日本初の展覧会
アニー・モリス&イドリス・カーンによる二人展「A Petal Silently Falls」がKOTARO NUKAGA(六本木・天王洲)で、2025年10月29日(水)から12月26日(金)まで開催される。ふたりはイギリス人アーティスト夫妻で、鮮烈な色や力強い形態を用いた表現が特徴的なモリスと、言葉やイメージを生み出し、静謐で思索的な作品を生み出すカーンだが互いの要素を徐々に取り入れて制作を続けてきた。その共鳴が会場で展開される。
- Annie Morris, “Stack 3, Cobalt Turquoise”, 2025. Courtesy the artist, Photographer: Stephen White & Co
- Idris Khan, “The shadow of water”, 2025. Courtesy the artist, Photographer: Stephen White & Co
最初の子どもを流産で失った経験から、その痛みを創作へと変えてきたモリスとカーン。モリスは、卵や赤子の体を想起させる球体を不安定に積み上げる「Stack」シリーズで失われた存在への哀惜と、脆くかけがえのない生命のありようを表現、カーンは祈りの唱和を思わせるような、同じ単語や語句を繰り返し反復するプロセスによって積み重なった時間や記憶を可視化し、喪失の感情を作品に昇華させた。
- Annie Morris’ Studio, 2021 Photography: Stephen White & Co
- Idris Khan, “Illegible this world”, 2025. Courtesy the Artist.

Left: Annie Morris, "Stack 3", Manganese Purple, 2022 Right: "Stack 8", Ultramarine Blue, 2022 Photography: Stephen White & Co
アニー・モリス(Annie Morris)
1978年ロンドン生まれ。 パリの国立高等美術学校でジュゼッペ・ペノーネに師事した後、ロンドンのスレード美術学校を修了。
タペストリー、絵画、ドローイング、彫刻など幅広く手がけるモリスの作品の中で最もよく知られているのは、カラフルで不規則な形の球体を垂直の芯棒に通して重ねた彫刻作品「スタック」シリーズである。「スタック」は石膏や鋳造のブロンズで作られ、群青、緑色、黄土色などの鮮やかな顔料を用いて成形される。流産を経験し悲しみに沈んでいる時期に始められたこのシリーズでは、台座の上で球体が倒れてしまいそうなバランスで浮かんでいるように見え、生命の奇跡とその不安定さの両側面が表現されている。「スタック」シリーズに加えて、モリスはドローイングのようなタペストリーや直線的な造形の人物彫刻、そして画面全体に描かれた「フェイス」シリーズのように官能的な表現言語による抽象絵画を通じて女性の身体性について探求を行う。これらの作品は、女性の身体が宿す無数の様態を示すものである。
イドリス・カーン(Idris Khan)
1978年イギリス・バーミンガム生まれ。ダービー大学で写真を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにて修士号を取得。2017年、大英帝国勲章(the Order of the British Empire)を受勲。
写真・絵画・彫刻を横断し、同一のモチーフやテキスト、楽譜を幾度も重ねる「反復」と「多層化」によって、時間と記憶の堆積を可視化する。初期の「every…」シリーズでは、コーランのページやベッヒャー夫妻の写真作品など既存のイメージを重ね合わせ、普遍的な形態と集合的記憶の輪郭をもつ新たな像を生じさせている。また、《65,000 Photographs》をはじめとする彫刻作品では、数年間にわたり自身の携帯で撮影した膨大な画像をプリントして積み重ね、無形のデジタルデータを量塊として物質化し、記録することに対して執着する我々の強迫的な態度と、記憶のあり方の変化を批評的に示している。
「A Petal Silently Falls」開催概要
| 会期 | 2025年10月29日(水)~12月26日(金) |
| 時間 | 11:30~18:00(火~土) |
| 会場 | KOTARO NUKAGA(六本木) KOTARO NUKAGA(天王洲) |
| URL | https://tinyurl.com/2wt253vm |

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