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デ・ステイル(De Stijl)

2017年はデ・ステイル100周年であった。
デ・ステイルとは、画家テオ・ファン・ドゥースブルフ(Theo van Doesburg)を中心とした前衛芸術冊子、および画家や建築家の国際的な活動の総称であり、オランダで1917年(大正6年)に創刊された。オランダ語で「様式」を意味する。

主要メンバーである抽象画家ピエト・モンドリアンが提唱した新造形主義は、水平線と垂直線の幾何学的造形要素に、三原色と無彩色による抽象的な構成による美の創造であった。絵画のみならず、建築やデザインにも新造形主義の様式を広げ、バウハウスロシア構成主義ダダイスムなどの異なる活動と、国境や美術の分野を超えて積極的に連携を図った。ドゥースブルフは1922年にヴァイマールでデ・ステイル講座を開き、表現主義的であった初期バウハウスに、幾何学的・機能主義的な手法へと転換の示唆を与えた。

デ・ステイルのメンバーとして、建築家のJ.J.P.アウト(J.J.P. Oud)、ヘリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietveld)などがいた。J.J.P.アウトの設計したカフェ・デ・ユニや、リートフェルトが設計したレッド・アンド・ブルー・チェア、およびシュレーダー邸は、デ・ステイルの思想を具現化している。これによって抽象主義は、日常の生活まで入り込むようになっていった。
1931年(昭和6年)のドゥースブルフの死によって活動そのものは終焉を迎えたが、異なる様々な活動へと引き継がれていった。

今回はバウハウスや近代建築に多大な影響を与えた、オランダのデ・ステイルについて紹介する。

カフェ・デ・ユニ (Café De Unie)1925/1986

建築家のJ.J.P.アウトによって設計されたロッテルダムの建築。モンドリアンの絵画のように、ファサードには原色の長方形が非対称に配置されている。1940年に第二次世界大戦で破壊され、1986年に再建された。

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「カフェ・デ・ユニ (Café De Unie)」1925/1986 , J.J.P アウト(J.J.P. Oud)

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ヘリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietveld)1888-1964

オランダ・ユトレヒトの建築家・家具デザイナー。レッドアンドブルーチェア、シュレーダー邸などが代表作。

レッドアンドブルーチェア(Red and Blue Chair)1918

背当が赤に、座板が青に塗装された肘掛け椅子。不連続に突き出した枠組みは黒に、切り口は黄色に塗装されている。デ・ステイルの思想を簡潔に具現化している。

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レッドアンドブルーチェア(Red and Blue Chair - 1918) , ヘリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietveld)

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シュレーダー邸(Rietveld Schröder House)1924

デ・ステイル建築を代表する、リートフェルトによって設計されたユトレヒトの住宅。外壁は白・グレーの面と黒・赤・青・黄の線形要素で構成され、インテリアも原色を用いている。

基礎とバルコニーは鉄筋コンクリート造、壁は煉瓦造、床と屋根は木造で、構造補助材として鉄骨が使用されている。面が一様に塗装されることで材質の違いが曖昧になり抽象性を強調している。

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シュレーダー邸(Schröder House - 1924), ヘリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietveld)

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1階にはスタジオ、書斎、台所、家事室、メイド室がある。2階は3つの寝室と浴室、リビングルームが可動式の間仕切りで区切られ、移動させることで1つの広い部屋として使うことができる。2000年にユネスコ世界遺産に登録された。

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ミッフィー(Miffy)

オランダのグラフィックデザイナー、ディック・ブルーナ(Dick Bruna|1927−2017)の絵本に登場するウサギの女の子のキャラクター。ナインチェ(Nijntje)、うさこちゃんとも。ユトレヒトに生まれたブルーナはデ・ステイルの理念に導かれ、太い黒線、鮮やかな原色、無彩色というシンプルな絵を描く。絵にはブルーナカラーと呼ばれる色が用いられ、最初は赤、青、黄、緑の4色、後年には灰色、茶色が付け加えられた。ブルーナはリートフェルトを尊敬しており、デザインを褒められた経緯がある。絵本『うさこちゃん びじゅつかんへいく』ではミッフィーがデ・ステイル調の絵を眺めている。

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ミッフィーミュージアム(Nijntje Museum)

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シュレーダー邸のあるユトレヒトにはミッフィーミュージアムがあり、隣のセントラル・ミュージアムにはブルーナのアトリエが移築されており、見学することができる。

子供の頃、ミッフィーの絵本が好きだった。

大学生の頃、モンドリアンの絵画がなんだか好きになった。

とある番組で、シュレーダー邸の映像に感動して、必ず観に行かなければと思った。

建築旅行でユトレヒトに降り立ったとき、そこにはミッフィーもモンドリアンもシューレーダー邸もあった。そしてそれらは『デ・ステイル』というもので繋がれていた。それからというもの、ずっとオランダとデ・ステイルに惹きつけられている。

好きなものが影響されているものは、やはり自然と好きになるんだなと実感した、そんな建築旅行であった。

下調べをしすぎない。そんな旅行をするようになったのはこの頃からだ。

参考:

"De Stijl 1917-1931", The Dutch Contributionto, Modern Art H.L.C.Jaffé.

"De Stijl" Edited by Theo van Doesburg. Leiden, 1917-1932. 8 volumes (90 numbers).

"ARCHIVE OF THEO VANDOESBURG AND HIS WIVES", Inventory by Bouwe Hijma, Rijksdienst Beeldende Kunst / NetherlandsOffice for Fine ArtsThe Hague, 1991.