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創作活動の全貌を振り返る大規模展覧会

日本における実験映画およびビデオアートの先駆的な作家・出光真子(1940–)の大規模展覧会「出光真子 おんなのさくひん - ある映像作家の自伝」が、東京都写真美術館で2026年6月18日(木)から9月21日(月・祝)まで開催される。出光は1960年代にアメリカ滞在を経て制作を始め、女性の生き方や家族、メディアと社会の関係を主題に、フィルムや当時のビデオを用いた作品を発表してきた。とりわけ1970年代以降のビデオ作品では、テレビ・メロドラマの語法を取り入れながら、母と子、夫婦関係、女性の社会的役割といったテーマを独自の視点から描き出し、近年は、ジェンダーや身体をめぐる国際的な議論の高まりのなかで、その実践があらためて注目されている。

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出光真子 《Still Life》1993–2000 年 ミクストメディア 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

出光はやがてフィルムからビデオへと表現の場を広げ、それぞれのメディアの特性を活かした多彩な映像を生み出した。16mmフィルムの〈At〉シリーズでは、日米を行き来する出光自身の心象風景を繊細に描写。一方ビデオ作品では、画面内に別のモニターを映し込む「マコ・スタイル」など、ビデオならではの手法を展開した。さらに1980年代のビデオ作品では、テレビドラマのように物語性が強まり、演出の魅力にも富んだ作品へと発展していった。本展は、こうした表現の変化と広がりをたどる構成となっている。

出品作品(抜粋)

《Women’s House》1972年
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出光真子 《Women’s House》1972 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

美術家ジュディ・シカゴらが1971年に企画した「ウーマンズ・ハウス」展を出光が訪れ、撮影。学生とともに古い家を改装した展示空間での実践を記録し、約1年の編集を経て最初の16ミリ作品として完成させた。

《At Yukigaya 2》1974年
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出光真子 《At Yukigaya 2》1974 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

男児2人を育てる中、フィルムを買いに出る時間のない出光は、自宅にあった映画のタイトルやクレジット撮影用のハイコントラスト・フィルムを使って撮影した。高感度を活かし、光に反応するガラス片や木漏れ日、新幹線の灯りを捉え、日米の狭間にある自身の心象風景を表現した。

《At Santa Monica 3》1975年
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出光真子 《At Santa Monica 3》1975 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

本作もハイコントラスト・フィルムを使用し、数年間暮らしたサンタモニカの家と周辺の風景を撮影している。光と影の動きや水面の反射、光の明滅などを捉え、抒情的でありながら実験的な趣を持つ。出光は、フィルムは日常とは別の世界を作り出し、ビデオは日常を映し出すところだと語る。

《おんなのさくひん》1973年
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出光真子 《おんなのさくひん》1973 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

1973年の夏、帰国した際にビデオ上映会へ出品を打診され、初めてのビデオ作品を制作。白黒オープンリール機材を用いて、トイレに浮かぶ使用済みタンポンを撮影した。初めて作品上映の機会を得た出光は、以後日米を往復し制作を続けた。本作品は、映像作家・出光真子の評価を決定付けた初のビデオ作品(1973年)であり、本展のタイトルに用いられている。

《主婦の一日》1977年
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出光真子 《主婦の一日》1977 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

出光自身が出演し、主婦の日常を長回しで捉える。巨大な目がモニターに映り込み、絶えず被写体の主婦=出光自身を監視している。社会的につくられた主婦という立場が、世間の目から形成されるだけでなく、彼女本人の内なる目によっても内面化されていく様子を描く。モニターの入れ子構造は「マコ・スタイル」として後の代表的手法となっていった。

《清子の場合》1989年
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出光真子 《清子の場合》1989 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

画家志望の清子は両親の意向で結婚し、家事と育児に追われて創作の道を閉ざされる。自己表現への欲求を抑えきれず、追い詰められていく女性の内面と悲痛な叫びを描く。パリで画家を志すも苦悩の末に急逝した長姉に捧げられ、海外でも高く評価された。

《加恵、女の子でしょ!》1996年
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出光真子 《加恵、女の子でしょ!》1996 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

芸術家カップルの葛藤を描いた本作では、家事や夫の制作補助に追われる主人公が、抑圧に抗い、自らの制作を取り戻す姿を描く。作中には出光のインスタレーション作品《Still Life》(1993–2000年)が登場する。物体への映像投影などのこれまでの作品で取り組んだ手法を組み合わせ、集大成とも言える作品となった。

《Still Life》1993–2000年
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出光真子 《Still Life》1993–2000 年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu 撮影:阿久井長則

男女を象徴する二つのオブジェに映像を投影。アンスリウムの花の造形は男性性を想起させ、対となる形は女性性を示す。過去の作品でも見られた、花びらを剥ぎピンで留める反復や、降り落ちる紅い花びらが心の葛藤や矛盾、身体性を象徴している。サウンドは現代音楽家・高橋鮎生が担当。

出光真子

1940年、出光興産創業者・出光佐三の四女に生まれる。お茶の水女子大学附属小・中・高から早稲田大学第一文学部に進む。卒業後ニューヨークへ留学。抽象画家サム・フランシスと結婚。二児の母。妻であり母であることを超える創造表現への想いやみがたく、映像作家の道を歩む。自身の経験からフェミニズムをベースに、家庭における親と子、表現者として女性が生きる際の社会的摩擦などを問いつづける。著書に『ホワット・ア・うーまんめいど─ある映像作家の自伝』(岩波書店、2003年)、『ホワイトエレファント』(風雲舎、2011年)など。

「出光真子 おんなのさくひん - ある映像作家の自伝」開催概要

会期2026年6月18日(木)~9月21日(月・祝)
時間10:00~18:00(木・金は20:00まで)
会場東京都写真美術館
料金一般 700円/学生 560円/高校生・65歳以上 350円
URLhttps://tinyurl.com/3rusb6s3