2024年に生誕80年・没後20年を迎える小林正和の初めての回顧展
「開館60周年記念 小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ」が、2024年1月6日(土)から3月10日(日)まで京都国立近代美術館で開催される。2024年に生誕80年・没後20年を迎える小林正和(1944 - 2004)の、初めての回顧展となる。
1960年代以降、欧米において従来のテキスタイルの概念を超えるような作品群が数多く登場した。伝統的な技法を踏まえつつも、天然・合成繊維のみならず、金属や鉱物など様々な素材を取り込み、平面から立体へ、そして空間へと展開した作品群は、ファイバーアートと呼ばれ、その新たな潮流は、とりわけ1962年から1995年までスイスのローザンヌで開催された国際タペストリー・ビエンナーレを中心に世界へと波及していった。
日本におけるこの領域のパイオニアである小林正和は、京都市立美術大学(後の京都市立芸術大学)で漆工を学んだものの、川島織物在職時の「1本の糸との出会い」を起点に、糸を「垂らし」「緩め」「張り」集積させた立体造形作品を発表。そして第6回国際タペストリー・ビエンナーレヘの入選を皮切りに、国際テキスタイル・トリエンナーレ(ウッヂ、ポーランド)や国際テキスタイルコンペティション(京都)などでの活躍を通して、国際的に高く評価されるようになった。糸を含む「ファイバーは人間と密接に結びついている」と考える小林の作品は、常に空間と関係を切り結ぶことを志向し、最終的には戸外でのインスタレーションヘと展開していく。成安女子短期大学(後の成安造形短期大学)そして岡山県立大学で教える傍ら、1981年には国内で初めてのファイバーアート専門ギャラリーを開設し、そこでの展覧会活動などを通じても、多くの後進に大きな刺激と影響を与え続けた。
本展では、小林の代表作や関連資料約80点に、彼と歩みをともにした作家たちの作品を加えた約100点を紹介。1970年代から90年代にかけて京都に発したファイバーアートの動向を振り返り、そこでの小林の活動とその意義、さらには国際的な位置づけについて、そして今後のファイバーアートの展開について考察する。
本展のみどころ
日本を代表するファイバーアーティスト小林正和の初回顧展
小林正和の名前が世界に広く知られるきっかけとなった作品《吹けよ風/Blow in the Wind》シリーズや、大型インスタレーション作品、これまで公開されてこなかったスケッチブックやドローイング、さらにはデザイン作品などを含む約80点を紹介。
重力の「糸」と張力の「糸」、そこから生まれる自然
緩んで自重で垂れ下がる糸、弓なりの木や金属の両端を繋いで張られた糸、ときにこの相反する糸の二つの状態が組み合わされる。そこから自然の音や情景が生まれ出るのが、小林正和作品の特徴である。
マルチタレントで自由な小林正和
小林正和は、川島織物でファブリック・デザインに従事し、後には「ギャラリーギャラリー」を開設してファイバーアートの実験場とした。さらに大学にも勤務し若い人々に刺激を与え続けた。本展では、多彩な活動を行った小林正和にも注目する。
ファイバーアートの過去・現在・未来
本展では、小林正和と同時代を生きてきた作家17名の作品も併せて展示。そのうちの4名の方々には、今回のために新しい作品を創ってもらった。それによって彼らが見てきたファイバーアートの世界を実際に体験し、未来を考えるきっかけとなることを期待する。
作品について
《WIND – 4》1975年
第6回国際タペストリー・ビエンナーレ(1973年、ローザンヌ、スイス)に入選し、小林正和が最初に海外で認められた作品《Blow in the Wind》の素材違いの同形作品で、第2回国際テキスタイル・トリエンナーレ(1975年、ウッヂ、ポーランド)で最高賞(文化芸術大臣賞)を受賞した作品。綴織の間で緩やかに垂れ下がる緯糸が平面であるタペストリーに、豊かな陰影を生み出している。
「糸」に注目
小林正和がよく使っていたのが絹糸。しなやかで、何より上品な燦めきが作品に優美さを与えている。よく見ると、グラデーションに染められていることも。形状や設置方法によって、綿糸や化繊糸を使い分けているので、その素材の違いから生まれる作品の印象にも注目。
小林正和
1944年3月31日 京都市北区に生まれる。
1963年 京都府立紫野高校卒業、京都市立美術大学工芸科(漆工専攻)入学。
1966年 京都市立美術大学を卒業し、川島織物に就職(研究所考案部)、ファブリック・デザインに従事。
1972年 カワシマタペストリー展に《吹けよ風》を出品。
1973年 第6回国際タペストリー・ビエンナーレ(ローザンヌ、スイス)に《Blow in the Wind》で入選(その後も、第7・8・9・15回で展示)。
1975年 第2回国際テキスタイル・トリエンナーレ(ウッヂ、ポーランド)に《WIND – 4》で入選し、文化芸術大臣賞受賞(その後も、第3・4回で展示)。これ以降、海外展への招待が増加。国内外で活発な展覧会活動を行う。川島織物正社員を退職し、嘱託職員に(1979年まで)。
1976年 「今日の造形〈織〉―ヨーロッパと日本―」展(京都国立近代美術館)に《B⁵》と《W³》を出品。
1979年 成安女子短期大学教授に就任(1983年まで)。この頃からコミッションワークを手がけ始める。
1981年 京都四条河原町に草間喆雄・浅井伸一とともに「ギャラリーギャラリー」を開設。1989年まで毎年個展を開催。
1985年 京都北白川に「ショップ ギャラリーギャラリー」開設(1987年まで)。
1987年 第1回国際テキスタイルコンペティション’87京都に《KITE – No. 2 – 87》で入選し、佳賞受賞。
1990年 京北町の自宅に私設ギャラリー「ANDGALLERY」開設。
1993年 岡山県立大学開学に伴い教授に就任。国立国際美術館(大阪)で個展「近作展13 小林正和」開催。
1994年 第4回国際テキスタイルコンペティション’94京都に《Sound – Collage 1-93》で入選し、優賞受賞。
1996年 「テキスタイル・マジシャン」展(パリ)に参加。同名の映像作品公開。
2000年 「小林正和・小林尚美 宙からの響き」展(群馬県立近代美術館)開催。
2002年 「Masakazu Kobayashi featuring Naomi Kobayashi」展(シンガポール)開催。
2004年8月18日 死去
「開館60周年記念 小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ」開催概要
会期 | 2024年1月6日(土)~3月10日(日) |
時間 | 10:00 - 18:00 金曜日は20:00まで開館 |
会場 | 京都国立近代美術館 |
休館日 | 月曜日(ただし1月8日(月・祝)、2月12日(月・祝)は開館)、1月9日(火)、2月13日(火) |
料金 | 一般:1,200円(1,000円)、大学生:500円(400円) |
主催 | 京都国立近代美術館 |
URL | https://www.momak.go.jp/ |