『美術手帖』1月号は現代美術家 鴻池朋子を特集
2022年12月7日(水)に美術出版社から発売される『美術手帖』1月号では、個展「みる誕生」が静岡県立美術館で開催中の現代美術家、鴻池朋子を特集する。個展と連動した構成で、開幕直後に行った最新インタビューなどを盛り込み、場所や天候を巻き込んだサイトスペシフィックな作品や活動を各地で展開し、芸術の根源的問い直しを続けている鴻池朋子を深掘りする。
足元へ降り立つ「みる誕生」
今夏、高松からスタートし、静岡へリレーしてきた鴻池朋子の個展タイトル「みる誕生」。あまり見慣れない字面だ。手で書いてみる。なめらかに一筆で書ける「る」と複雑で画数の多い「誕」のあいだの飛躍につんのめる。試しに声に出してみる。匂いはあるか、味はどうだろう? このなにやら物質的な手応えのある言葉は、様々な素材、地形や気象、ひとびとと出会い、ものづくりを通して遊んできた作家がいま降り立つ、開けた場所なのかもしれない。
最新インタビューは、館内のみならず、裏山に散策路をつくった静岡県立美術館での「みる誕生 鴻池朋子展」、2022年11月3日の開幕直後におこなった。「現在は、観客は目で見る言葉に頼らず、明らかに独自に歩きだしている。『みる誕生』でいま、タイトルがぐっと足元にきたんです」と語る、鴻池の言葉を届ける。
「みる誕生」展と連動して、鴻池の現在の活動を読み解く6つの切り口にフォーカスを当てる。「01 みる誕生会」「02 筆談ダンス」「03 糞土思想とミュージアム」「04 物語るテーブルランナー」「05 大島と金陽会の絵」「06 『逃走階段』と『緑の森の一角獣座』」、それぞれのテーマについて鴻池と関わってきた人々が語る。
「鴻池朋子のストラクチャー」では、素材から構造をもつものへと造形が起こるとき、そのあわいで、鴻池がみていたもの、触れていたものとは。作品を成す骨組みについて、「ドローイング」「言葉、文字」「仕掛けもの」「家と外皮」「踊り」「遊び」「模型」といったキーワードから、作家自らが書き記す。
特別対談:池澤夏樹×鴻池朋子「目でないものでみる 耳でないものできく」。既存の美術、見る呪縛、近代文明、言葉や文字の拘束。私たちはそれらの足止めからどう逃れ、道を歩いていけるのだろうか。約1年にわたる新聞連載「ワカタケル」でタッグを組んだ作家・池澤夏樹とアーティスト・鴻池朋子による対談。身体による感覚をたよりに、人間界と自然界の境界線から手探りする、その先の風景とは。
また、「岡山芸術交流2022」で巨大なクマのぬいぐるみを水の抜かれた小学校のプールに設置したプレシャス・オコヨモンのロングインタビューや、日系移民二世でカリフォルニアに生まれ、強制抑留キャンプに収容されたアーティスト、ルース・アサワについての沢山遼による論考を掲載。
目次
鴻池朋子
足元へ降り立つ「みる誕生」
鴻池朋子最新インタビュー
FOCUS01 みる誕生会
みる誕生会―指先と作品のあいだに生まれるもの
対談:半田こづえ×細矢芳
FOCUS 02 筆談ダンス
時間のなかにとどまる―鴻池朋子の方法
木下知威=文
FOCUS 03 糞土思想とミュージアム
FUNDAMENTAL GRAFFITI(for museum)
奥脇嵩大=文
FOCUS 04 物語るテーブルランナー
旅に出る。出会い、誤解し、変化し続けるため。
メイボン尚子=文
コラム:転がる転がるテーブルランナー
弓指寛治=文
鴻池朋子のストラクチャー
菅原淳子=編集 小川順子=デザイン
FOCUS 05 大島と「金陽会」の絵
「みせる誕生」―ある壁のぼりから
藏座江美=文
コラム:美術の初源を伝える―鴻池朋子さんについて
北川フラム=文
FOCUS 06 「逃走階段」と「緑の森の一角獣座」
《緑の森の一角獣座》をめぐる、アーティスト―若林奮、田島征三、鴻池朋子がつなぐ螺旋
論考:惑星のほうへ―高松と大島を旅して感じたこと
山本浩貴=文
対談:池澤夏樹 × 鴻池朋子
目でないものでみる 耳でないものできく
他
美術手帖2023年1月号 概要
発売日 | 2022年12月7日(水) |
定価 | 1800円+税 |
発行 | カルチュア・コンビニエンス・クラブ |
発売 | 美術出版社 |
造本・体裁 | A5版変形 |