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隈太一が語る、直島SANA MANEのサウナ「SAZAE」の完成秘話

瀬戸内海に浮かぶ直島でグランピング型リゾート施設を営む「SANA MANE」に、2022年9月29日、宿泊者限定の貸切サウナとして「SAZAE」がオープンした。設計を担当したのは、隈研吾建築都市設計事務所設計の隈太一。このたび、サウナの詳細発表とともに、完成に至るまでの背景や裏話が公開された。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-3

サウナデザインの未来を描く

SAZAEは、サウナ作りの鉄則である、天井の低さ、座面の高さ、断熱、空気対流、サウナストーブ選定などの条件全てを一旦フラットに考え、立案(デザイン)している。その上で、どのようにすれば良質なサウナ体験と共に成立させることが出来るのかを、各業界のプロ達がアイデアを絞り、具現化したサウナとなっている。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-11

隈太一:通常、サウナ室として高さのある形状は熱が上部に溜まってしまうためサウナには向いてないと言われる。今回は環境エンジニアにも協力してもらい、空気を上部の開口部から押し出して下から引っ張ることで強制換気を促す吸排気システムを取り入れた。 さらに、建築として構造壁に十分に厚みをもたせているため、断熱材を必要としない。それを検証するために、サウナ室の温度・湿度を、環境エンジニアと共にシミュレーションを行いながら設計を進めた。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-10adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-4

なぜこのデザインになったのか?

隈太一:サウナ室内でもサウナ後でもべたっと横になれる空間がまず作りたかった。そのためにまずは椅子のラインから決めていった。それからトップライトを取ることにどうしてもこだわりたかった。また、 旧来のサウナでは、外観といえば「扉」くらいしかない。その扉を内側に隠すことで、この特異的な形状を引き立たせている。テクスチャーをつけていく形を取りたくてそれを重ねていった結果、貝のような姿が出来上がった。サウナーが好きな「サ」のつく貝ということで「SAZAE」と名付けた。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-2

テクスチャーをつけていくというのは、今回のような細かいひだのある物のイメージ。隈事務所では、「ヒューマンスケール」、自然に近いスケールを常に意識している。「貝」も実際に細かいひだから成り立っているし、自然にあるものを高い解像度で表現しようとすると細かな構造になっていく。素材としても木材の素地のままを使っていて、それを150段、緻密な計算の上でパズルのように積み重ねている。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-5

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自然と調和する光の計画

体も心も「ととのう」ための空間づくりを考える上で、「光」はとても重要な要素である。今回は、SANA MANEの施設設計当初から照明デザイナーとして入っている建築照明計画(ALG)の小西美穂がサウナの照明プランに参加している。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-15

小西美穂:もともと SANA MANE は、この場所特有の自然環境と光環境との調和を図るために「沈む光」「集いの光」「慈しむ光」「いざなう光」「囲む光」という5つの光の要素をテーマに照明計画をしている。これを計画の基盤にしながら、隈さんの全体のイメージを具現化していき、サウナとしての機能性とアートとしての意匠性を保ちながら照明デザインを行った。夜間は、水風呂の壁面に埋込まれた水中照明によってSAZAE外観を優しく照らし上げ、水面の揺らめきがより有機的な存在へと変身させる。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-10

サウナ室は、外側と内側がシームレスに光でつながっている状態を意識。また、足下から発せられ る最低限の光によって生まれる陰影の美しさを表現している。日本特有の、行燈・蝋燭など、下から照らし上げてモノを見る・空間を味わうという“日本人的な光の感性”に寄り添う間接照明を採用し、瞑想ができる空間を目指した。adf-web-magazine-naoshima-sana-mane-sazae-kuma-taichi-9

隈太一 プロフィール

隈研吾建築都市設計事務所 取締役・パートナー。1985年東京都生まれ。東京大学大学院建築学専攻博士課程修了。2020年入所、同年よりパートナー。 担当作は「宜野湾海浜公園屋外劇場」「タカハマカフェ」等。

小西美穂 プロフィール

日本女子大学卒業、ロンドンAAスクール修了。2010年、建築照明計画株式会社(ALG)にて照明計画ディレクターに就任。東京アメリカンクラブ、銀座吉兆、SANAMANEなどを手掛ける。