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新しいものを生み出すために自分というものから遠ざかる

古川諒子による個展「回る羽根を切る / 貼る」が MONO.LOGUESにて2022年6月10日(金)から6月27日(月)まで開催される。「新しいものを生み出すために、自分というものから遠ざかってみたい」と今回の展示にあたり古川は話す。自分というリミテーションを離れた先にこそ新しい絵画があるのではないかという問いを立て、カットアップと呼ばれる特定のテキストを分解し別のテキストに再構築する文学技法が採用され、自分とは関係もなく脈絡もない、つまり「私」の外にある言葉を刻み、つなげ、そうして生まれた言葉をタイトルとして設定し、そこを出発点としてモチーフや構図を選び、絵画をつくっている。

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リズムモード、おやすみモード / 2022/ 綿布、アクリル絵の具 / 45.5×33.3cm

「自分」とは言い換えるならば一つの癖のようなもの。思わず知らず、私たちが持っている知識、とっている行動には何かしら偏りがあるもので、むしろそうやって私たちは生をデザインするわけですが、しかし裏を返せば(そして嫌な言い方をすれば))偏見と偏向に満ちているともいえます。「私」から生まれる発想も行為も、しょせんは「私」から組成されるものに過ぎないと、そんな風にも解釈できます。

もともと古川はステイニングというタイムコントロールの効きにくい手法をとり、今回取り入れた手法も同じくアンコントローラルなものであるが、このように作者の指揮権を乱し、弱めるような不安定な状況をあえて生み出し、そこに佇みながら絵画制作にのぞむことが、つまり彼女なりの「自分から遠ざかること」の実践であり、同時に「新しいものを生み出すこと」の実験である。しかし、作品に注がれる古川の「私」が完全消滅するかといえば、それはまた別の話。言葉のチョイス、色彩の調整、線の引き方など、一つの絵画において彼女自身のジャッジが下される局面は多々あり、古川も「自分を消す」ではなく「自分から遠ざかる」というニュアンスで話すように、今回の取り組みは、画家と絵画という「=」でもないし「≠」でも ない、因果のような運命のような、あるいは呪いのような結びつきを少し俯瞰して眺めることに狙いの一端があるのかもしれない。

古川 諒子

言葉から連想されるイメージをもとに絵画を制作しており、原則として以下の項目をルールとしている。

  1. 第三者によって書かれた文章を切り刻む。
  2. 制作者が(1)の文章を再構成する。
  3. 2の文章のみを手がかりに、絵画を制作する。

今回の展示で使用している文章は自宅で使用している扇風機の取り扱い説明書を切り刻み、再構成したものである。

1994年兵庫県生まれ。2020年広島市立大学芸術学部油絵専攻卒業、22年広島市立大学大学院芸術学研究科油絵研究博士前期課程修了。作品とタイトルの相互関係に着目し、タイトルの生成を起点に絵画を制作している。主な個展に、「私の知る × 夫妻について」(gallery RYO、東京、2021)、「記憶のないカウボーイは庭にいる」(gallery G、広島、2021)、「しらない土地のしらない人々」(広島芸術センター、広島、2020)など。

「回る羽根を切る / 貼る」開催概要

会期2022年6月10日(金)から6月27日(月)まで
会場MONO.LOGUES / 東京都中野区中野 5-30-16 メゾン小林 101
入場料無料