Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.

福田美蘭最新作、北斎アート作品を初公開

開館50周年記念特別展「北斎vs福田美蘭 小布施へのメッセージ」が、長野県小布施にある北斎館で2026年4月11日(土)から6月7日(日)まで開催される。小布施は北斎が晩年に訪れ傑作を残した地とされる。本展では北斎の代表作「冨嶽三十六景」シリーズや「上町祭屋台天井絵 男浪・女浪」、岩松院天井絵鳳凰図などをモチーフに、現代アーティスト・福田美蘭の独自の解釈と表現で生まれた、新作北斎アート作品が紹介される。

adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-1

展示作品一例と福田美蘭のコメント

福⽥美蘭「怒濤図」
adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-4

福⽥美蘭「怒濤図」

小布施上町の祭屋台の天井桐板に描かれた二図の渦巻を「近年「男浪」.「女浪」と俗称し、両図を「怒濤図」と呼んでいる」ことから、「怒濤」の意味の、激しい勢いのあるもの、勢いよく攻撃する様子を連想し、又「「怒濤図」の海底深く潜り込んでゆく渦巻には、波に宿る生命の根源に迫ろうとする北斎の執着が感じられる。」ということから二図を合体させて、女浪の中に男浪の波飛沫が潜り込んでゆくイメージをつくり、北斎の執着した生命の根源を具体的な形にしてみた。「制作当初どの向きで浪図が配置されていたのか判明しない…」ことも浪を再構成するプロセスを自由にしてくれて、北斎の波に手を加えることなくそのまま引用した。最初から図像の中に暗示されていたかたちから、近年の浪の俗称がついたと思われる。(福田美蘭)

福田美蘭「岩松院本堂天井絵 鳳凰図」
adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-16

福田美蘭「岩松院本堂天井絵 鳳凰図」

岩松院の天井絵「鳳凰図」を、北斎漫画に描かれている水の表現に変容させたいと思ったのは、北斎についてのエッセイの中の「北斎漫画の描かれた引波の表現が独特で、まるで巨大な鳳凰の尾羽を思わせる」という言葉がきっかけになっている。続く論考によって、ここでは永遠に生き続けるという鳳凰を、火災に弱い木造寺院の天井に描かれる水を司る龍神に倣い、北斎漫画の波のかたちをそのまま生かし、墨一色で構成した。北斎の鳳凰図は、本堂の中に差し込む光によって変化する油煙墨や背景に金箔を用いることで、日想観に基づく極楽浄土を再現することがテーマであり、建築の構造と切り離して考えることが出来ないことからも、水の表現にこの古刹を火災から守ってくれるように祈る気持ちを込めた。(福田美蘭)

福田美蘭「日新除魔図」(全52図)

日新除魔図は北斎が83歳の天保13年から翌14年にかけて、「日新たに魔を除く」ことを願い、ほぼ毎日獅子や獅子舞を半紙に描いたもので、「毎朝小さい紙に獅子を描いては家の外に捨てていた」という証言や、その捨てる理由について「我が孫なる悪魔を払う禁呪なり」と答えたということから、鑑賞画として描かれたものではなく、きわめて私的な動機の作画である。
ここでは邪気をもたらす「魔」や煩悩を祓い除ける伝統的なものから、現代の日常の災いや病を払い、健康や安寧を願うものまで、私が思いついたままに描き、関連する日付をつけて、北斎の画室「碧漪軒」から外に捨てられる装置作品とし、来館者に拾ってもらって持ち帰ってもらえるようにした。(福田美蘭)

福田美蘭「北信五岳 信州小布施町」
adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-17

福田美蘭「北信五岳 信州小布施町」

「冨嶽三十六景 甲州三嶌越」の背の高い巨木の存在感は、小布施町中心のシンボルツリーとして大きく枝を拡げ、来訪者を迎えるメタセコイアの印象と重なり、その後方にはこの町の高台から一望できる北信五岳の連なりを描く。富士山と同様に単独峰でありながら、五岳が揃って見える事は素晴らしいのだが、高さでは富士山に負けるので、それより高いモンブランの山として、秋の小布施堂の栗の点心「朱雀」を風景に組み込む。朱雀の美味しい季節には、毎日メタセコイアの大量の落ち葉を掃く人がいて、その人の背後の三角形と朱雀の形は北斎の画面に特有の相似形となった。(福田美蘭)

福田美蘭「竜田川に紅葉の図」
adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-18

福田美蘭「竜田川に紅葉の図」

「葛飾北斎伝」上巻に、北斎の評判を聞きつけた十一代将軍徳川家斉が北斎を召して、その場で即席で描く、席画を所望した際に、北斎は長い紙に刷毛で藍色の線を引き、その上に足に朱をつけた鶏を歩かせ、その足跡を紅葉に見立てて「これはこれ竜田川の風景なり」と言った逸話がある。現在、生きた鶏のチャボで「竜田川に紅葉の図」を再現した記録によると、チャボはしばらく紙の上を歩いてくれることもあれば、すぐ紙の外に出てしまうこともあった様で、鶏が思い通りに動いてくれるか予想の付かない点も、北斎の奇抜な発想とは別の、人の意表をつく趣向に劣らず大変面白い点だと強く惹かれたので、ここでは実際の鶏に代ってゼンマイで動くおもちゃの鶏がどの様に歩くのか分からない状況を再現してみた。(福田美蘭)

福田美蘭「冨嶽三十六景 五百らかん寺さざゐどう」
adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-11

福田美蘭「冨嶽三十六景 五百らかん寺さざゐどう」

北斎の「冨嶽三十六景 五百らかん寺さざゐ」の構図には、視線を富士山に誘導するいくつもの仕掛けがあり、欄干はそれらの効果を生かすように画面に安定感を与え、又さざえ堂の上から富士山を眺める人々の日常の空間と、その先に拡がる霊峰富士が象徴する世界の境界として重要な役割を担っていると思うのだが、実際に作品を鑑賞する時には視界は富士山に強く引き込まれ、欄干にとどまることはない。この北斎の見えるということを自在にあやつる作画の工夫を面白いと思ったので、北斎の仕掛けにあやかり、ここでは欄干の中に2026の4つの数字が隠れているとして、人物を動かし数字を現わして2026年の年賀状の絵柄とした。(福田美蘭)

福田美蘭「文字絵」

大谷翔平選手は、2025年11月に3年連続のMVPを受賞し、50本塁打&50奪三振という二刀流復活を象徴とするW記録も達成。この挿絵掲載の11月9日の時点でMVP受賞はほぼ確実と予想され、結果待ちの状態だったので、大谷の姿に「うつ」「なげる」の隠し文字を入れ、江戸時代から伝わる文字絵とした。北斎も文字と絵を融合させたユーモアあふれる遊び絵を制作していて、北斎にとって文字は形そのものが絵の骨格となる素材であり、文字を幾何学的パーツの集合体と捉えて読むものから見るものへと昇華させた点に新しさがあるように思う。技術的高さとユーモアが両立した江戸時代の粋を感じさせる魅力に、大谷への期待を重ねた。(福田美蘭)

福田美蘭「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-14

福田美蘭「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

この作品は、北斎の代表作を左右に反転したもの。私の作品が掲載されるときのミスとして、図版の左右反転がある。私はそれを見つけるたび、とても不思議な感覚に陥る。それはオリジナル絵画にとってのタブーであり、ポジ・フィルムが開発された以降の現代の特異な現象である。北斎の版種は木版であったので、当時彼の作品が左右反転することはありえなかった。ここでは、北斎も見たことのない北斎の版画として制作した。(福田美蘭)

福田美蘭「冨嶽三十六景 凱風快晴」
adf-web-magazine-fukuda-hokusai-kan-15

福田美蘭「冨嶽三十六景 凱風快晴」

北斎の題名にある「凱風」から、赤富士の背景の積雲は、刻々と変化していくのではないかと思うと、そのアニミズム的な雲の連なる造形は、北斎の感性にある怪異な現象と結びついて、この積雲が奇怪な何かに変容することを連想させたので、ここではその畏れを騙し絵の手法のアナモルフォーシスによって、目に見える形にした。画面左側斜めから傾けてみると、雲の部分に新たな図像が現れるので、浮世絵本来の鑑賞方法である、手に取って紙の感触と共に楽しむことから発想した作品。(福田美蘭)

「北斎vs福田美蘭 小布施へのメッセージ」開催概要

会期2026年4月11日(土)~6月7日(日)
時間9:00~17:00
会場北斎館
料金一般1500円 高校生・大学生700円 小中学生500円
URLhttps://tinyurl.com/ffj64bbm