“Setouchi International Art Festival 2022” Autumn Season New Venue Review

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瀬戸内国際芸術祭2022の秋会期

2022年9月29日から11月6日にかけて開催される瀬戸内国際芸術祭2022の秋会期にて、本島・高見島・粟島・伊吹島の4島が新たな会場としてお披露目されています。そこで今回は秋会期限定の4島についてのレビューをお届けしたいと思います。

まずはそれぞれの島への行き方ですが、本島は岡山側にある児島観光港と香川側にある丸亀港からの両方から行くことができます。そして本島からは本島-高見島-粟島を結ぶ特別運行便が出ており、岡山側の児島観光港から本島へ渡り、本島・高見島・粟島のいずれかを経由して香川へ行くことも可能です。

高見島へ直接行く便は香川の多度津港から、粟島へ直接行く便は香川の須田港・宮の下港から出ています(宮の下港から出ている粟島行きの便は志々島や上新田を経由して行き時間がかかるので、須田港から粟島へ行くルートが一般的です)。

伊吹島へは香川側の観音寺港からしか船が出ておりません。フェリーの時間や料金など詳しいことは瀬戸内国際芸術祭2022公式ホームページの西部の島への航路と時刻表をご参照ください。

ちなみに、1日で複数の島を巡りたいという方は、朝早い船で公開開始時間前に島入りする前提で予定を細かく組めば、本島と高見島もしくは高見島と粟島、伊吹島と粟島の組み合わせで島をめぐることも可能です。

過去にも瀬戸芸に来たことがあり今年度の新作だけ見たいという場合は、かなりタイトスケジュールになりますが1日で本島・高見島・粟島の3島を巡ることも不可能ではないでしょう。

ただし、船の時間を把握した上でペース配分を計算しながら見て回ることになるので、ゆっくり鑑賞したい方や初めて島を訪れられる方は1日1島のペースで鑑賞して回ることをおすすめします。

いずれの島へも乗船前に検温を行い、リストバンドを受け取ってから船に乗るように誘導されるので、港へは時間に余裕を持って向かいましょう。

港近くの駐車場が満車になっていることも珍しくないので、車で行かれる場合は駐車場を探す時間や駐車場から港へ歩いて移動する時間もかかる恐れがあります。駐車場に関する詳しい情報は瀬戸内国際芸術祭2022公式ホームページの駐車場情報をご参照ください。

また、島へ行かれる場合の注意点ですが、島では食事のできる場所が限られ、お店が営業している時間が短かったり、平日は休業していたりしてお昼ご飯を食べ損ねてしまう人もときどきいるので、島でお昼ご飯を食べる場合は営業情報を確認した上で、早めに食べに行かれることをおすすめします。

自販機も水やスポーツドリンクなどは売り切れていることが多いため、飲み物やちょっとした軽食などは持参していくと良いでしょう。いずれの島もゴミは自分で持ち帰る決まりとなっています。

本島

本島には周辺の島々を取りまとめていた塩飽勤番所という国指定史跡に指定されている古い役所の建物が残っており、高見島や粟島なども含めた大小様々な島々からなる塩飽諸島の中心的存在でした。

1860年に日米通商条約に批准するため福沢諭吉らを含む遣米使節団をアメリカに送り、日本で初めて太平洋を往復した咸臨丸の乗組員の中に本島の出身者が多くいたというエピソードもあり、鋼で咸臨丸の彫刻を制作した石井章の《Vertrek「出航」》(作品番号:ho01)や、「咸臨」の言葉に込められた「(船の上では)位の上下なく誰もが平等で目的地に向かって力を合わせる」というメッセージをモチーフした眞壁陸二の《咸臨の家》(ho06)など、咸臨丸にまつわる作品も設置されています。

また、本島を含めた讃岐瀬戸には石切場が多くあり、石垣などに使用される石の産出場としても有名だったため、ツェ・スーメイ(Su-Mei Tse)の《Moony Tunes》(ho10)や2022年度の新作となる藤原史江の《無二の視点から》(ho14)、川島大幸の《SETOUCHI STONE LAB》(ho15)、アリン・ルンジャーン(Arin Rungjang)の《石が視力を失っていないように、盲人も視力を失っていない。》(ho16)など、石をモチーフにした作品が多いのも本島会場の特徴です。

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藤原史江の作品《無二の視点から》の一部
黒いサンドペーパーの上に拾った石で「石が落ちていた場所の風景(石が見ていた光景)」が描かれた作品が展示されている。

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川島大幸の作品《SETOUCHI STONE LAB》の一部
一見ただの石のように見えるが、この石は伝統的な矢穴をあけて矢で割る方法とドリルで穴をあけてセリ矢で割る方法、黒色火薬で割る方法の三つの技法によってそれぞれの断面が作られており、この石一つに過去から現代にいたるまでの技法など、石にまつわる様々な情報が込められている。
このほか、デジタル技術を応用して本島の石切場を1/144サイズに3Dプリンターで制作した作品など、石にまつわる作品が複数展示されている。

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アリン・ルンジャーンの作品《石が視力を失っていないように、盲人も視力を失っていない。》の一部
重石が押さえつけている赤い糸の先には竹と小石と紙でできた風鈴がつながっており、風が吹くと音が奏でられる。

そのほか、塩飽大工によって建てられた家の中に自然石とステンレスのリングで惑星軌道のうねりを示した作品などを展示しているアリシア・クヴァーデ(Alicja Kwade)の《レボリューション/ワールドラインズ》(ho12)や、塩飽大工の復活を願い、続・塩飽大工衆として作られた齊藤正×続・塩飽大工衆の《善根湯×版築プロジェクト》(ho09)、漁師の網などを用いて和船を思わせる立体作品を展示しているアレクサンドル・ポノマリョフ(Alexander Ponomarev)の作品《水の下の空》(ho13)、島にまつわる話を鏝絵にして民家の軒先などに設置した村尾かずこの《漆喰・鏝絵かんばんプロジェクト》、死者を埋葬する場所と霊を祀る場所を分ける両墓制をモチーフにした古郡弘の《産屋から、殯屋から》(ho08)、そして2022年度新作である昆虫型の音を奏でるロボットを空き家の中に展示したDDMY STUDIOの《遠くからの音》(ho17)などが本島に展示されています。

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DDMY STUDIOの作品《遠くからの音》の一部
昆虫ロボットは鑑賞者が近づきすぎると静かになり、離れると音を鳴らすため、鑑賞者は作品との距離を意識しながら作品と向き合うことになる。

本島に展示されてある作品は島の東側に集中していますが、本島港から最も遠いところにあるアレクサンドル・ポノマリョフの作品《水の下の空》までは歩いて40分ほどかかるため、バスか本島港付近のレンタルサイクルを利用することをおすすめします。

屋内作品の公開時間は9:30~16:30のあいだで、レンタルサイクルなどを利用して効率良く回れば1.5~2時間ほど、歩きでゆっくり回ると3~3.5時間ほどで鑑賞することができます。

また、作品番号ho18は本島内にある作品ではなく、本島行きフェリーが出ている丸亀港近くの丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の企画展「今井俊介 スカートと風景」常設展「猪熊弦一郎と新収蔵作品による鈴木理策展」(別途観覧料が必要/パスポート提示で割引)のことを指しています。

高見島

かつて蚊取り線香の原料となる除虫菊の栽培が盛んだった高見島には急斜面の上に家が建てられた集落があり、人口減少によってできた空き家などにアーティストによる作品が展示されています。

作品が展示されている範囲はそれほど広くないので2時間ほどで歩いて見て回れますが、階段や坂道が多いので動きやすい格好で行くと良いでしょう。高見島の作品の公開時間は10:10~16:30の間です。

高見島には2022年度の新作が多く展示されており、新しく追加された10作品は以下の通りです。

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(1) 高見港に入ってすぐのところに設置された内田晴之の屋外彫刻作品 《Merry Gates》(ta18)

(2) 空き家に漂う残されたモノの気配を目などのかたちに描き出し、空き家のいたるところ目が潜んでいる山下茜里の《Re: mind》(ta19)

(3) 2019年に展示されていたステンレス線による繊細なインスタレーション作品をリニューアルした村田のぞみの《まなうらの景色2022》(ta05)

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(4) 庭にある木から家の中にまで伸びた木の根の周りに円状の穴を掘って可視化させた竹腰耕平の《高見島の木》(ta16)

(5) 高見島の形が空海が書き忘れた「、」に見えたことから着想を得て、「、」などの描き忘れられた文字たちのストーリーを空き家の中に作られたホワイトキューブとブルーキューブの二ヶ所に展示したEri Hayashiの《待つ点》(ta14)

(6) 家の半分が崩れ落ちて地面に埋まってしまった空き家の、その地面の上にいくつもの鉄板を溶接して新しく家の半分を作り上げた鐡羅佑の《通り抜けた家》(ta17)

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(7) 寺社に無数に貼られた千社札と島の人々の繋がりを重ね合わせたモチーフを障子や襖などに展示した鈴木健太郎の《かたちづくられるもの》(ta15)

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(8) 嵐で遭難してアメリカ船に救助され、アメリカから戻ってきた男性など、男性の武勇伝が高見島の記録に残っている一方で、女性の記録がほとんど残っていないことに着目し、男性の武勇伝の陰で生活を支えていた女性たちのひそやかな楽しみや夢の時間をシュガーペーストで造形したバラで表現した西山美なコの《高見島パフェ》(ta13)

(9) 高見島の廃村である板持地区のリサーチをもとに2019年に制作された過去作の一部をリニューアルし、屋根裏部屋に新作を展示した藤野裕美子の《過日の同居2022》(ta07)

(10) 焼杉と鏡によって高さ3メートル×横幅6メートルの大きな壁を制作したケンデル・ギール(Kendel Geers)の《FLOW》(ta20)

そのほか、古民家にアクリル素材と時間によって移り変わっていく光を掛け合わせることによって幻想的なインスタレーションを作り上げている中島伽耶子の《時のふる家》(ta02)と《うつりかわりの家《(ta08)、高見島で出会った花々というテーマを絵画や陶製オブジェなど様々な技法で表現した小枝繁昭の《はなのこえ・こころのいろ》(ta10)、過疎化した高見島の再興を目的として2013年より継続している食プロジェクトである野村正人の《海のテラス》(ta11)も引き続き展示されています。

また、高見島行きのフェリーが出ている多度津にも多度津街中プロジェクト(ta21)として展示がされており、多度津の町のいたるところで見かける「一太郎やあい」という言葉をリサーチし、漫画とインスタレーションで表現した作品を石川金物店の古い建物に展示した尾花賢一の《海と路/一太郎やあい《や、月が街の輪郭をなぞるように移動していく様子をストップモーションで制作した映像作品を旧吉田酒造場に展示した山田悠の《Nocturne(Tadotsu)》の2人のアーティストの作品と、北前船によって財産を築き上げた多度津の豪商の家である合田邸にて多度津の歴史に関する資料と普段は立ち入ることのできない邸宅の内部の公開がされています。

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尾花賢一の《海と路/一太郎やあい《

粟島

1897年に日本初の海員学校ができた粟島には、船舶機器や模型、海員学校時代の様子を記録した貴重な資料などが展示されている粟島海洋記念館があり、日比野克彦の《種は船 TARA JAMBIO アートプロジェクト》(aw11)、《瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト》(aw01)や、「気候変動や海洋汚染の、生態系への影響を調査し共有する」ために船員・科学者・アーティストが乗船して世界中の海を探査しているタラ号の活動記録や乗船アーティストの作品を展示している《TARA》(aw03)など、船や海をテーマにした作品も多く展示されています。

粟島会場の作品は2時間ほどで見てまわることが可能ですが、資料を展示している作品も多いので、じっくりと資料にまで目を通したい場合は3~4時間ほどかかると想定しておくと良いでしょう。粟島の作品の公開時間は10:00~16:30の間です。

2022年度に粟島に新しく追加された作品は、先ほど紹介した日比野克彦の《種は船 TARAJAMBIOアートプロジェクト》(aw11)と、「足で潰す」シリーズの最新作となるアデル・アブデスメッド(Adel Abdessemed)の《い・ま・こ・こ》(aw13)、大地に四角く掘られた人工の池に蓮の花が描かれた花瓶が浮かべられているマッシモ・バルトリーニ(Massimo Bartolini)の《スティルライフ》(aw12)、粟島芸術家村に展示されている佐藤悠の作品《粟島大絵地図》と森ナナの作品《いのちの声を聴く》(両方ともにaw04)の5作品です。

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蝋燭が踏み潰される映像がループ再生されているアデル・アブデスメッドの《い・ま・こ・こ》

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粟島の様々な島おこし事業に関わっていた西山恵司さんが描いた「粟島絵路マップ」に着想を得て、島に住む人や島を訪れた人に「あなたの見た粟島を描きませんか?」と声をかけ、それぞれの想う粟島の姿を描き連ねて制作された佐藤悠の《粟島大絵地図》

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粟島で狩猟に同行して捕獲した猪から膠を作り、粟島の竹から墨を作って画材とし、自らの体で絵を描いた森ナナの《いのちの声を聴く》

そのほか、旧粟島幼稚園にかつての幼稚園のにぎわいを想起させるようなインスタレーションを幾何学的な線で構成したエステル・ストッカー(Esther Stocker)の《思考の輪郭》(aw06)や、巣立っていった子供たちを廃校に表現したムニール・ファトゥミ(Mounir Fatmi)の《過ぎ去った子供達の歌》(aw07)、粟島へ行く船が出ている須田港の待合所に漁業用ロープを張り巡らせて作った山田紗子の《須田港待合所プロジェクト「みなとのロープハウス」》(aw01)も引き続き展示されています。

伊吹島

現在もいりこ漁の盛んな伊吹島では、島の東側の海岸線に複数のいりこの加工場があり、いりこの美味しそうな匂いが漂っています。

島自体は小さく、中央の山を覆い尽くすようなかたちで集落が形成されていて急な坂道や階段が多いので、動きやすい格好で訪れることをおすすめします。

足腰に自信がある方は1.5~2時間ほどで作品を見て回ることも可能ですが、ゆっくり休みながら鑑賞される場合は3~4時間ほどを想定しておくと良いでしょう。

伊吹島の作品の公開時間は9:20~16:30です。

2022年度に伊吹島に新たに追加された作品はアレクサンドラ・コヴァレヴァ(Aleksandra Kovaleva)&佐藤敬 / KASAの《ものが見る夢》(ib08)と、マナル・アルドワイヤン(Manal AlDowayan)の《浜辺の歌》(ib10)、伊吹島の郵便局だった建物にインドネシアの6人のアーティストコレクティブが滞在制作を行ったゲゲルボヨ(Gegerboyo)の《つながる海》(ib09)の3つ。

展示予定だったジョアン・カポーテ(Yoan Capote)の《レクイエム》(ib07)は現在のウクライナ情勢およびコロナ感染症の影響で中止となっています。

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急伊吹島小学校の教室の窓から見えるおおらかな海と、島の民具や道具と網で構成された空間の調和が美しいアレクサンドラ・コヴァレヴァ&佐藤敬 / KASAの《ものが見る夢》

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漁に出た男たちの帰りを待ちながら、女性が火のついた椰子の葉を燃やしたりすることで海の癒しと浄化をはかり、手拍子と共に「悔い改めよ、海よ。悔い改めよ」と歌う、アラビア湾岸地域の伝統をもとに、伊吹島で漁村の人々と椰子の葉を燃やし、その火に海水をかけて沈める儀式を行い、漁によって生活するコミュニティにおける「儀式」の意味合いと人々と海との関係性を探求したマナル・アルドワイヤンの《浜辺の歌》

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四方を海に囲まれた日本とジャワ・インドネシアに見られる類似性をベースに、染色や絵画、水牛の皮を加工して作った影絵人形など、様々な手法で「つながる海」を表現したゲゲルボヨの《つながる海》

廃校の校庭に作られた石井大五の《トイレの家》(ib01)や、お産を終えた女性たちが一ヶ月間新生児と別火の生活をしていた共同産室の出部屋があった跡地に作られた栗林隆の《伊吹の樹》(ib05)、みかんぐみ+明治大学学生によって「島の小さな集会所」として作られた《イリコ庵》(ib03)、家型をしたお守り「ふなだまさん」と2艘1組で行ういりこ漁から発想を得たメラ・ヤルスマ(Mella Jaarsma)+ニンディティヨ・アディプルノモ(Ninditiyo Adipurnomo)の《パサング》(ib06)なども引き続き展示されています。

ちなみに、伊吹島への船が出ている観音寺港の近くには駐車場がなく、ハイスタッフホール(まちなか交流駐車場)か有明グラウンド駐車場に車を停めて、船の出発時間の20分ほど前に出ている無料シャトルバスで観音寺港に向かいます。有明グラウンド駐車場は平日は開いておらず、シャトルバスも出ていないのでお気をつけください。

是非この機会に島をめぐりながら芸術の秋を楽しまれてはいかがでしょうか。