。次回は、2024年5月に開催予定。

フィンランド

西田ひかり / Hikari Nishida(来日予定)

フランスで生まれ育ち、現在はヘルシンキを拠点に活動するアーティスト。2021年、フィンランドのインディペンデント出版社や国内外の作家、デザイナーによるアートブックやZINEなどの印刷物の流通に焦点を当てたプロジェクト「The Temporary Bookshelf」を立ち上げる。本にまつわるイベントを企画するほか、フィンランドのアート施設やフェスティバルのために本のセレクションも行っている。

デンマーク 

ヨハン・ローゼンムンテ / Johan Rosenmunthe(来日予定)

1982年生まれ。コペンハーゲン在住。アーティストブックから彫刻的インスタレーション、パフォーマンスまでと、幅広い表現で知られるアーティスト。キュレーションや出版活動を行う「Lodret Vandret」、展覧会スペース「New Shelter Plan」を主宰するほか、アートブック・フェスティバル「One Thousand Books」の創設者でもある。展覧会やシンポジウム、出版の企画やキュレーションを数多く手がける北欧のアーティストブック界の中心人物。

アイスランド

シグルドゥル・アトリ・シグルドソン / SIgurður Atli Sigurðsson (来日予定)

レイキャビクで活動するビジュアルアーティスト。社会構造を形成する要素をもとにした作品を制作しており、それらの多くは印刷物として発表されている。2015年、制作や出版などを行う「Print & Friends」を設立し、出版に関する専門家として国内外で展覧会の企画や講演を行っている。また、1970年代のガソリンスタンドを改装したYギャラリーや「レイキャビック・アートブックフェア」を運営している。

Kids’ Reading Room

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Illustration: Yoko Nakayama

2022年よりスタートしたTABFの子ども向けコンテンツ 「Kids' Reading Room」。本年のゲストカントリーでもある北欧5カ国と日本のアート性の高い絵本を自由に読むことができるスペースになる。アンデルセンの古典童話をはじめ、『長くつ下のピッピ』のアストリッド・リンドグレーン、ムーミンシリーズのトーベ・ヤンソンなど、世界中で愛される名作を輩出する新旧さまざまな北欧の絵本をアートブックの視点でセレクト。絵本の一部はアートブックやZINEを販売するTABFオリジナルの販売機「ART BOOK VENDING MACHINE」を用いて、北欧と日本の絵本とのユニークな出会いを楽しめる。

また、スウェーデン政府が2002年に創設した、リンドグレーン記念文学賞を2022年に受賞した、スウェーデン出身の絵本作家エヴァ・リンドストロムによる絵本の中のシーンが、Kids' Reading Roomの壁面にて大きく展開される。

エヴァ・リンドストロム(来日予定)

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エヴァ・リンドストロム

1952年生まれ。ストックホルム在住。漫画家としてキャリアをスタートし、スウェーデンの新世代のコミックアーティストたちに多大なる影響を与えている。絵本作家としても世界的に高く評価され、これまでに国際アンデルセン賞、アストリッド・リンドグレーン記念賞など数々の賞を受賞している。

北欧映画祭 〜Nordic perspective〜

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TOKYO ART BOOK FAIR 初の試みとして、東京都現代美術館の近隣(Neighbours)であるミニシアター「Stranger」にて、2023年11月24日(金)から12月7日(木)まで、映画祭が開催される。上映するのは、今年の「Guest Country」である北欧5カ国のドキュメンタリー映画9作品。トーベ・ヤンソンの映画3作品をはじめ、アート、デザイン、音楽、環境問題など、さまざまなテーマを掘り下げた映画を通し、北欧の視点を読み解く。作品に関連したアートブックの展示や、トークイベントなど、TOKYO ART BOOK FAIRならではの企画も予定されている。タイムテーブルは公式サイトより確認できる。

上映作品

『トーベ・ヤンソンの世界旅行』 (1993) 
『ハル、孤独の島』 (1998) 
『トーベとトゥーリッキの欧州旅行』 (2004)
『ザ・ヴァスルカ・エフェクト』 (2019) 
『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』 (2019) 
『画家と泥棒』 (2020) 
『アアルト』 (2020) 
『コペンハーゲンに山を』 (2020) 
『アポロニア、アポロニア』 (2022)