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国境を渡って日本に移住してきた若手アーティストをサポート

Empathy Galleryでは、2024年5月11日から5月25日まで、日本で活動する中国出身のアーティストによるグループ展「走る黒い羊たち/ Migration of Black Sheep」が開催される。本展は侯米蘭(コウ ベイラン・Hou Milan)が企画・キュレーションをし、国境を渡って日本に移住してきた若手アーティストへのサポート及びコミュニティーを形成することを目的としている。adf-web-magazine-migration-of-black-sheep-1

本展では日本国内で「他者」として認識されてきたアーティストを集め、それぞれが持つ視点と経験を多様な人たちとつなぎ、共通の記憶を織り合わせることで、国や民族といったカテゴリーを超えた人の心の共通性を見つけられることが期待される。流動性が高く、不安定な社会で生きる不確かな存在として、信頼関係やネットワークといった社会関係資本の弱いコミュニティーをエンパワーメントしていく。adf-web-magazine-migration-of-black-sheep-2

展覧会名にある「黒い羊」とは社会心理学で用いられる「黒い羊効果(black sheep effect)」に由来し、社会的アイデンティティ理論に関連した比喩表現である。人はどこかしらの国家、民族、性別、出身地などの社会的カテゴリーに属して生まれ、自分が何者であり、周りの人が何者であるか、常に「自己」と「他者」を意識し他者との関係による影響を受けながら、社会的アイデンティティとして自分の一部を定義していく。海を渡って移住することは自己探求と発見への道、そして他者と出会いの道を作り出す。物理的な環境がかわり、人間関係もかわり、また自分と他者を繋がるためのコミュケーション手段として日本語や英語を取得しなければならない。外界に適応しながら生きていくうちに、社会変化に伴う自分自身のあり方も変容し、これまでの自分を維持することと、置かれた環境に折り合いをつけることが相反する際にジレンマが生じる。その結果、自己を問い直すという再帰的状況に常に置かれる。

グローバルでコスモポリタンなアイデンティティーを形成していくには分かり合えないという前提があったとしても、自己と他者の距離や世界との関係を再考しなければならない。アートの持つ力とは、そうした見えない壁を乗り越えさせてくれるところだと考えている。

「走る黒い羊たち/ Migration of Black Sheep」開催概要

会期2024年5月11日から5月25日まで
会場Empathy Gallery
URLhttps://www.empathygallery.jp