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松山智一個展「Accountable Nature」が龍美術館重慶館に巡回

松山智一による中国本土初の個展「Accountable Nature」が2021年3月7日から5月16日まで龍美術館重慶館(Long Museum Chongqing)に巡回し、開催される。2020年11月に龍美術館西岸館(中国・上海)で開催された展覧会に新作を加えて、内容を拡充して開催される。東洋と西洋、新旧の文化が交差する歴史ある都市重慶は、近年急成長を遂げマジックシティとも称される。重慶館で初めて開催される国外アーティストによる展覧会となる本展では、松山の代表作や、新作となる鮮やかなキャンバス作品から巨大な立体作品まで体系的に展示し、膨大な情報の中で移ろいゆく現代を描写する松山の思想とあわせて紹介する。松山智一は、2001年の「奈良美智×村上隆 ニューポップ宣言」放映以来、実に約20年ぶりに40代の現代美術家としてNHK「日曜美術館」で単独で特集が組まれたり、2020年にはJR新宿駅に巨大なパブリックアート《花尾》を出現させたりと、美術界やアートファンから熱い注目を集める。

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日本とアメリカという異なる文化背景の中で育ち、現代を生きる松山の作品は、都市という「一つの世界」における様々な文化の融合を体現している。日本古来の伝統色や蛍光色の独特な組み合わせが画面を構成するキャンバスの上では、幅広い世界から引用されたイメージが融合され、多様で曖昧な現代のカルチャーを描写する。古典絵画やアンティークの文様、雑誌のピンナップやインターネット広告、そして東洋と西洋のイメージなどを氾濫させながらあらゆる要素を並置させる編集のような松山の制作プロセスは一見感覚的で即興的に見える。しかし、時空を超えた膨大な情報を解体し、そして丹念に再構築していくことで、画面上では通常ではあり得ない物や柄が破綻することなく同居し、絶妙のバランスを保ち、すべての要素が有機的に作用する。

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Wanderlust Innocence, 2019, Acrylic and mixed media on canvas, 261.62×185.42 cm

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Perfect Head Over Feet, 2020, Acrylic and mixed media on canvas, 185.0×262.0cm

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Cluster2020, 2020, Dimension Variable, Acrylic and mixed media on canvas, 33 panels of 60.0×60.0cm

絵画言語としてマッシュアップやサンプリングという編集的なプロセスを成立させることで、松山は現代美術のパラダイムに挑戦し、鑑賞者に新たな視点や概念を与える。千羽鶴をモチーフにした抽象シリーズでは、松山はさらに大胆に芸術の既成概念に挑む。東洋美術に見られる願掛けや縁起担ぎという要素は、西洋の近代美術の文脈では排除されてきた。松山は千羽鶴を記号のようにデフォルメし、独自の色彩を用いてフラットで抽象的に描くことにより、西洋で確立された抽象画の概念に挑戦し、未知の領域へと美の定義を誘う。

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Nirvana Tropicana (image), 2020, 316L Stainless Steel, 460.0×750.0×440.0 cm Courtesy of UAP, photography by Rex Zou

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Long Museum Chongqing

本展覧会のタイトル「Accountable Nature」は、自然災害や予期せぬ出来事が社会や経済の機能を麻痺させることを意味するforce majeure(不可抗力)という専門用語に由来する。人は自然の恵みを享受し、平時は両者の間に安定的な関係が築かれます。しかし、時として猛威を振るう自然はその信頼関係を揺るがし、人は抵抗する術を失う。理不尽とも思える自然の力に説明責任(accountable)はない。移ろいゆく自然の中で松山が見たものは、人々が日々生き、未来に希望を持ち、生活を再構築していく姿であったあ。本展を象徴する7mの巨大彫刻≪Nirvana Tropicana≫はまさしく、松山が人々の生活空間に漂うこのような観念を彫刻し具現化した作品となる。

松山は日頃から我々の生きる時代を捉え、表現することがアーティストの役割であると述べる。そしてその興味は、窓の外で起こるリアルな事象をデジタルの画面で認識するような、現実と非現実の境界線が益々曖昧になっていく現代社会に向かう。松山が「編集」をキーワードに制作してきたノマディックでユートピアな世界観をもつキャンバス群は、自然とデジタル、現実と非現実といった我々の時代を構築する不安定な二項対立を描き出し、同時代性を放つ。社会が「新しい生き方」に適応しようと模索する中で、松山の作品は、人々がアイデンティティを見出す「現実(リアリティ )」とは本当の世界なのか、そもそも「現実(リアリティ )」とは一体何なのかという問いを投げかける。

松山智一 / Tomokazu Matsuyama プロフィール

1976年岐阜県生まれ。上智大学卒業後2002年渡米。NY Pratt Instituteを首席で卒業。ペインティングを中心に彫刻やインスタレーションも手がける。作品には、東洋と西洋、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素が見られ、これは日本とアメリカの両国で育った松山自身の経験や情報化の中で移ろいゆく現代社会が反映されている。これまでにニューヨーク、ワシントン D.C.、サンフランシスコ、ロサンゼルス等の全米主要都市、日本、ドバイ、上海、香港、台北、ルクセンブルグなど、世界各地のギャラリー、美術館、大学施設等にて展覧会を多数開催。また、ロサンゼルス・カウンティ美術館、サンフランシスコアジア美術館、龍美術館、Microsoft コレクション、ドバイ首長国の王室コレクション等に作品が収蔵されている。2012年から 2017年5月までの5年間、School of Visual Arts(SVA)の非常勤教授を勤めた。2020年、新宿駅東口広場のアートスペースを監修、中心に7mの巨大彫刻を制作する。2021年にはNHK「日曜美術館」で特集が組まれ、グローバルな活動と重層的な制作が高く評価される。現在はブルックリン・グリーンポイントにスタジオを構える。