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ミースとコルビュジエと実験住宅と

バウハウスと時を同じくして、ドイツでは1920年代中ごろからジードルングとよばれる公営集合住宅の建設が始まり、近代建築家の能力が発揮される建築課題の一つとなっていた。

当時、第一次世界大戦の戦火に見舞われたヨーロッパ諸国の経済状況は、建築への浪費が現実的ではなくなっていた。また深刻な住宅不足問題を抱えており、庶民の住宅を大量に建設することが必要であった。

今回はその状況において開催された住宅展覧会、ヴァイセンホーフ・ジードルングを紹介する。

ヴァイセンホーフ・ジードルング(Weißenhofsiedlung)1927

「ヴァイセンホーフ・ジードルング」とは、ドイツのシュトゥットガルト郊外のヴァイセンホーフで、1927年(昭和2年)に建設されたドイツ工作連盟主催の住宅展覧会、実験住宅群である。ミース・ファン・デル・ローエの指揮のもと、ドイツを中心に17人の建築家が参加し、21週間の短期間で21の住宅を建築した。「ジードルング(Siedlung)」とはドイツ語で「集落・集合住宅」の意味である。

参加者には近代建築の四大巨匠、コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエ、グロピウスの3人を含め、彼らの師であるベーレンス、デ・ステイルのJ.J.P.アウト、ハンス・シャロウン、ブルーノ・タウトら著名な建築家が参加している。

第二次世界大戦の戦災により、グロピウス、タウトらの住宅は破壊されたが、他の残った住宅は現在でも利用されている。(このグロピウスが設計した、建設作業の効率化を図った「住宅NO.17」の乾式構法は、プレファブ住宅に大きな影響を与えた。)

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)1886-1969

ドイツ出身のモダニズム建築家で、近代建築の四大巨匠の一人。ユニヴァーサル・スペースと呼ばれる、鉄骨造・鉄筋コンクリート造を用いた、内部空間を限定せずどのような用途にも対応できる空間を提唱した。「Less is more.」(より少ないことは、より豊かなこと)や「God is in the detail」(神は細部に宿る)などの言葉が有名。1930年1933年までバウハウスの校長として教鞭をとった。彼の設計したトゥーゲントハット邸は、2001年にユネスコの世界遺産に登録された。

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ヴァイセンホーフ団地 - ミース・ファン・デル・ローエ

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ミース・ファン・デル・ローエ設計の集合住宅。外壁の鉄骨フレームと階段吹き抜けによる構造が内部レイアウトを柔軟にしており、キッチンと浴室を除いた空間は居住者のニーズにより自由に替えることができる。

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水平に連続した窓と突出したバルコニーが特徴的で、完成時と同じ淡いピンクトーンの外壁である。

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ヴァイセンホーフ団地 - ペーター・ベーレンス設計のテラスハウス

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ヴァイセンホーフ団地 - J.J.P.アウト設計のタウンハウス

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ヴァイセンホーフ団地 - ハンス・シャロウン設計の戸建住宅

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ヴァイセンホーフ団地 - ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ設計のシトロアン住宅

ル・コルビュジエ(Le Corbusier)1887-1965

スイスで生まれ、主にフランスで活躍した建築家。近代建築の四大巨匠の一人。1926年に鉄筋コンクリートを用いた近代建築の五原則「ピロティ」「自由な平面」「自由な立面」「水平連続窓」「屋上庭園」を提唱した。

ヨーロッパ、日本、インド、南北アメリカで建築を設計し、フランスを中心とする7か国に残る建築群が世界遺産となり、初の大陸を跨ぐ登録となった。

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ル・コルビュジエ(Le Corbusier)、ピエール・ジャンヌレ設計の二世帯住宅 近代建築の五原則「自由な平面」

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近代建築の五原則「水平連続窓」

これまでの建築は重厚な壁に囲まれていたが、鉄骨造・鉄筋コンクリート造により建築様式から開放され、自由なデザインのファサードや窓が作れるようになった。

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近代建築の五原則「ピロティ」

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近代建築の五原則「屋上庭園」

ピロティは地面から建築を開放し、人や植物・交通・運動のための場としている。二世帯住宅のため、手前と奥にそれぞれの玄関がある。

従来斜めであった屋根は平らにして屋上と空を開放し、庭園と日光浴・運動の場にしている。この住宅は高台にあり眺望も良い。また屋上には研究図書スペースがあり、他の住人を邪魔することなく深夜に仕事できることを意味している。

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近代建築の五原則「自由な平面」

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構造壁から平面が開放され、可動間仕切りでリビングと寝室の空間をフレキシブルに区切っている。

折りたたみ式ベッドはビルトインクローゼットに収納でき、居住空間を開放している。

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近代建築の五原則「水平連続窓」

階段脇のスペースは水平連続窓により明るく開放的な空間となっている。壁は装飾を取り払い、パステル調の色彩により面で塗り分けられている。

現在この建築は、ヴァイセンホーフ博物館として利用されている。

このジードルングのル・コルビュジエが設計した2棟は、2016年7月に「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」として、上野の国立西洋美術館とともにユネスコ世界遺産に登録された。