世界的なパンデミックにより変⾰期を迎えた現代のデザインの在り⽅を考察
公益財団法⼈⽇本デザイン振興会は、主催事業であるグッドデザインアワード(Good Design Award)の特別プロジェクト「フォーカス・イシュー」の今年度提⾔をウェブサイト上で2021年2⽉4⽇(⽊)に発表した。各分野の最新デザインを、一線で活躍するクリエイターが独自の視点で読み解き、その価値を社会へ伝えるのがフォーカス・イシュー。
このような取り組みはデザイン分野では珍しく、日本はもとより近年はアジア圏においても、日本のデザインの最新傾向や潮流、これからのデザインの在り方を示すものとして、注目が集まっています。今年度は、内田友紀、川西康之、原田祐馬、ムラカミカイエ、山阪佳彦の5氏がディレクターを務め、 「変化の時代にデザインができること」を全体のテーマとして、世界的なパンデミックにより変革期を迎えた現代のデザインの在り方について、各自の専門分野より関心のある事項について個々のイシューを定め、考察した。
また、提言では、具体的に2020年度グッドデザインアワード受賞作を例に挙げ、コロナ禍・地方創生・環境問題などの現代日本社会が抱える課題について、これからの解決策を模索する上でのヒントを多数提案している。
提言でピックアップしている受賞作例とコメント
東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト
このプロジェクトを成り立たせているのは、国内外にいる多くの市民たち。一企業や一人のスーパーマンが実現するのではなく、その向こう側の多くの人にスポットを当て、それぞれができる範囲で関与する。たくさんの人の仕事や居場所をつくり、関係者全員が関わったことに誇りを感じる丁寧な設計が際立ちました(内田 友紀)。
遠洋まぐろ延縄漁船 / 第一昭福丸
人手不足と高齢化に悩むマグロ漁船を、働きやすく心地よく居住しやすい、漁業の分野で働くことに誇りを持ってもらえるようにデザインしています。若い人が入ってきても、ベテランの高齢者との間に世代的な距離が生じて、コミュニティーも失われつつある。そんな状況の中、デザインができることを実践的に示したという点で私はこの作品を高く評価したいと思います(川西 康之)。
Webサービス / さきめし
新型コロナウイルスの流行で苦境に立たされた飲食業を、先払いによって支援する取り組み。レストランも居酒屋も、食事をするだけの場ではなく、改めてそれぞれの居場所の一つだったことがこの取り組みでは、可視化されているように思います。既存のプラットフォームを生かしつつ、状況に合わせたサービスとして再構築する意思を感じました(原田 祐馬)。
Shopping Platform / LOOP
いまアパレル産業はファストファッションの台頭によって、大量生産消費社会における象徴的な環境汚染産業となりつつあります。その持続可能化を目指す動きがある中で、 使用済み製品やパッケージのリユースを前提にした循環インフラをつくり上げた「LOOP」は、自分がデザイン側の当事者として現場で感じてきた課題を根本的に解決すると同時に、新たな創造性を呼び起こしてくれるものでした(ムラカミ カイエ)。
サーキュラーエコノミー / BRING
コンシューマーや流通を巻き込んで、服から服をつくる循環をデザインした今日的な素晴らしい取り組み。ここで注目したいのは、社会的意義への共感を要するCSR(企業の社会的責任)活動の文脈ではなく、衣料のリサイクルを販売促進と位置付けた点。それがブレークスルーにつながった要因だと思います。「いますぐにでも行動してもらわなければ」という意思のあるデザインだと感じました(山阪 佳彦)。