Blind Powerを応用したアプリをデザイン
ヴィアンカ(Veernca)は、音と位置で情報を管理する「moom」と、音から創造するSNS「heart」のふたつのアプリをデザイン。これらのソリューションを、「Blind Power」のコンセプトのもと、世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)」に出展する。
情報管理ツール「moom」
moomは、仮想の「メモ空間」をつくり、まるで部屋にモノを配置する感覚で情報を管理できるツール。ふだん膨大な情報をメモなどで保存しても、そのメモを見返す機会がなく、結局忘れ去ってしまうことはないだろうか。ヴィアンカのチームメンバーである視覚障害を持つ松村は、すべての情報をメモして残すことができないため、頭のなかに擬似的な部屋をつくり、モノを配置するように記憶している。このたび、彼の記憶法をもとに、さまざまな情報を仮想の部屋のような空間で感覚的に管理することができるアプリをデザイン。
仮想の部屋のような空間では、音楽や名言など、さまざまな情報をその情報のコンテキストに合わせた場所に配置することができる。部屋は情報の種別に応じて複数種類作成することが可能で、それぞれの部屋に情報をコンテキストを含んだ形で登録すると、自動的に情報が仮想的な部屋に配置される仕組みだ。
音から想像するSNS「heart」
heartは、想像を楽しむための日常音の投稿・共有SNS。現代では、写真を用いたさまざまなコミュニケーションツールによって相手の日常や興味を知ることができるが、そこに想像力は生まれず、ただ相手が見せたい姿を見るだけ。heartは視覚障害のあるメンバーの、SNSの使い方を参考に開発された。これはいわば「音の写真」。たった5秒や10秒の音によって、相手の見ている景色や気持ちを想像することができる。投稿にはフォロワーからの「いいね音」がついて、さらにすてきな音を奏でる。
ヴィアンカは、視覚障害がある人・ない人が楽しめるSNSの構築を目指して、音だけのSNSのプロトタイピングを実施。その結果、音から想像される人の温もりの大切さを実感。様々な音と共に生活していながらも、視覚情報に頼ることでいつのまにか聞き逃している音もあるのではないか。音によって、発見や感動のある、誰かの愛おしい日々を想像することができるのではないか、というコンセプトのもと当アプリをデザインした。
Valuable Designについて
障害の有無の関係なく、チームとして運営を続けてきたveerncaは、ワークショップやソリューションをデザインする方法を、潜在的な価値を顕在化し、新しい価値をつくるデザイン「Valuable Design(バリュアブルデザイン)」として取りまとめた。さらに、そのデザインを実施する過程をデザインプロセス「Valuable Design Process」として、大きく4つの段階で体系化。
- 信頼関係の構築
- 潜在的価値の発見
- 価値の顕在化
- 価値の提示
このValuable Designの"Valuable"は、障害者の活躍推進に取り組む国際イニシアティブ「The Valuable 500」に由来している。「Valuable 500」は、2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて発足し、障がい者がビジネス、社会、経済にもたらす潜在的な価値を発揮できるような改革をビジネスリーダーが起こすことを目的とした取り組み。