伝統工芸品を3Dスキャンし、職人技をデジタルアーカイブ化
matomatoは、名古屋市有松の伝統工芸品「有松絞り」を3Dスキャンし、木材やアクリルなど別の素材に凹凸や質感を転写したあたらしい素材を作り出すことで、後継者不足が深刻な職人の技を保存し、新しい形の伝統継承を行っている。今後も日本の伝統工芸品の素晴らしい技を3Dスキャンや3Dプリントするデジタルアーカイブ化を進め、場所を問わず伝統工芸品の良さを後世にも伝える取り組みを行なっていく。
有松絞りとは
有松絞りは、愛知県名古屋市の有松町・鳴海町地域でつくられる木綿絞りの総称。 江戸時代初期に発祥した絞り染めの織物であり、さまざまな模様を描き出すことができる。軽やかで涼しげな美しい模様は、手ぬぐいや浴衣地として愛用されており、有松町・鳴海町地域は全国一の絞り染め産地となっている。 1975年に「有松・鳴海絞」の名前で国の伝統的工芸品に指定された。
深刻な後継者不足問題
日本の伝統的工芸品の後継者不足は深刻であるが、有松絞りも例外ではない。 制作過程で一番緻密かつ高度な技術が必要とされる絞り加工。高度な絞りの技術を用いる為、その職人さんでしか出せない模様となっており、後継者がいなければ模様は継承されず、途絶えていってしまう。デジタルファブリケーションを用いて活用と保存を考査。有松絞りの新たな継承方法として3Dスキャンとレーザーカッターによる取り組みを行うこととなった。
有松絞りから生まれたテーブル
今回第一弾として制作に取り組んだものは有松絞りの凹凸を転写したテーブルである。有松絞りの表面を3Dスキャンし、レーザーカッターで木材に凹凸を彫り、それを天板にしたテーブルを制作した。なお、3Dスキャン及びレーザー加工にはND3Mの池本しょうこと田住梓が担当。山上商店が有松絞りの素材を提供した。
テーブルとしての機能も果たすには、そのままの凹凸ではテーブルの役割を果たさないので凹凸を滑らかにしたり、木材への転写では素材の良さをどう活かせばよいかなど、試行錯誤の連続であった。数々の試作品を経て完成した今回のテーブル。その表面の凹凸は眺めていても面白く、思わず撫でていたい手触りの天板となった。
今回の作品は、愛知県の地域性・工芸品をテーマに、7組の建築家がひと部屋ずつデザインを手掛ける宿泊施設「セブンストーリーズ(SEVEN STORIES)」の6階、有松をテーマに内装デザインを行なった部屋に置かれ、実際に体験できる。