建築の枠を超えた活動を総覧する
2022年末に逝去した建築家・磯崎新の没後、国内初となる大規模回顧展「磯崎新:群島としての建築」が水戸芸術館で2025年11月1日(土)から2026年1月25日(日)まで開催される。磯崎は本展会場となる水戸芸術館の設計者で、20世紀を代表する最も創造的で先駆的な建築家として知られている。2019年には建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞。建築プロジェクトや都市計画にとどまらず、著作活動、芸術家や知識人とのコラボレーション、さらにはキュレトリアル・ワークを通じ、60年以上にわたり思想、美術、文化論や批評分野においても卓越した地位を確立した。
本展では決して単一の領域にとどまらない磯崎の活動を「群島」の様に構成。「都市」「建築」「建築物」「フラックス・ストラクチャー」「テンタティブ・フォーム」「建築外(美術)」をキーワードに、建築模型、図面、スケッチ、インスタレーション、映像、版画、水彩画などの様々なメディアを通じて、磯崎の軌跡を辿るとともに、自身が設計した水戸芸術館を舞台に、建築の枠を超えた磯崎の活動が俯瞰的に紹介される。
また、関連プログラムとしてゲストキュレーターらによるレクチャーが会期中に開催される。詳細は公式ページで確認できる。
内容
国内外の代表作
磯崎が東京大学丹下健三研究室所属時に関わった《東京計画1960》(1961年)に始まり、アーバンデザイナーとして提案した《空中都市―新宿計画》(1960-61年)、《空中都市―渋谷計画》(1960-62年)、《コンピューター・エイディッド・シティ》(1972年)などアンビルトの都市計画、《大分医師会館》(1959-60年)や《福岡相互銀行本店》(1968-71年)、《旧大分県立図書館(現・アートプラザ)(1962-6年)をはじめとする初期作品から《群馬県立近代美術館》(1971-74年)、《北九州市立美術館》(1972-74年)、《つくばセンタービル》(1979-83年)、《なら100年会館》(1992-98年)、《ラ・コルーニャ人間科学館》(1993-95年)、《カタール国立コンベンションセンター》(2004-11年)など国内外の代表作が紹介される。

《つくばセンタービル》1983年竣工、竣工写真、1983年©Kochi Prefecture, Ishimoto Yasuhiro Photo Center, Photo: Yasuhiro Ishimoto
建築界における功績
磯崎は建築のキュレーションともいえる仕事を通じ、一人の建築家という枠を超えて建築のプロジェクトを構想した。本展では、多くの建築家を起用した《くまもとアートポリス》(1988-98年)、国際的に活躍する国内外の建築家6 名に集合住宅を競作させた《ネクサスワールド》(福岡、1989-91年)のコミッショナーといったプロジェクトを通じて、磯崎の建築界における功績が紹介される。
戦後日本美術や現代美術との関わり
《奈義町現代美術館》(岡山、1994年)、《ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ》(2011-13年、アニッシュ・カプーアと協働)のようなアーティストとコラボレーションした建築プロジェクトや、パリ装飾美術館で開催された『間展』(1978-79年、79年に米クーパー・ヒューイット美術館巡回後、海外4都市で開催)のキュレーションなどにみられる戦後日本美術や現代美術との関わりが紹介される。

《孵化過程》1962年、展示風景「Arata Isozaki: PROCESS」2011年 Courtesy of MISA SHIN GALLERY, Tokyo, Photo: Keizo Kioku
スケッチブック
磯崎は建築模型や図面以外の様々なメディアで自身の作品を発表したことでも知られている。本展では群馬県立近代美術館などの70年代の主要建築をシルクスクリーンとして遺した「還元」シリーズ(1983年)、そして80年代後半から90年代前半に手がけた建築をモチーフにした24点の水彩画(1994年)が発表される。磯崎は世界の旅先で古典建築やモダニズム建築等を訪れ、その姿を70冊以上にもおよぶスケッチブックに記したが、当時手がけていた建築や展覧会そして執筆活動などの構想も残されている。磯崎のインスピレーションの源泉となった膨大な数のスケッチからその一部が紹介される。
磯崎建築としての水戸芸術館
1990年3月に開館した水戸芸術館は、画一的な近代建築を批判し、建築の根源的価値を再考するポストモダン建築の理念と実践を結実させた磯崎の代表作。本展では水戸芸術館を、出品作品のひとつとして“展示” 。あわせて刊行する『水戸芸術館ガイドブック』(監修・執筆:五十嵐太郎/デザイン:イスナデザイン)を手に館内外を巡り、磯崎建築を体験できる。
磯崎新
1931年大分市生まれ。1954年東京大学工学部建築学科卒業。1963年磯崎新アトリエを設立。以後、国際的な建築家として、旧大分県立図書館(現アートプラザ)、群馬県立近代美術館、ロサンゼルス現代美術館、バルセロナオリンピック競技場などを設計。近年では、カタール国立コンベンションセンター、ミラノアリアンツタワー、上海シンフォニーホール、湖南省博物館、中央アジア大学、中国河南省鄭州市の都市計画などを手がけた。
世界各地の建築展、美術展のキュレーションや設計競技の審査員、シンポジウムの議長を務めた。代表的な企画・キュレーションに「間-日本の時空間」展(1978-81)、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館コミッショナー(第6~8回)、同展日本館展示「亀裂」で金獅子賞受賞(1996)など。建築思想の国際会議「ANY会議」を10年にわたり企画(1991-2000)。著書に『建築における「日本的なもの」』( 新潮社、MIT Press) 、過去50年間にわたり書いてきた文章を編集した『磯崎新建築論集』(全8巻、岩波書店)など多数。建築のみならず、思想、美術、デザイン、文化論、批評など多岐にわたる領域で活躍。2019年「プリツカ―賞」受賞。
「磯崎新:群島としての建築」開催概要
| 会期 | 2025年11月1日(土)~2026年1月25日(日) |
| 時間 | 10:00~18:00(入場は17:30まで) |
| 会場 | 水戸芸術館現代美術ギャラリー |
| URL | https://tinyurl.com/5m97nrnu |

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