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3世紀にわたって営みを続けてきた世界最古のシャンパーニュメゾン「ルイナール」

2029年のメゾン創設300周年を前に、3年にわたる建設作業を経て、ルイナールが本社を構える「4 Rue des Crayères /クレイエル通り 4番」と名付けられた新たなパビリオンが誕生した。設計は藤本壮介、インテリアデザインは日本在住のグエナエル・二コラ、庭園はランドスケープ・アーティストのクリストフ・ゴートランが担当している。

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4 RUE DES CRAYÈRES クレイエル通り 4番に誕生したパビリオン

時と現代性、相反するコンセプトを共存させた空間デザイン

ルイナールのボトルの丸みとシャンパーニュの泡からインスピレーションを得た、真新しいパビリオンの曲線を描く非対称の屋根は、隣接する19世紀の直線的なファサードとは対照的な意匠で、視覚的なコントラストが強い2棟の建築物は向かい合うように建てられ活気ある対話を生み出しているような印象を与える。藤本は新たなパビリオンをいくつかのシークエンスに分けて空間をデザインした。建物の顔となるエントランスホール、中庭の景色を縁取る巨大な出窓、ガラスの壁面により光によって空間を彫刻する演出…ガラスはシャンパーニュから立ち上る泡を連想させるように、透明から霞がかった色合いへ変化している。木製の屋根を採用し、サステナビリティに関するメゾンのコミットメントも体現している。地元産の厳選された自然素材やバイオ素材を壁や骨組みに使用、ソーラーパネルによりエネルギーの80%を自給自足するなど、環境にも配慮したフランスの建築基準を満たしている。

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自然の造形物の美しさを称えた内装デザイン

新パビリオンには背の高い茎や咲きこぼれる花びらなど、自然の造形を建物内の装飾に取り入れており、訪問者は室内にいながら自然や風景の中にいるような印象を覚える。インテリアデザイナーのグエナエル・ニコラが手がけた、視点を変えることで様々な表情を垣間見せる室内空間は、驚きに満ちている。

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森の中の風景と調和するようにデザインされた庭園

新しいパビリオンは、5000㎡の保護林を含む7000㎡の敷地に佇んでいる。ランドスケープ・アーティストのクリストフ・ゴートランは、19世紀のファサードと現代的なパビリオンの間に対話を促し、この敷地を芸術的体験の場となるよう造園を施した。この場所のために特別にデザインされた現代アート作品がいくつも設置された。地内の植樹には、雄大なブナの木や若いセイヨウシデ、カエデや松など多種多様な樹種を使用、樹齢も大きさも異なる樹木群は植物の成長に合わせて自由に形を変え、気候変動に適応できる相互依存的な生態系の地層を形成している。

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藤本壮介 (Sou Fujimoto)

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日本を代表する建築家の一人。1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科を卒業後、2000年に自身の事務所「藤本壮介建築設計事務所」を設立。2016年にはパリ事務所「Sou Fujimoto Atelier Paris」を開設。藤本壮介建築設計事務所は、建築、都市計画、イノベーションを専門とする、国籍を問わず50人以上のスタッフが在籍している。

グエナエル・ニコラ (Gwenael Nicolas)

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インテリアデザイナー。1998年、多分野にわたるスタジオ「CURIOSITY INC.」を東京に設立。空間ではなく時間を旅することを受け入れる東京で、多様な企業やクライアントのニーズに対して、創造的でありながら機能的にも熟考された答えを提供するために未来を見据えている。 

クリストフ・ゴートラン (Christophe Gautrand)

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フランス ブロワにあるエコール・ナショナル・シュペリウール・ド・ラ・ナチュール・エ・デュ・ペイサージュを卒業し、2007年にランドスケープ・アーキテクトとしての資格を取得。2012年に自身の事務所を設立し、2014年にはベンジャミン・デシュリエールが共同経営者として参画した。