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「時間」に対しての多様な解釈

美術家、磯⾕博史個展「今⽇と、持続」が、2023年10⽉26⽇(⽊)から2023年11⽉25⽇(⼟)まで、築100年を超える蔵を改装した京都の現代アートギャラリーARTROで開催される。キュレーションはGalerie SupermarktディレクターのJoiii Xu(ジョイ)が担当した。本展は2023年10⽉26⽇(⽊)から30⽇(⽉)までの期間、京都で開催する現代美術のアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」との連携プログラム。

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左) 展⽰⾵景:「Prada Mode Tokyo」東京都庭園美術館、東京、2023年

「時間」は、近代以降もっとも合理化と標準化の進んだ概念の⼀つ。⽇本の近代史の始まりである明治期の蔵を改装したARTRO、この会場で開催される「今⽇と、持続」と題された本展で、磯⾕博史は歴史ある京都の静謐で親密な時空間に呼応するように作品を設え、「時間」についての多様な解釈を再考する。出展作品は、5,000年前の⼟器の破⽚を再利⽤し、素材のもつ時間軸を再配置する陶芸作品や、過去しか撮影できない写真というメディアを現在につなげる試みなど3シリーズにわたる。磯⾕は、⽇常の中にある判断のフレームやシステムに、意識が向かう機会を鑑賞者に提⽰する。

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展⽰⾵景:「動詞を⾒つける」⼩海町⾼原美術館、⻑野、2022年

京都で初公開となる《活性》《事のもつれ》《着彩された額》の3シリーズ

着彩された額 Painted Frame
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磯⾕博史《揺れる⾊彩》2012-2019 ピグメントプリント、額に着彩

セピア調の写真作品は、2011年から継続されている作家の代表的なシリーズ。磯⾕が「名前のない出来事」と呼ぶ⽇常に発⾒された景⾊を撮りためたもので、⾝近な物理現象や事物が頻繁にモチーフとして選ばれている。このシリーズには特徴的な操作がある。撮影されたカラー写真は、⾊褪せたかのようにセピア調に変換され、代わりに写真の中にかつてあった特徴的な⾊が選択され、フレームの⼀辺、あるいは⼆辺に着彩される。⾊と形の情報を分けることで、フレームの⾊と、写真の中のモチーフはパズルのような関係を結び、鑑賞者の想像⼒に復元という運動を促す。磯⾕は、写真の持つ撮影したその瞬間から過去となってしまう宿命を、鑑賞者の想像の中に委ねることで、写真をいつまでも現在に置こうと試みる。再⽣フェルトと組み合わせ、空間の中で写真を額を含めた彫刻的な物体として扱う態度にも、現在性への意識が⾒てとれる。

事のもつれ Lag
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磯⾕博史《事のもつれ 12》2019 額装されたピグメントプリント、⽊、⾦属

棚の上に置かれた写真には、まさにその写真が⽬の前の棚板から落下する様⼦が写っている。過去である写真に、これから起きるかもしれない現象が撮られている。この《事のもつれ》は、写真をプリントし、額に収めるという⼀般的な制作プロセスを⼊れ替え、額を作り撮影し、撮影したその額にプリントした写真を収めている。制作プロセスを組み変えるというシンプルな⼿続きの結果、私たちの事物への認識の⼿順に違和感がもたらされている。イメージである写真と、現実空間に存在する額と棚板との関係も相まって、あたかも過去、現在、未来という単線的な時間感覚がもつれ、揺さぶりをかけるよう。

活性 Activation
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磯⾕博史《活性 02》2021 原始の⼟器⽚(3500-2500 BCE)、粘⼟

展⽰された滑らかな球体は、素焼きの陶芸作品。素材に特徴があり、作家が購⼊し集めた5000年前の⼩さな⼟器⽚を、もう⼀度泥に戻し、粘⼟と混ぜ合わせ焼成している。縄⽂時代の⼈々が⼀度野焼きで制作し、使⽤し、壊れていった断⽚を、5000年後の今、過去を再利⽤する⼿つきによって作家が⼆度⽬の焼成をし、共作している。《活性》には、物質だけではなく、静⽌した原始の創造性を現在に置き直す、知の再活性という態度が表明されている。

本展の作品よりインスパイアされ、制作された菓子(Kashi)、「活性」

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「活性」Wataru Kanaya

ARTROでは、鑑賞者と作品とを繋ぐ⼊り⼝にカフェスペースを置き、作品からインスパイアされたKashiの開発を実践している。本展では、作品「活性」をイメージし京都の⽼舗和菓⼦店「京菓⼦司 ⾦⾕正廣」とのコラボにより作られた⽣菓⼦「活性」をご⽤意。作品「活性」は、5000年前の⼩さな⼟器⽚を、もう⼀度泥に戻し、粘⼟と混ぜ合わせ焼成された素焼きの陶芸作品。過去と現在の共作であり、物質だけではなく、静⽌した原始の創造性を現在に置き直す、知の再活性という態度の表明から⽣菓⼦「活性」は着想を得た。

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「活性」Wataru Kanaya

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「活性」Wataru Kanaya

磯⾕博史 / Hirofumi Isoya

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1978年東京都⽣まれ。美術家。東京藝術⼤学建築科を卒業後、同⼤学⼤学院先端芸術表現科および、ロンドン⼤学ゴールドスミスカレッジ、アソシエイトリサーチプログラムで美術を学ぶ。写真、彫刻、ドローイング、それら相互の関わりを通して、事物への認識を再考している。2016-2018年、プロジェクトスペースstatements共同ディレクター。 近年の主な展覧会に「動詞を⾒つける」(⼩海町⾼原美術館、2022)、「Constellations: Photographs in Dialogue」(サンフランシスコ近代美術館、サンフランシスコ/2021)、「Lʼimage et son double」(ポンピドゥー・センター、パリ/2021)、『「さあ、もう⾏きなさい」⿃は⾔う「真実も度を越すと⼈間には耐えられないから」』(SCAI PIRAMIDE、東京/2021)、「インタラクション:響きあうこころ」(富⼭市ガラス美術館、富⼭/2020)、 「Together We Stand」(Bendana | Pinel、パリ/2020)、「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」(ポーラ美術館、神奈川/2019)、「六本⽊クロッシング 2019:つないでみる」(森美術館、東京/2019)、アルル国際写真フェスティバル「Le spectre du surr.alisme」(Les Forges、アルル/2017)など。主な作品の収蔵先にポンピドゥー・センター(パリ)、サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ)など。

キュレーターJoiii Xu(ジョイ) / Galerie Supermarktディレクター

Galerie Supermarkt は、2021年に世界的なパンデミックが蔓延した際、従来とは異なる現代アートへのアプローチへの必要性を感じ、⾃⾝もアートコレクター、そしてアーティストとしても活動するJoiii Xu(ジョイ)によりスタート。あえてスペースを持たず、作品とアーティストに最適な場所で展覧会を構成することで、様々な場所、空間、環境と共鳴し、従来の展⽰の制限を突破して柔軟で開放的な展⽰の表現と体験提案し、アーティストには育成プラットフォームを提供し、潜在⼒と創造⼒を持つ芸術家を育成し、世界にプレゼンテーションを続けている。パンデミックに対応し、ポストコロナとなった現在は、固定のスペースを構えることで、恒常的なコミュニケーションを諸外国、特にアジア諸国の鑑賞者と交わし、現代美術の発展に務めるために6 ⽉より神宮前にスペースをオープン。固定スペースをハブに、エリア特有のカルチャーと共鳴しつつ、各分野の専⾨のパートナーと協⼒し、Galerie Supermarktは現代芸術の社会における可能性を体現していく。

ARTRO

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京都四条烏丸、錦市場からほど近い築100年を超える蔵を現代アートギャラリーとして改装。鑑賞者と作品とを繋ぐ⼊り⼝にカフェスペースを置き、作品からインスパイアされたKashiの開発も実践。⾷を通じた鑑賞者へのアプローチを試み、純粋なカフェともホワイトキューブとも異なる「ARTRO」では、唯⼀無⼆の体験が可能。

磯⾕博史個展「今⽇と、持続」開催概要

会期2023年10⽉26⽇(⽊)~11⽉25⽇(⼟)
時間11:00 - 18:00(⽉・⽕休)
会場ARTRO
主催有限会社服部商事
助成Art Collaboration Kyoto実⾏委員会
URLhttps://artro.jp/