ドイツのアーティスト、フリーランスの生活とビザ事情
新型コロナウィルスの蔓延に伴う様々な影響により、各国や各自治体の文化支援に対する考え方や対応の仕方の違いが浮き彫りとなってきています。
そんな折、ベルリンではいち早くアーティストやフリーランスなども含む個人事業主に5,000ユーロ(約60万)の補償が決定され、減収を証明する書類なども必要とせずに、申請するだけで補償が支給されて注目を集めました。ドイツの新型コロナ対策としての補償は州や各自治体によって異なりますが、ドイツ文化大臣であるグリュッタース文化相が2020年3月11日に連邦政府報道情報局でアーティストや文化事業に携わる人々の社会的重要性を説き、政府を挙げて支援する姿勢を表明した通り、ドイツ全体で手厚い補償がなされています。
グリュッタース文化相の声明のドイツ語原文: Coronavirus - Kulturstaatsministerin verspricht Kultureinrichtungen und Künstlern Unterstützung - Grütters: „Auf unverschuldete Notlagen und Härtefälle reagieren“
そんな国外の対応や現在の日本政府の対応を鑑みて、この先どうなるかは分からないけれど、この新型コロナ騒動が収束したら国外移住することも真剣に考え始めているという人も出てきています。実際に海外に住むとそれはそれで大変なことも多く、例に出しているドイツも大手であるドイツバンクの運営が危機に瀕していたり、ドイツが経済破綻したらEU自体が崩壊する危険性まであったりと、決して盤石な理想の国などではないのですが、合理的でいざというときに手厚い補償をしてくれるところを見るとまだ安心感があります。
いざというときに国が国民の生命と人権を守ってくれるか、文化を保護してくれるか、それとも逆に国によって殺され、破壊されるおそれがあるのかという視点で考えたとき、どこでどのように生きるかという選択肢は沢山あった方が良いのではないでしょうか。
新型コロナウィルスが収束するまでの過程で、今までとは世界情勢やドイツを含めた各国の外国人受け入れ体制が大きく変わる可能性もあり、現在の知識が後々通用しなくなる恐れもありますが、それでも今後の選択肢を増やす参考になるかもしれないので、ドイツのビザや私がベルリンで見聞きしたフリーランサーやアーティストの実情について少し書いてみたいと思います。
まずベルリンに生活しているフリーランサーやアーティスト達の私から見た生活の様子ですが、良く言えば自由気ままな風潮でモラトリアム的な生活を送っている人が多く、悪く言えば玉石混交の吹き溜まり状態です。定職に就いている人よりも学生やフリーター、フリーランサー、アーティスト、ミュージシャンなどをしている人の方が目立つくらいです。その背景として、ギャラリーやクラブなどが多く様々な国から人が集まっていることと、家賃が低めの滞在先さえ確保できれば、東京やパリなどの他の国の都市部と違って生活費がかなり抑えられるということがあるでしょう。
ベルリンに滞在している日本人の多くはワーキングホリデービザで滞在しているため、1年経てばいなくなる人がほとんどであり、入れ替わりが激しいです。特に多いのはWeb系のデザイナー・プログラマーやライター、美容師、カメラマン、アーティスト、ミュージシャン、DJなどですが、美容師・カメラマン・アーティスト・ミュージシャン・DJなどは供給過多気味で、ベルリンでフリーランスとして専門分野だけで十分な稼ぎを得るのは難しいかもしれません。
職種に関してはプログラマーやCADなどのソフトが使える設計者などの需要は結構あります。一般的な会社はもちろん、アーティストからの無理難題てんこ盛りな依頼も多いでしょう。また、ドイツの施工業者や職人は仕事が遅く、約束の時間に遅れてきたりそもそも来なかったり、必要以上の人数で来て必要以上の金額を請求してきたり、その上、仕事はあまり丁寧ではなかったりなど、ひどいところが多く、また供給よりも需要の方が多いため、まともで丁寧な(日本では一般的な水準の)仕事ができる職人や技術者でしたらフリーランスでも評判と顧客を獲得していくのは可能です。ただし、電気・ガス・水道などのインフラ設備工事に関してはもちろんドイツの資格が必要です。
アーティストやミュージシャンに関しては、まずビザの労働項目に縛りがあるかどうか(いわゆるアーティストビザかどうか)で大きく変わります。縛りがそれほどなければ技能を活かしてフリーランスとして働いたり、日本食レストランなどでバイトをしたりしている人が多いですが、縛りがある人の多くは休日にあちこちで開かれているフリーマーケットなどに出店料を払ってアクセサリーや陶器や絵画などの自分の作品を出して売ったり、イベントや路上ライブで演奏をしたりして生計をたてている人が多いようです。ギャラリーとの契約を持っているアーティストもいますが、その契約だけで食べていけている人は毎月のように大きな美術館やギャラリーで企画展をしたり、新作を作ったら勝手に買い手がついたりするレベルの人たちだけで、やはりギャラリーとの契約が取れただけで食べていくのは厳しいでしょう。

フリーマーケットの様子。この写真はアンティークの多い7月17日通りのフリーマーケットのものだが、トップ写真のヴァルシャワ通りのフリーマーケットやマウアーパークのフリーマーケットではアクセサリーなどの作品を出品している作家や演奏をしているミュージシャンも多い。
次にドイツのビザに関してですが、主に以下のような種類があります。
詳しい取得方法や必要書類などはここでは省略し、簡単な説明にとどめますが、インターネットで検索すればドイツ大使館・総領事館の説明や様々な方の取得までの体験記をご覧になることができます。