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多様化するアートリテラシーの境界を横断する新作で有名アートフェアFrieze LAの公式プログラムでグローバルデビュー

ロサンゼルスと京都を拠点にする現代アーティスト、ナカヤマン。が、新作でグローバルデビューを果たした。2021年の京都の国宝飛雲閣での展示映像を素材に、パンデミックとアジアン・ヘイトを表現し、マイノリティ問題を題材として古典と近代カルチャー、現代のテクノロジーを融合させた既存概念に無いアート作品を発表した。adf-web-agazine-contemporary-art-nakayaman-1

現代アーティストのナカヤマン。が、作品《陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL (1.0: 1.0, 1.0, 1.0, 1.0) 1.0》(2022)を、2022年1月20日に現代アート専門メディアFrieze.comにてオンラインで公開、2月20日にアートフェア「Frieze Los Angeles」の公式プログラムに招致されオフラインでプレミア上映を実施した。2月14日にはハリウッドスターの来訪・滞在で知られるウエストハリウッドのホテル、シャトーマーモントの協力により36名のアート関係者を招待したプライベート・プレミアディナーを開催。女優のTAOとテンジン・ワイルド夫妻、アーティストのP. スタッフの他、フリーズ本国からも5名が出席。フリーズ・スタジオのクリエイティブ・リードであるマシュー・マクリーンの挨拶と作品紹介でイベントは開始した。

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ナカヤマン。はファッション業界でラグジュアリーブランドをパートナーに活動。本作は過去にCHANELに提供した《POLYPTYQUE》(2012, 2013)やGUCCIに提供した《From New York to Tokyo》(2015)、LOUIS VUITTONに提供した《LAST PHOTOBOOTH》(2017)などをセルフ・リファレンスしつつ、作家のキャリアの特徴とも言えるソーシャルメディアを駆使した新しい提言を打ち出している。作品の各段階での告知や配信、階層構造に設計されたタグ情報群に加え、漫画家の荒木飛呂彦氏や安野モヨコ氏、料理人の未在石原仁司や鮨よしたけ吉武正博氏、ヘアサロンTWIGGY. 松浦美穂氏、本作の楽曲を手がけた大沢伸一氏などの作品評をインスタグラムのみで紹介。オンライン上に発表されている本作動画はFrieze.com、YouTube、Vimeoで周辺情報が異なる。視聴者の体験ルートが違えば作品の見え方が変わる仕組みだ。これらは公に作品展示が出来ないコロナ禍の状況を逆手に取った手法であると同時に、昨今のアートブームに呼応した作家のリアクションでもある。経営者やエグゼクティブ層アートコレクターの増加、NFT市場の拡大、アートリテラシーの多様化など現在のアートを取り巻く状況を踏まえた全体設計であり、作品とその周辺情報の関係性もまた作家が考えるマイノリティ問題の鏡像として成立している。

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ナカヤマン。のコメント

本作は2021年に反復的に実施したパブリック・アクティベーションとその記録によって作成した。2000年前から続く日本の民間伝承の概念である「おに」にもたらされた歪曲に注目し、マイノリティのメタファーとして展開している。とりわけ疫病蔓延時、日本において矛盾する二つの役割を強いられてきたのが「おに」である。古来「おに」は疫病をもたらす悪しきものとして描かれつつも、疫病退散を祈り、祀られた対象でもある。京都、渋谷、パリ、ロサンゼルスで行ったパブリックアクティベーションは、この二つの矛盾する役割を再現する儀式として実施し、その記録は、邦題ともリンクする能や歌舞伎の「黒塚」「安達原」の物語をなぞる形で映像化した。正史や時の権力者の手により都合よく歪曲され、矛盾すら内包せざるを得ない「おに」の歴史と現状は、モデル・マイノリティと呼ばれるアジア人を想わせる。また丸1年の制作と発表の過程、それに及ぶまでの10年超の思考をインスタグラム上で流布した行為は、今や我々のインフラの一つになったソーシャルメディアの価値と確からしさを再考する切っ掛けになるだろう。情報伝達と歪曲は本作の重要なテーマの一つである。

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作品の中核を担うのは平安時代から続く慶派を継ぐ大仏師松本明慶による高さ2m寄木造の「おに」の彫像である。2021年2月京都の西本願寺内にある国宝建築飛雲閣に祀られた鬼像は、現代アーティスト 李禹煥の《関係項》(1969)を想起させる構成で展示され、日本のマンガ / アニメ表現の父である手塚治虫の《安達が原》が最新の偏光技術を用いて投影された。その後京都での展示は映像化され、渋谷のスクランブル交差点の街頭ビジョン、パリの歴史ある映画館エドワード七世劇場、そしてロサンゼルスにあるクエンティン・タランティーノ監督作品の撮影地であるキルビル・チャーチなど2021年を通してコロナ禍の都市を行脚することで儀式としての意味合いを深めていく。

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各地でのスクリーニングが撮影されては次の上映に取り込まれるという作風で、展示、転写、反復、反射、歪曲のループを形成している。このように「陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL」プロジェクトの一連は「おに」の変遷を鏡写しに見る、文化的もしくは歴史的変化において起こる歪曲についてのナカヤマン。の考察といえる。作家の言葉によれば「現代に生きる我々が見るものは、何らかの歪曲、鏡像、影でしかない」ということになる。今後の動向として2022年4月5日にFrieze Studiosの制作で、本作の制作過程とテーマを探求するドキュメンタリーフィルムがFrieze.comで公開予定。また2022年内に再び京都でのフィジカルな展示を予定している。

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ナカヤマン。 / YAMAN

ロサンゼルスと京都を拠点にするマエストロ・ストラテジスト、コンテンポラリーアーティスト。screamlouderの代表。1999年神戸大学工学部応用化学科卒業。2007年以降ソーシャルメディアを活用したバイラルマーケティングやコンテンツクリエイションで注目を集め、ラグジュアリーブランドをパートナーに活動。2020年には映画監督の庵野秀明と共同代表の八万・能を設立し「シン・エヴァンゲリオン劇場版」に参画。自らも2021年の西本願寺内国宝飛雲閣での展示《陸奥の安達原の黒塚に鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL》で、コンテンポラリーアーティストとしての活動を開始した。


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