建築家小野司率いる屋久島拠点の建築事務所がリジェネラティブ建築の実践で国際的評価を獲得
世界自然遺産・屋久島を拠点とする建築事務所tonoが、世界最大級の建築プラットフォーム「Architizer」が主催する「Architizer A+ Awards 2026」において、企業部門最高位となる「The Best in Sustainability Firm(最優秀サステナビリティ企業)」のJury Winnerを受賞した。日本拠点の建築事務所として同部門での受賞は初となる。Architizer A+ Awardsは、建築界のオスカーとも称される国際的な建築アワードであり、毎年世界80カ国以上から数千件の応募が集まる。今回tonoは、環境負荷の低減にとどまらず、生態系そのものの回復を目指す「リジェネラティブ建築(Regenerative Architecture)」の実践が高く評価された。
2026年6月に創業10周年を迎えたtonoは、2016年に東京で設立された後、2020年に活動拠点を屋久島へ移転。世界自然遺産の島で自然環境と向き合いながら、建築を単なる空間デザインではなく、「土地と人、自然の関係を再構築する行為」として捉える独自のアプローチを発展させてきた。
建築によって環境を再生するリジェネラティブ建築
近年、建築分野ではカーボンニュートラルやサステナブル建築への関心が高まっている。一方でtonoが取り組むリジェネラティブ建築は、その先にある建築思想として注目されている。リジェネラティブとは、失われた自然環境や地域社会を回復し、利用するほどに豊かにしていくという考え方である。環境への負荷を抑えるだけでなく、建築を通じて土地本来の生態系を再生し、建築前よりも良い状態へ導くことを目指す。tonoでは土壌に広がる菌類ネットワークや地域固有の生態系を設計思想の中心に据えている。代表を務める建築家・小野司は、自らを「菌築家」と称し、建築と自然環境の新たな関係性を探究してきた。


世界が評価した建築の新たな価値基準
今回の審査には建築家やデザイナーだけでなく、メディア関係者やテクノロジー分野のリーダー、ビジネス関係者など多様な専門家が参加した。評価対象となったのは建築デザインの美しさだけではない。生態系の再生を建築の目的として位置付け、環境・社会・経済を統合的に捉える姿勢そのものが高く評価された。Architizerの審査員は、「建築は派手な演出から離れ、場所や職人技、環境への配慮を重視する方向へ向かっている」とコメント。景観に溶け込み、人間的なスケールを持つ建築の重要性が改めて認識されていることを示した。
屋久島から発信する建築の未来
tonoはこれまで、《Sumu Yakushima》や《Regenerative Vegan House》などのプロジェクトを通じて、自然環境と共生する建築のあり方を提案してきた。代表作《Sumu Yakushima》は国内外で高い評価を受け、これまでに25以上のアワードを受賞している。また、小野司は2025年にForbes「Next 100 ─ 世界を救う希望」に選出されるなど、建築の枠を超えた活動にも注目が集まっている。今回の受賞により、tonoは世界の優れた建築作品を収録する公式作品集『Architizer: The World's Best Architecture』第14号への掲載も決定した。建築の価値基準が「何を建てるか」から「建てることで何を再生するのか」へと移行しつつある現在、屋久島から発信されるリジェネラティブ建築の実践は、これからの建築と環境の関係を考える上で重要な示唆を与えている。

tono
建築家・菌築家 小野司が率いるリジェネラティブ建築事務所。建築を通じた生態系再生をテーマに、住宅、ホテル、リゾート開発などの設計・監修・コンサルティングを行う。日本古来の建築技術と環境解析などの先端技術を融合し、自然と共生する建築の新たな可能性を追求している。

English
日本語








