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BIGのカルチャーと「らしさ」を支える内部環境

現在私は世界的に名高い建築設計事務所、Bjarke Ingels Group(BIG)でDesign Assistantとしてインターンをしている。6カ月間のプログラムなので、今月で既に4カ月目に突入していることになる。

BIGの本社はデンマークのコペンハーゲンに位置する。2023年に竣工した現在の新しいオフィスは、建築、ランドスケープ、エンジニアリング、プロダクトまですべて社内のデザイナーたちのコラボレーションによって完成されているというのが売りである。単純なジオメトリーとその規則的な反復操作によって構成されたファサードは、まさにBIGらしさを感じるデザインだ。

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4カ月ちょっと働いた身として、労働環境としてはこれ以上ないというほど快適であるというのが簡単な感想であるが、その理由は綺麗なオフィスのみではないと感じる。つまり社内が高度に組織化、システム化されているという部分が非常に大きい。

働いてみてわかったBIGの組織的な側面を、できる範囲で述べていこうと思う。

BIGらしさ

スター建築家といわれる建築家の多くは、作品の中にその作家性や、キャラクターを見つけることができるが、BIGは特にそれが顕著な建築事務所であろう。BIGは世界中にオフィスを構えており、その総社員数は850人程にのぼる。会社の規模がスケールしてもなお、どのように社内で「BIGらしい」建築デザインが共有されているのかは、インターン前の僕がそうであったように、沢山の人が疑問に思う点だろう。

「BIGらしさ」の共有がなされている要因の一つは、オンライン上にまとめられた大量の過去プロジェクトの蓄積であると私は考える。

一人一台与えられるラップトップからは、BIGの過去のプロジェクトのレンダリング、図面、ダイアグラムなどが、フィルタリング検索によって簡単に見つけることができる。例えば新しいプロジェクトにアサインされた時、ビルディングタイプ、規模、図面の種類、キーワードなどでフィルタリングして検索することで、レファレンスとしてそれらを活用することができる。

またもう少し深く探せば、各プロジェクトの毎週のデザインアップデートのPDFや、CAD、イラレ、フォトショップのデータ一つ一つまで自由にアクセスすることができる。

実際インターンの業務としてダイアグラムなどのグラフィックの作成を任されることが多いが、検索をかけることで、「BIGらしい」グラフィックスタイルを吸収することができた。このような膨大で簡単にアクセスできるアーカイブは、「BIGらしさ」の共有の一翼を担っている。

また、コペンハーゲンオフィスだけでもPartnerが9人在籍している。彼らは各オフィスに毎日おり、社内で密にデザイナーとコミュニケーションをとることで、アウトプットのクオリティと「BIGらしさ」の維持を担っている。

BIGのデザイン思想を高度に理解している彼らの存在は非常に重要であろう。

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デジタルツール

BIGで業務をする中で、想像以上にデジタル化がなされているなと感じる。実際コンセプトデザイン段階は基本的にすべてRhinocerosで行われ、ボリューム模型は3Dプリンターで一気に出力される。デザインのスタディはRhinoceros上のモデルの変更を行った上で、リンクされたリアルタイムレンダリングソフトの決めれらたアングルで、簡単なレンダリングが毎回行われ、資料に使われる。

社内にはArchitect以外にBIM、IT、コンピュテーショナルデザインのスペシャリストが多数在籍しており、意匠に関すること以外の、コンピュータに関する専門的な部分は、彼らの職能に頼る形で分担している。

例えばラップトップの故障や、ソフトウェアのインストールで問題が生じた際は、IT チームに問い合わせればすぐに解決できる。Grasshopperのコーディングで戸惑ったときは、彼らが作成したチュートリアルや、サンプルファイルを参考にするのが早い。

また、特筆すべきことは社内での生成AIの活用である。Chat GPTなどのText to Textは言うまでもないが、

  • Image to Image
  • Image to 3D model
  • Image to Video

は、とうとう実務レベルに使えるようになったんだなという実感がある。特にAIモデルの一つである、Nano Banana をベースとしたAIツールは、建築設計業務に非常に有益あり、まるでAIがリアルタイムレンダリングソフトを扱っているかのように空間を把握できている印象がある。

実際BIGの直近のコンペ作品の映像やレンダリングを慎重にみると、生成AIならではの不整合が見つかるだろう。

外部にレンダリングを依頼することなく、インハウスのアーキテクトがコンペ提出レベルのレンダリングを行っていることには非常に驚いた。また同時に、建築家に求めらるスキルセットの変化を身をもって感じている。

オフィス内のイベント

定期的に開催されるFriday Barでは、金曜の16時頃になると地上階のスピーカーから音楽が流れ始め、ビールやカクテルなどが提供される。お昼には外部の建築家などを呼んだ講演会”Lunch & Learn”や、デジタルツールのレクチャーとワークショップなども頻繁に行われている。

タイミング的に私は参加できなかったが国外へのStudy Trip、また12月にはクリスマスイベントもある。

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ランチは毎日オフィスの地上階で決まった時間に提供される。そこで各々のプロジェクトの進捗などを話すことで、同僚などと親密な関係を築くことができる。

社内で頻繁に行われるこれらのイベントが、BIGの親密で活気のある企業文化を作っているのだと思う。