アール・デコの化粧道具や短編映画も展示 2020年6月1日(月)~11月3日(火・祝)
ポーラ美術館は2020年6月1日(月)より開始したテーマ展示「LÉGER&ART DÉCO(レジェ アンド アール・デコ) 100年前の未来」にて、新収蔵作品のフェルナン・レジェ(1881-1955)《鏡を持つ女性》を初公開した。フェルナン・レジェはピカソ、ブラックらと共に20世紀を代表するキュビスムの巨匠とされるフランスの芸術家。今から100年ほど前、パリで建築の製図工として働きながら絵画を学んだレジェは、機械に造形的な美を見出す「機械の美学」を基軸に、急激に産業化した同時代の風景を、製図や工業製品の生産技術を意識した新たな形式で描き出した。
レジェの《鏡を持つ女性》は、球や円筒形、直方体などの幾何学的な形が、白、黒、赤、青、黄、緑色に塗られ、複雑に組み合わされた絵画作品。本作品は、鏡を示す楕円形を中心に、長い髪の女性の平面的な顔、円筒形の腕や指などヴォリューム感のあるパーツが、重力とは無関係に配されている。格子状の構図と、色あざやかな色面の配置からは、レジェが「キュビスム」や、モンドリアンらが所属したオランダの抽象芸術グループ「デ・ステイル(De Stijl)」が用いた格子状のコンポジション(構図)を意識していたことが伺える。第一次世界大戦後、戦地から帰還したレジェは、1920年に8点の鏡を持つ女性像のシリーズを制作した。そのうちの5点が本作品と同じく「鏡を持つ女性」と名付けられ、他3点が「化粧をする女性」とされている。鏡をのぞきこみ、美と戯れる女性像のポーズは、西洋絵画の伝統的な主題として様々な意味を込めて描かれてきた。レジェは、1910年代より建築現場や工場で働く労働者など、勇壮な姿に着目してきましたが、1920年に取り組んだ本シリーズを機に、女性像のテーマを開拓していった。
レジェが示した世界は、技術革新により扉が開かれた進歩への興奮と機械礼賛の輝きに満ち溢れている。今回、レジェの油彩作品がはじめてポーラ美術館のコレクションに加わった。これでポーラ美術館のレジェ・コレクションは、版画を含め2点となる。テーマ展示「LÉGER&ART DÉCO 100年前の未来」では、新収蔵作品とともにレジェの短編映画『バレエ・メカニック』や版画作品を鑑賞できる。また、レジェの作品テーマである「鏡を見る女性」に関連して、同時代にヨーロッパを席巻したアール・デコの装飾様式の手鏡や化粧道具のほか、この時期に活躍した工芸作家ルネ・ラリックのガラス香水瓶の名品と共に紹介する。
フェルナン・レジェ Fernand Léger 1881-1955
ノルマンディー地方の町アルジャンタンに生まれる。パリで建築の製図工として働き、装飾美術学校や画塾に通い絵画を学ぶ。セザンヌのほか、ピカソ、ブラックのキュビスムや未来派の絵画に触発され、単純なフォルムと明快な色彩を追究する。1911年にキュビスムのグループ「セクシオン・ドール(黄金分割)」のメンバーとなり、都市風景や労働者をテーマに造形の前衛を目指す。絵画、挿絵のほか、建築の壁画やステンドグラス、陶器、彫刻、映画も手がけた。