アーティスト/エンジニアのローレン・リー・マッカーシーとカイル・マクドナルドによる新パフォーマンス作品
YCAMが国内外のさまざまな専門家とおこなってきた研究開発プロジェクト「鎖国 [Walled Garden] プロジェクト」の成果を発表する展覧会にて、アーティスト/エンジニアのローレン・リー・マッカーシーとカイル・マクドナルドによる「監視資本主義」の先にある未来をテーマとした新作パフォーマンス作品「アンラーニング・ランゲージ」が発表される。
YCAMは、2020年から情報とインターネットの未来を探る研究開発プロジェクト「鎖国[WalledGarden]プロジェクト」を、研究者などの専門家とともに進めてきた。今回の公演は3年に渡るこのプロジェクトの成果として開催するもので、今回発表する新作は、「AI(人工知能)にはない人間の資質とはなにか?」というテーマを探求する観客体験型パフォーマンス作品となっている。
作中にはAIが登場し、観客にさまざまな問いを投げかけ、観客はAIに対応していく過程で人間とマシンの違いについて、考えを深めていく。本公演では作品に関連してインターネットやAIの今日的状況に触れる展示やトークイベントも多数開催する。
AIやネットワーク技術が発達し、無意識にそれらに囲まれた生活を送る今日における、人間性が優先されるAIやテクノロジーについてのビジョンの一端が垣間見える展示となっている。
アンラーニング・ランゲージー完全なマシンと不完全な私たち
テクノロジーの発展により私たちは、個人の嗜好やライフスタイルに沿ったAIのアシストを受けられるようになったが、その背景にはインターネットを通じて私たちの活動を収集、分析し、次の行動を予測する巨大なシステムがある。「アンラーニング・ランゲージ」では、この状況に光を当てている。
作品空間に、観客が足を踏み入れると、AIによってある実験への参加を促される。観客は、語りかけてくるAIに対して、観客同士がコミュニケーションをとりながら応えていく。この時、AIは観客の表情、言葉、身体の動きをカメラやマイクを通して検出、分析しようとする。もしAIがそれらを認識すると、表情を見分けられないような激しい光、話し声が聞こえなくなるような大音響を発生させることで妨害する。こうした状況下で観客同士がやり取りを続けるためには、拍手やハミング、普段使わないような動作といった、AIに認識されにくいコミュニケーションの手段を他の観客とともに見つける必要がある。
本作は、こうしたぎこちなく、時に楽しいコミュニケーションを通して、人間とマシンの違いを見出す場であり、また、現在の私たちの生活の利便性を支えるテクノロジーの背景にあるシステムを振り返り、人間性が優先されるAIやテクノロジーとはどのようなものか、問いかけるものとなっている。
ローレン・リー・マッカーシー/カイル・マクドナルドについて
マッカーシーとマクドナルドは、いずれもコード(コンピュータープログラム)を表現方法として用いるアーティスト。高度情報化社会を批評的に捉える映像作品やインスタレーション作品、パフォーマンス作品を多数発表しており、それらは世界各地の美術館や、国際的なアートフェスティバルなどで展示・上演され、高い評価を受けている。また二人は作品制作と並行して、多様な人々がコードを用いた表現に触れ、学ぶためのツールの開発も精力的におこなっていることでも知られている。開発したツールは、表現に携わる人々だけに留まらず、世界各地の教育現場でも用いられるなど大きな広がりを見せている。今回、本公演のために、マッカーシーとマクドナルドは、1年以上に渡ってYCAMとコラボレーションを展開。新作のパフォーマンス作品《アンラーニング・ランゲージ》を制作した。本作は世界初の公開となる。
「アンラーニング・ランゲージ」上演情報
上演期間 | 2022年11月12日(土)~2023年1月29日(日) |
会場 | 山口情報芸術センター[YCAM]スタジオB |
ウェブサイト | https://bit.ly/3Dvd5fg |