手塚建築研究所が設計したマグノリアコーヒーロースターズがグッドデザイン賞を受賞
群馬県でスペシャルティコーヒー豆を専門に販売するマグノリアコーヒーロースターズの店舗が、グッドデザイン賞2022(商業のための建築・環境ユニット)を受賞した。設計・監理は世界的建築事務所である手塚建築研究所が手掛けている。
トラディショナル×モダン
木造・平屋建ての店舗は、日本古来の黒炭をイメージした漆黒の下見板貼りの外壁、屋根の軒と方杖で支える限界まで低く設定した深い庇(ひさし)の二重屋根も昔の日本建築の伝統的な形式である。しかし、それを十八角形の多角形とすることにより、円形に見せ、モダンな雰囲気を出しているのが大きな特徴である。結果として、日本古来のトラディショナルなディテールを持ちながら、全体の空気感はモダンというユニークな建築物となっている。
美しい木造構造をあえて見せて欲しいという施主の願いから、建物の構造を積極的に見せるコンセプトで設計されている。上弦、下弦で構成された放射状に伸びた美しい屋根の梁構造、壁の構造は建物内部から見てとれる。よって、建物内部の天井、壁は存在しない。また、建物内部にも、外部の庇の先端にも柱は一切ない。
外構デザイン、ロゴデザインは、元電通クリエイティブディレクター(JR東海 CM クリスマスエキスプレス アートディレクター)の中村 政久。照明デザインはぼんぼり光環境計画が担当した。
栽培地特性、風味、社会倫理、全てにおいて高品質を追求するスペシャルティコーヒーの頂点を目指すマグノリア コーヒーロースターズ。酒の蔵元の持つ風土性を意識しつつも、コーヒーという国際性を織り込んだ風合いを作り出した。珈琲色に染め上げた内外は、時代の経過に左右されない設えである。
審査委員の評価
酒の蔵元のもつの持つ風土性とスペシャルティコーヒーの焙煎専門店という対極にあるイメージを同居させることが求められたプロジェクト。時代に流されない持続性のある設えとして建物の内外はすべてダークな色味(コーヒー色)に染色され、日本家屋のような下見板貼りの仕上げ、軒のある落ち着いた構成となっている。一方で、解放的な開口部や客席を設けずスタンディングスペースとした居場所の作り方によりコーヒースタンドらしいスタイルと佇まいが生まれ、それら相反する二つの世界観が同居する個性的な空間となっている。敷地に対して開かれた円形の平面と天井の構成による求心性により街との繋がりや関わり合いが生まれている点に設計者の手腕を感じる。
マグノリアコーヒーロースターズ 店舗概要
所在地 | 〒373-0056 群馬県太田市八幡町31-1 |
営業時間 | 火~土 10:30〜18:30、日 9:30-17:30 ※月曜定休祝祭日休み |
仕様 | 敷地面積:366.84㎡、建築面積:137.12㎡、延床面積:99.59㎡、木造、平屋 |
ホームページ | https://www.magnolia-coffee.com/ |