トイレ・自販機・階段・食堂など掲示場所にちなんだ秀逸コピーで訴求
富山大学は年々就職活動が早期化するなか、就活に意識が向いていない学生を主催した就活ガイダンスに集めるため「この発想はなかった!」と驚くようなキャッチコピーと場所に、STUDIO ROLE / 制作による告知ポスターを掲示。その結果、200名の枠に対して500名の応募を獲得、大盛況で幕を閉じると共に、今回第62回目となる富山県デザイン展でも大賞の富山県知事賞を受賞した。
「就職活動も 一歩前へ!」富山県デザイン展で大賞を受賞した就活ガイダンスの告知ポスター
「勇気を持って一歩前へ」この言葉をトイレで見かけたことのある人は少なくないのではないか。言葉の通りにしておけば服や靴が汚れずに済んだのに…と後悔することもある。就活も同じで「まだ自分には早い」と油断していると、あっという間に就活生になり先を越され、あのとき一歩前に進んでおけばよかった…と後悔することになってしまう。
“地味に刺さるお知らせ”標語のようなポスター
ポスターは標語のようなキャッチコピーとイベントの概要を記載したシンプルな構成で、それだけにコピーのメッセージが“刺さる”お知らせになっている。有名人のセリフのパロディや親父ギャグのような言葉遊びなどクスッと笑えて、つい見てしまうコピーは全部で44種類もある。
「この発想はなかった!」ポスターの掲示場所が面白い
富山大学の就活ガイダンスの告知ポスターは、キャッチコピーはもちろんのこと、「ここにも!あそこにも!こんなところにも!?」と驚くような場所にも掲示してあったことが大きなポイント。トイレ・自動販売機・食堂・階段・廊下など約200枚のポスターが学生と接する様々な場所に貼り出された。通常、一般的な大学で貼り出される就活ガイダンスのポスターやチラシなどの告知物は学務室の前や就職・キャリア支援センター、就活情報掲示板など、いわゆる“情報需要の高い場所”で目にする。しかし「就活を本格的に始める前段階の3年生」を対象にしたイベントではまだ就職活動に対して意識が向いていない生徒が多いことから、上記のような場所での掲示では訴求力が弱いと予測。また、就職情報掲示板などは同一多種の告知が多いことから情報が埋もれてしまう為、単独で目立たせ、かつ「そろそろ就活を始めないとまずい」と思わせる告知戦略として、通常はチラシなどが貼られていない場所に張り出して、その場所ならではのメッセージで訴求した。
掲示場所+キャッチコピーで学生の心を動かす
階段途中の壁
「エスカレーターがあったら楽なのになあ」と階段を登る時に誰もが一度は考えたことがあるような気持ちをキャッチコピーに盛り込む。
様々な扉の前
扉は入口でもあり出口でもある。学生である自分から脱却し、社会人になるための就活の入口へ向かうようなイメージにも繋がる。
トイレの壁
キャッチコピーの通り、「こんなところまで!?」と思わず声に出してしまいそうなトイレの壁にも掲示。
野外活動の場所や帰宅時の駐輪場
思わず声に出して読みたくなる親父ギャグのような表現でアピール。
飲食の場
食堂や自動販売機に合わせたギャル語のような表現。
アイテムごと
学生なら誰もが使うコピー機やATMコーナーにも、アイテムに合わせた内容で呼びかける。
デザインスタジオROLE 羽田 純(ROLE / )
1984年大阪出身。ギャラリーのキュレーションを8年間担当した後、2015年富山県高岡市に事務所を開設。行政、企業、団体問わず、言葉や企画の面白さを生かしてクライアントの推進力を高める仕事を目指す。脳の誤認識、いわゆるタイポグリセミアと呼ばれる現象を用いた和菓子屋の広告や、具の製造で有名な富山県高岡市の職人たちをご先祖さまに変装させた「冥土in高岡」のシリーズ、まるで週刊誌の中吊り広告のようなコピーだらけの美術館ポスターなど、広告に楽しさを仕掛ける。
富山県デザイン展「富山県知事賞」
富山県デザイン展は、募したデザイン作品を審査し一堂に展示することで優れたデザインへの理解を深め、広く社会の豊かな生活文化の形成に寄与すると共に、富山県のデザイン技術の高度化と産業振興を目的とした、グラフィック作品、建築、インテリア、プロダクト作品などの総合デザイン審査会。