Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.

イギリスを代表する国立美術館「ナショナルギャラリー」の歩き方

ロンドンの主要観光スポットであるトラファルガー広場。ネルソン監督の記念柱を囲むように、夏には噴水、冬にはクリスマスマーケットへと集った人々で賑わいを見せます。

adf-web-magazine-mori-london-national-gallery-1

ロンドン、トラファルガー広場。奥に見える建物がナショナルギャラリー。

そんな広場の北側に、世界でも有数の美術館があることを知っていますか?
ナショナルギャラリーと呼ばれるその美術館は、名前の通りイギリスを代表する1824年に設立された国立美術館です。西洋絵画を中心に2,300点以上を所有し、中にはみなさんも知るあの有名な絵画まで展示されています。

今回は、そんなナショナルギャラリーを初めて訪れる人のために、基本情報から目玉作品の紹介まで徹底的に解説していきたいと思います。

ナショナルギャラリーに行くために

まず、ナショナルギャラリーを訪れる際に確認しておきたい基本情報からです。気になるポイントをさらっておきましょう。

料金常設展は無料。事前予約をしておくと安心。
アクセス最寄りはCharing Cross駅、Leicester Square駅。
開館時間通常は10:00〜18:00、金曜は21時まで夜間開館あり。
写真撮影個人利用の写真撮影は基本可能。フラッシュ・三脚・自撮り棒は禁止。
荷物大きな荷物やキャリーケースには制限がある。ロッカーを利用できる。

次に、ナショナルギャラリーで作品を鑑賞するための豆知識を紹介します。

コレクションの特徴

1824年、政府が銀行家ジョン・ジュリアス・アンガースタインの絵画38点を購入したことから始まったこの美術館は、V&Aなどの王室コレクションとは異なり、「国民のための美術館」として設立されました。

13世紀から20世紀初頭までの西洋絵画を幅広く所蔵し、イタリアルネサンスやオランダ・フランドル絵画、フランス印象派などを見ることができます。そのため、西洋美術史の流れを地域や時代順に追いやすく、西洋美術を勉強したい人にとっては最高の美術館です。

館内には60以上の展示室があり、有名作品だけを見るなら短時間でも楽しめますが、コレクション全体を見たい場合は、ゆとりを持って2、 3時間確保していくと良いでしょう。特に、事前に見たい作品に目処をつけておけばかなりスムーズに見ることができると思います。

今回は、そのためのガイドとして目玉となる作品を数点紹介します。ナショナルギャラリーに行く際の参考にしてみてください。

これだけは見たい!一推し作品三選

レオナルド・ダ・ヴィンチ《岩窟の聖母》
adf-web-magazine-mori-london-national-gallery-2

レオナルド・ダ・ヴィンチ《岩窟の聖母》1491/2-9と1506-8年。ナショナル・ギャラリー、ロンドン。© The National Gallery, London. CC BY-NC-ND 4.0.

レオナルド・ダ・ヴィンチ。《モナ・リザ》で言わずと知れた画家ですが、ナショナルギャラリーにもレオナルドの作品が所蔵されています。《岩窟の聖母》と呼ばれるこの作品には、聖母マリア、洗礼者ヨハネ、そしてキリストとその従兄弟が描かれています。名前も記されていないのに、絵を見るだけで何故これが「マリア」であると分かるのでしょうか?

その鍵は、マリアの身を包む服の色にあります。西洋の宗教画というものは、元々文字の読めない人々にも聖書の内容が分かるように、絵で内容を表したことから始まりました。キリストやマリア、聖人たちを一目で見分けられるようにしたい。そんな思いから、画家たちは「このモチーフはこの人物を表す」と決めるコンセンサスを共有するようになっていきます。これを「アトリビュート」と呼び、マリアのアトリビュートは「青い衣服」を着た若い女性として定められました。

ナショナルギャラリーには、さまざまな時代と地域の宗教画が展示されています。見比べてみると、誰が何のアトリビュートを持つのか、自然と分かってくるかもしれません。

ターナー《戦艦テメレール号》
adf-web-magazine-mori-london-national-gallery-3

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号》1839年、ナショナル・ギャラリー、ロンドン。© The National Gallery, London. CC BY-NC-ND 4.0.

《戦艦テメレール号》は、イギリスを代表するロマン主義の画家、ターナーによって制作されました。ロマン主義とは、産業革命による発展に反発し、合理的なものよりも自然や個人の感情を重んじる思想のことです。19世紀には、ターナーのようにそれらを絵画で表す画家たちが多く現れました。

この絵に表される戦艦テメレール号は、イギリスがナポレオンに勝利した「トラファルガーの海戦」で活躍した船です。今、この船は蒸気船に曳かれて航行し、最後の勇姿を私たちに見せています。テメレール号の過去の栄光と、産業革命によって促される世代交代、そしてそれらを照らす夕陽が、移ろいゆく自然と時間の経過を表しているようです。

このように、絵を見るときは「描かれるモチーフがどのような意味を持っているのか?」「絵画が描かれた社会背景はどのような状況であったのか?」を併せて考えてみると、ただ絵画を眺めるだけから一歩進んで、考える面白さを見つけられるかもしれません。

ゴッホ《ひまわり》
adf-web-magazine-mori-london-national-gallery-4

フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1888年、ナショナル・ギャラリー、ロンドン。© The National Gallery, London. CC BY-NC-ND 4.0.

《ひまわり》は、ゴッホが友人であるゴーギャンの訪問に備えて、自室に飾るために描かれたものでした。ナショナルギャラリーに所蔵されるものは、世界中の美術館にある五つのバージョンのうちの一つです。

ゴッホは、「後期印象派」の画家と称されることが多いですが、印象派の手法や主題だけでなく、独自の作風で作品を作り上げていきました。もう少し具体的に言うと、印象派が「筆触分割」と呼ばれる、絵の具を塗り潰さずにそのまま点で色を配置していく手法で光を表現していたのに対し、ゴッホは、原色を用いた大胆な色彩感覚をありのままに表現しました。

《ひまわり》に用いられている黄色は、ゴッホにとって「幸福のしるし」でした。ゴッホの描く絵画には、モチーフや色、手法によってゴッホ自身の内面を反映していると考えられています。

ちなみに、ゴッホの《ひまわり》は実は日本にも存在します。新宿にあるSOMPO美術館の所蔵する《ひまわり》は、ナショナルギャラリーの《ひまわり》をもとに、ゴッホ自身が描き直したものです。基本的な構図や色の配置は同じように見えますが、筆のタッチや色味が少し違うのが分かります。ナショナルギャラリーにいく前にSOMPO美術館を訪れ、二つを見比べてみるのはいかがでしょうか。

ひといき

美術館内を歩き回って一点一点じっくり作品を見ていると、意外と疲れてきますよね。ここでは、鑑賞の合間や帰りに立ち寄りたいナショナルギャラリーのショップと、近くで休憩できるカフェを紹介します。

ショップ

ナショナルギャラリーのショップには、展覧会の図録やポストカード、文房具や雑貨などが揃っています。ゴッホの《ひまわり》やファン・エイクの《アルノルフィーニ夫妻像》など、所蔵作品をモチーフにしたグッズも多く、好きな作品のお土産を探すのも楽しみの一つです。

また、ナショナルギャラリーのガイドブックも置かれており、なんと日本語版もあります。ぜひチェックしてみてください。

カフェ

ナショナルギャラリーの向かいにある教会、St Martin-in-the-Fieldsの地下にあるCafé in the Cryptがおすすめです。Cryptという名前の通り、教会の地下聖堂を利用しています。ナショナルギャラリーから近く、鑑賞後の休憩に便利です。

参考文献

秋山聰・田中正之監修『西洋美術史』、美術出版社、2021年。
Langmuir Erika, The National Gallery Companion Guide, National Gallery Global, 2023.