いま注目の5名の作家の作品を紹介
写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘、新しい創造活動の展開の場として、東京都写真美術館が2002年より継続的に展開している「日本の新進作家」展。第23回目「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23」が、2026年9月30日(水)から2027年1月17日(日)まで開催される。市田小百合、苅部太郎、野村在(のむら・ざい)、橋本麦(はしもと・ばく)、藤倉麻子が参加する。
今回はAIやCG、コマ撮りアニメーションなど、多様な技術や素材を用いて作品を制作する作家たちが実際に存在した記憶や素材、技術、それぞれが持つコンテクストを汲み取り、新たなイメージへと組み立てていくプロセスに着目する。
出品作家と主な出品作品
市田小百合
1985年生まれ。2006年東京ビジュアルアーツ写真学科卒業後、イイノ・メディアプロにてスタジオマンとして勤務したのち渡英。2022年 University of Westminster にて Photography Artsを専攻し、修士号を取得。自身の記憶や経験を起点に、複雑で多層的な感情のあり方を、身体や彫刻的なオブジェクトを通して探求している。主な展覧会・受賞歴として、「Jerwood/Photoworks Awards 5」受賞(イギリス、2024年)、「Absentee」ライカギャラリー(イギリス、2026年)、「Playing the Piano Upstairs」The Photographers’ Gallery Print Sales(イギリス、2026年)、「transiənt」大和日英基金ジャパンハウスギャラリー(イギリス、2025年)など。
本展では、学校という場所に積み重ねられた時間をテーマに、黒板を支持体として校舎の断片を再構成し、シルクスクリーンでプリントしたインスタレーション作品を日本初展示する。

市田小百合〈空席(Kūseki)〉より 2025年 黒板にシルクスクリーンプリント 作家蔵 ⓒSayuri Ichida 展示風景:「Jerwood/Photoworks Awards 5」Drawing Room(ロンドン、2026年) Originally commissioned through the Jerwood/Photoworks Awards, supported by Jerwood Foundation, Photoworks and Arts Council England
苅部太郎
1988年生まれ。心理学、公衆衛生、金融、ITの領域を横断したのち、報道写真家として活動を開始。画像生成AIを「形而上のカメラ」と見立てて意図的に誤用しながら、「見る」ことや「信じる」ことを支配する不可視のシステムを問い直す。光学技術、アルゴリズム、人の認知、社会制度といったブラックボックスが相互に絡み合う循環を、写真というメディウムの内側から捉え直す。主な展示に「Anatomy of Caves」HECTARE(東京、2024年)、「Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」MYNAVI ART SQUARE(東京、2024年)など。
本展では、テレビの受信部を接触不良にし、グリッチノイズを発生させてできたイメージを撮影・加工し、生成AIの風景認識システムに読み込ませた作品シリーズを紹介する。認識システムを撹乱することで、人間とAIに共通する「見立て」の働きを引き出し、意味を見いだそうとする認識の過程や、誤認から新たなイメージが生成される可能性を探る。
野村在
1979年生まれ。2009年ロンドン大学ゴールドスミス校・MFA 修了、2013年に武蔵野美術大学博士課程を修了。「存在」と「記憶」の関係を主題に、写真や彫刻、機械装置など多様なメディアを用いて制作を行う。物質の消失や変容、時間の経過によって揺らぐ記憶のあり方に着目し、日常の中に残された痕跡や見過ごされがちな現象を可視化することを試みる。主な展示に、「第13回ソウル・メディアシティ・ビエンナーレ」ソウル市立美術館(ソウル、2025年)、「第17 回shiseido art egg 野村在展」資生堂ギャラリー(東京、2024年)、「OPEN SITE 8」TOKAS本郷(東京、2024年)、「あいちトリエンナーレ」(愛知、2016年)など。
本展では、作家が収集した、ポートレイト写真を燃焼させ、その炎の光を長時間露光で記録することで、写真というメディアの物質性に着目し、イメージが新たなかたちへと再構成される過程を探る。
- 野村在《バイオフォトンはかくも輝く(黄色の海水パンツを履いてサングラスをした口髭の中年男性と白色のビキニを着た同年代の女性、海水客で賑わうビーチにて、1980)》2025年 ガラスにUV-インクジェット・プリント、ステンレス金具 作家蔵 ⓒZai Nomura
- 野村在《バイオフォトンはかくも輝く(空を指差す小さな妹と、彼女の手を持つ12歳、1944)》2026年 ガラスにUV-インクジェット・プリント、ステンレス金具 作家蔵 ⓒZai Nomura
橋本麦
映像作家。モーショングラフィックスやハッカー文化、実験映像の影響を背景に、3DCGやコマ撮りアニメーション、ミュージック・ビデオ、インタラクティブ作品など多岐に渡り個人で制作を行う。作品ごとにワークフローやツールの設計から取り組み、技術的な試行やエラーをも含めたプロセスから独自の視覚表現を探求している。主な仕事にgroup_inou、MONO NO AWAREなどのミュージック・ビデオ、アニメ『すべてがFになる』ED映像など。近年はヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)分野の研究にも取り組み、ACM UISTでの論文採択などの実績を持つ。東京TDC賞グランプリ(2025年)、新千歳空港国際アニメーション映画祭観客賞(2018年)、第19回文化庁メディア芸術祭新人賞(2015年)受賞。
本展では、自作の装置や道具を用いたコマ撮りアニメーションにより、イメージが立ち上がる過程を探る新作インスタレーション作品を展示する。本会期中には公開制作も実施し、完成した映像だけでなく、作品が生まれるプロセスもあわせて紹介していく。
- 橋本麦《Milling Stop-Motion (tentative title)》2024年- 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ⓒBaku Hashimoto ※参考図版
- 橋本麦《Milling Stop-Motion (tentative title)》2024年- 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ⓒBaku Hashimoto ※参考図版
藤倉麻子
1992年埼玉県生まれ。東京都在住。都市・郊外を横断的に整備するインフラストラクチャーや、それらに付属する風景の奥行きに注目し、主に3DCGアニメーションの手法を用いた作品を制作している。近年では、埋立地で日々繰り広げられている物流のダイナミズムと都市における庭の出現に注目した空間表現を展開している。近年の参加展覧会に、「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」森美術館(東京、2025年)、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館「中立点—生成AIとの未来」(イタリア、2025年)などがある。
本展では、実写映像やCG、AIなどを用いて架空の都市とそこにある社会を構築するインスタレーション作品を展示する。

藤倉麻子《4 Tales of Open Sunrise City (tentative title)》2026年 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ⓒAsako Fujikura ※参考図版
- 藤倉麻子《4 Tales of Open Sunrise City (tentative title)》2026年 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ⓒAsako Fujikura ※参考図版
- 藤倉麻子《4 Tales of Open Sunrise City (tentative title)》2026年 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ⓒAsako Fujikura ※参考図版
「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23」開催概要
| 会期 | 2026年9月30日(水)~2027年1月17日(日) |
| 時間 | 10:00~18:00(木・金曜日は20:00まで) |
| 会場 | 東京都写真美術館 3階展示室 |
| 料金 | 一般700円、学生560円、高校生・65歳以上350円 |
| URL | https://tinyurl.com/4ad27wn6 |

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