瀬戸内国際芸術祭2022のレビュー
瀬戸内国際芸術祭2022の春会期が4月14日より始まりました。まずは鑑賞の玄関口となる高松港周辺と、春会期のみしか展示が行われていない沙弥島会場についてのレビューをお届けしたいと思います。
高松港周辺について
高松で展示が行われている場所は主に高松港周辺と、高松港から車で20~30分ほど離れたところにある屋島周辺の二つのエリアになります。
高松港周辺に展示されている作品は、大巻伸嗣の「Liminal Air -core-」(展示番号 tk01)、ジュリアン・オピーの「銀行家、看護師、探偵、弁護士」(tk03)、本間純の「待つ人/内海さん」(tk04)の3つの屋外常設作品に加え、総合案内所や公式ショップのある高松港旅客ターミナルビルの一階にAsaki Odaの「PAPER SEA」(tk25)が新たな作品として展示されています。
作品を鑑賞するためのパスポートや公式ガイドブック、瀬戸芸グッズなどを購入したい方は、この高松港旅客ターミナルビルで購入することができます。ちなみに、鑑賞用パスポートは紙の冊子とスマホにアプリをダウンロードして使用するデジタルのものの2種類があります。記念として鑑賞記録を手元に残したい方は会場で紙のパスポートを購入すると良いでしょう。
島への行き方など分からないことがあれば、高松港旅客ターミナルビルの案内所に常駐しているスタッフに尋ねることもできます。
春会期中は展示されていませんが、夏会期には渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)のプロジェクト「同じ月を見た日」(tk24)という作品も高松港と屋島にて展示される予定です。
また、香川県立ミュージアム(tk13)と高松市美術館(tk14)も展示会場として組み込まれており、パスポートにも番号が記載されていますが、この二つの美術館での展示はパスポートを提示することで200円割引になるだけで、入場料が必要になるのでご注意ください。
高松市美術館の割引は夏会期に開催されている「みる誕生 鴻池朋子展」のみに適用されます(鴻池朋子の作品は大島でも全会期通して展示されています)。
香川県立ミュージアムでの展示は、春会期「戦後デザイン運動の原点」、夏会期「せとうちの大気」、秋会期「風景が物語る瀬戸内の力」となっており、瀬戸芸のために作られた作品が展示されているというわけではないようです。
高松港では作品の展示以外に「食のテラス」という瀬戸内海や香川県産の食材を使った料理をテイクアウトできるブースも設置されています。朝7時から10時の間は弁当、夕方4時から7時の間は軽食などが販売されている他、カヌレやプリンなどもあります。
高松港に車で来られた方で、3シーズンパスポートを購入済みの方は、高松港キャッスルプロムナードか旧中央病院跡地にある作品鑑賞パスポート持参車専用駐車場を無料で利用することができます。
ただし、どちらの駐車場もパスポート1冊につき1度しか使用することができないため、一度駐車場を出たら再び車を停めなおすことができません。駐車場は朝7時から夜20時の間だけ解放されており、それ以外の時間は車の出し入れができなくなります。車を停める時間に制限はなく、車を駐車場に停めたまま島などに宿泊してくることも可能なので、作品を見て回る順番をよく考えて計画を立てた上でこの無料駐車場を活用されることをお勧めします。
パスポートを持っていないとこの無料駐車場は利用できませんので、利用したい方は先にパスポートを購入しておく必要があります。
駐車場の位置などの詳細は瀬戸内国際芸術祭2022公式ホームページの駐車場情報をご参照ください。
沙弥島会場について
沙弥島会場は瀬戸大橋を降りてすぐの坂出市にあります。島という名前がついていますが、1967年の臨海工業団地開発埋め立て工事によって四国と陸続きになっており、車やバスで向かうことができます(沙弥島会場行きのバスは坂出駅から出ています)。
沙弥島会場に車で訪れる場合は、瀬戸大橋記念公園の駐車場を無料で利用することができます。駐車場は西・東・北の三ヶ所ありますが、案内所に一番近い西駐車場がおすすめです。
地図を見るともっと作品に近い沙弥海水浴場駐車場もあるのですが、瀬戸芸期間中は海水浴場方面へ続く道路は地元住民以外侵入禁止となっているので、間違って車で入ろうとしないようにお気をつけください。
沙弥島会場の案内所でもパスポートやガイドブックを購入することができますが、高松港ほど在庫が豊富ではないため、売り切れている可能性もあります。
屋内作品を鑑賞するためには案内所で検温を済ませ、体温が正常であることを証明するリストバンドをつけてもらう必要があるので、案内所はスルーせずに検温を受けてください。
沙弥島会場にはターニャ・プレミンガーの「階層・地層・層」(sm01)、藤本修三の「八人九脚」(sm10)の屋外常設作品2つの他、この春会期に新たに制作された、南条嘉毅の「幻海をのぞく」(sm11)、レオニート・チシコフの「月への道」(sm12)の2作品が加わり、計4作品が展示さています。
新作品の二つは4月14日から5月18日までの春会期の間だけしか鑑賞することができないので、気になる方は見逃してしまわないようにお気をつけください。
南条嘉毅の「幻海をのぞく」は坂出市万葉会館の前に建つ洋風の一軒家の中に展開される、瀬戸内海の歴史をモチーフにしたインスタレーション作品です。
屋内には、海になる前の瀬戸内の地形にも岩礁にも見える異様な空間が、明滅する照明や映像に照らし出されているほか、古い家具や化石と思しきものが薄暗い回廊に展示されています。ホームページやガイドブックに載ってある以上の解説は特になく、作品の解釈は鑑賞者の感覚に委ねられています。
レオニート・チシコフの「月への道」は沙弥島の旧沙弥小・中学校と与島の浦城バス停、鍋島灯台の三ヶ所に展示された広大な作品です。
作品は7つのインスタレーションから構成されており、旧沙弥小・中学校には「雪の天使」「人類の宇宙への移住」「地球での最後の夜」「KETsの星」「月への階段 あるいは柿本人麻呂の月」の5つのインスタレーションが展示されています。
そして「月への階段 あるいは柿本人麻呂の月」から見える瀬戸大橋を渡って与島の浦城バス停に展示されている「月への旅の途中 最終駅」を経て、鍋島灯台に展示された「宇宙の立方体 あるいは100万の星とひとつの星」へ至って作品が完結します。
全てのインスタレーションは星・宇宙・月などにまつわるストーリーによって構成されており、鑑賞しているとまるで幾つもの章からなる物語の中を旅しているかのような感覚に陥りました。
先に与島の作品を鑑賞してから沙弥島の作品を鑑賞することもできますが、「月への道」の鑑賞を最大限に堪能するなら、藤本修三の「八人九脚」→ ターニャ・プレミンガーの「階層・地層・層」→ 南条嘉毅の「幻海をのぞく」→ 旧沙弥小・中学校の「雪の天使」→「人類の宇宙への移住」→「地球での最後の夜」→「KETsの星」→「月への階段 あるいは柿本人麻呂の月」→坂出駅から出ているバスに乗って与島の浦城バス停の「月への旅の途中 最終駅」→鍋島灯台の「宇宙の立方体 あるいは100万の星とひとつの星」の順番で鑑賞を行うことをおすすめします。
家の意図を汲むのであれば、与島へはバスで行くことをおすすめします。
沙弥島会場からバスで坂出駅に戻ると、坂出駅から与島会場までの有料バスが出ています。詳しくは琴参バス株式会社ホームページの瀬戸内国際芸術祭2022シャトルバスのご案内をご参照ください。
車で来られている方は瀬戸大橋を渡って車で与島SAまで行き、与島SAの第一駐車場に車を停めて作品を鑑賞することもできます。
与島SAから与島会場に向かう方法は、SAから出ているシャトルバス(片道200円)を利用する方法と、歩いていく方法があります。
与島会場のある穴部泊まり集落方面への遊歩道は少しわかりにくいので、心配な方は与島SA内の案内所(瀬戸芸の案内所でなくサービスエリアの案内所)で行き方を尋ねると良いでしょう。遊歩道は狭く、あまり整備もされていないため、歩いていると「この道であっているのか」と不安になってきますが、集落まで出ると要所要所に瀬戸芸の案内板が出ているので、案内板を見落とさなければ迷うことはありません。
ただ、与島SAから歩いて会場に向かうと先に鍋島灯台に向かう分かれ道が目に入ってしまうので、順番通りに鑑賞したい場合は、鍋島灯台への道を一度スルーして浦城バス停の作品を見てから鍋島灯台に向かってください。
与島SAから会場までの距離は歩いて10分ほどです。島の集落の間を歩いていくのも楽しいので、行きはシャトルバスを利用し、帰りは集落の中を歩いてSAまで戻るのもおすすめです。
与島SAから与島会場に向かう道と、鍋島灯台に上る階段は足場があまりよくないので、足の悪い方は介助が必要になります。
沙弥島会場の作品に興味がおありの方は、ぜひこの春会期中に訪れてみてください。