キッチナーの製造業の歴史とテックハブとしての躍進を表現したアートインスタレーション
かつて製造業の一大拠点であったオンタリオ州のキッチナー・ウォータールー地域は、カナダで急成長するテックコミュニティのホットスポットとなっており、ヤフーやグーグルなどの大手ハイテク企業のオフィスが新たにオープンしている。トロントから車で1時間のこの地域には、大手だけでなく、何百ものスタートアップ企業が存在し、カナダで最も急速に経済が成長している地域の一つと言えるだろう。キッチナーのダウンタウンには、倉庫を改造した建物と新しいビルが混在しており、トロントに拠点を置く大手企業のサテライトオフィスとして、また新しいビジネスを始める拠点として、魅力的な街であることがよくわかる。
Dubbeldam Architecture + Designは、キッチナーのキングストリートにある新しいビルのロビーアトリウムのために、インスタレーション作品「Binary Spectrum」を制作した。3階分の空間に、直径の異なる8,000枚のカラーディスクを650本のワイヤーケーブルで吊り下げ、この地域の豊かな製造業の歴史と急激なハイテクハブへの転換を具現化したサイトスペシフィックなアートインスタレーションである。
バイナリースペクトラムは、有形のファブリケーションオブジェクト(製造業)と無形のデジタル領域の表現との陰陽関係を探求しています。繰り返されるディスクは、デジタルプロセスや科学に見られるフラクタルパターンを示唆し、ヒューマンスケールの空間効果を生み出すために使用されています。
ー建築家 ヘザー・デュベルダム
アトリウムの広大な空間は、インスタレーションの存在によって、その動的な特性を体験できるダイナミックな空間へと変貌を遂げている。1階と2階を行き来する人々の動きに呼応して、垂直のケーブルは柔らかく揺れる。人々がもたらす賑やかなエネルギーによってこの大きな彫刻に命が吹き込まれるのである。外から、下から、そして上から近づいて見る。様々な角度から眺めることで無数のパターンを発見することができ、それぞれの角度で異なった新鮮な感覚を味わえる。さらに、親しみやすい形と色のアクリルディスクで満たされた空間は、通りを行き交う人々をも惹きつける。
暖かみのある赤と涼しげな青。両極端にあるふたつの色のコントラストが、緩やかなグラデーションを経て調和され、設置された家具との絶妙なコンビネーションで独特の空間を完成させている。青みを帯びた家具は、インスタレーションとの相性だけでなく、空間効果も考慮して配置されている。家具を置くことで、そこは休憩スペースとなり、インスタレーションを鑑賞するための新たな視点を提供する場所ともなるのである。
Dubbeldam Architecture + Designについて
Dubbeldam Architecture + Designは、持続可能なアプローチを実現する、意義あるプロジェクトにこだわる学際的なデザインスタジオ。商業、施設、ホスピタリティ、複合施設、住宅など、さまざまな分野のプロジェクトに加え、ランドスケープデザイン、プロダクトデザイン、建築的インスタレーションなど、多彩な実績を誇る。カナダの建築界で最も古く、最も権威のある賞のひとつであるProfessional Prix de Romeの建築賞をはじめ、80以上のデザイン賞を受賞しており、国内外の出版物でも広く知られている。卓越したデザインへのコミットメントと、建築におけるサステナビリティとウェルネスに焦点を当て、生活、仕事、遊びのための革新的でユニーク、かつ環境的に責任のあるデザインソリューションを生み出すことで知られている。