ディアスポラをテーマに作りこむ作品
アイザック・ジュリアン個展「Ten Thousand Waves」がエスパス ルイ・ヴィトン大阪で3月27日より開催される。本展は、国際規模のプロジェクトを実施し所蔵コレクションを世界に紹介することで、 より多くの方々が作品に触れる機会を創出するというフォンダシオン ルイ・ヴィトンのミッションに基づき、東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにて開催する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として行われる。今回で第五回目となる。
アイザック・ジュリアンはカリブ海のセントルシア島出身にルーツを持ち、イギリスのロンドンにあるセント・マーチン美術学校を卒業。1980年代半ば、マーガレット・サッチャー政権下のイギリスにおいて、ビデオを社会活動の表現媒体として、また対抗言説を伝える手段として用いたイギリス人映画作家たちのムーブメントを牽引した1人。サンコファ・フィルム・アンド・ビデオ・コレクティブは1983年にジュリアンが他と共同で設立したもので、アーティストのジョン・アコムフラーなどが属したブラック・オーディオ・フィルム・コレクティブとまさに同世代にあたり、黒人やアジア系ディアスポラの視点をイギリスの文化議論の場に紹介した。1990年代初頭、ジュリアンは主にテレビとミュージックビデオの界隈で活躍し、アメリカにおけるゲイ&レズビアン運動の歴史を描いたドキュメンタリーシリーズや、反植民地主義思想家として影響力のあるフランツ・ファノンを描いたドキュメンタリー・フィクションを制作。最近では、2002年に「ブラックスプロイテーション」と呼ばれる映画のジャンルについてのドキュメンタリーを、2008年には自らがアシスタントを務めた映像作家デレク・ジャーマンの人物像を伝える作品を発表している。
本展では展示スペース全体を占める、ジュリアンの最も野心的なインスタレーション・プロジェクトの1つである大規模な作品《Ten Thousand Waves》(2010年)を紹介。9つのスクリーンに映し出される本作品は、数々の受賞歴を誇る女優マギー・チャン(張曼玉)や映像作家のヤン・フードン(楊福東)など中華圏の芸術界の主要人物たちをはじめ、ロンドンの音楽家ジャー・ウォブル、チャイニーズ・ダブ・オーケストラ、作曲家マリア・デ・アルべアールなどとの協働により制作された。役者、場所、時代のポリフォニーそのものである本作品は、書道や映画、さまざまな神話が交差する中国文化へのオマージュでありながら、強制的な移動と移民の問題を中心に据えている。
アイザック・ジュリアン個展「Ten Thousand Waves」開催概要
会期 | 2024年3月27日(水)~ |
会場 | エスパス ルイ・ヴィトン大阪 |
URL | https://tinyurl.com/mvscf4c9 |