現在を見極めるために過去や歴史を見直すことで学ぶ
海外でも高く評価される戦国時代の甲冑は、戦の防具であると同時に、武将の力と誉を象徴するものでもあった。その甲冑をテーマにした展示会が金沢21世紀美術館にて「甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学」が、2022年5月3日( 火・ 祝 )から7月10日(日)まで開催されている。
大陸から伝えられた甲冑は武士階級が台頭した平安時代末期頃から大鎧や胴丸によって構成される形に変化し、日本において独自の美学的発展を遂げた。一方、機能面においては武器や戦闘法の変化に伴い、精巧な解剖学的エンジニアリングとともに進化した。石川県立歴史博物館をはじめとする全国の所蔵館から選び抜いた珠玉の甲冑をデジタル時代の美学をけん引する若手クリエイターたちが、デジタル解析映像とともに360度で鑑賞できるよう展示。また、現代の甲冑ともいえるスニーカーの装飾性や機能性に着目し、スニーカーを素材とした現代版の甲冑や3Dプリントによるスニーカーを対比して展示することで、歴史と現代美術の対話を実現。展示空間によみがえる甲冑は、生き抜く知恵と身を飾ることの誇りと喜びを現代の私たちに教えてくれる。
金沢にてデジタル時代をけん引する若手クリエイターが文化資産「甲冑」の魅力を現代的な視点で発信
本展は加賀藩前田家の歴史をもつ金沢において、甲冑という文化資産をキュレーションの技 でアップデートし、現代につなげることを目的としている。甲冑の内部構造をスキャニング解析し「内的な美」をデジタル映像で見せるライゾマティクスや、甲冑の細部にわたる精巧な美と技を360度で鑑賞できる空間をデザインするナイル・ケティングら、ポストインターネット世代を代表する若手クリエイターたちとの協働により、文化資産「甲冑」の魅力を余すところなく現代にアップデートして発信する。

Exhibition view: "GLOBALE: New Sensorium - Exiting from Failures of Modernization"
Curated by Yuko Hasegawa
Courtesy of ZKM | Karlsruhe
Photo by Tobias Wootton and Jonas Zilius
現代の甲冑・スニーカーとの競演による、歴史と現代美術の対話の実現
常にデザインや機能が更新されていく「現代の甲冑」ともいえるスニーカーに着目し、歴史的な甲冑との比較展示を通じて現代に通じる甲冑の美学をひも解く。スタイリスト三田真一によるスニーカーを素材に作られた近未来的な甲冑シリーズや、初コラボレーションとなるHATRA × MAGARIMONOが甲冑の文様や意匠に感化されて本展のためにデザインした3Dプリント製スニーカーなど、現代の甲冑と歴史的な甲冑との競演により、時空を超えた歴史と現代美術の対話を実現。
石川県立歴史博物館をはじめとする歴史博物館や美術館との初の大型コラボレーション
石川県立歴史博物館や井伊美術館、大阪城天守閣などの全国の歴史博物館や美術館との初の大型コラボレーションにより、安土桃山から江戸にかけてつくられた意匠やスタイルの実に多様な珠玉の甲冑を展示。現代アーティストが特別にデザインした什器や照明、音響の総体が五感を刺激する展示空間にて、これらえりすぐりの甲冑の造形美を細部にわたり360度で鑑賞することができる。
「甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学」
会期 | 2022年5月3日( 火・ 祝 )から7月10日(日)まで |
開場時間 | 10:00~18:00 |
会場 | 金沢21世紀美術館 展示室6、14 |