土と木だけでつくられた一日一組の宿 新発田の風土と職人技が世界最高評価を獲得
新潟県新発田市に建つ一日一組限定のオーベルジュ「Né(ネ)」が、世界最大級の建築アワード「Architizer A+Awards 2026」の「Architecture + Environment(建築+環境)」部門において、一般投票で選出される最高アワード「Popular Choice Winner」を受賞した。Architizer A+Awardsはニューヨークを拠点とする建築プラットフォーム Architizer が主催する国際的な建築アワードで、「建築界のオスカー」とも称される。世界80カ国以上から集まったプロジェクトの中で、新潟の農村に建つ小規模な宿泊施設が頂点に選ばれたことは、世界の建築界における地域建築への関心の高まりを象徴する出来事となった。
土地から生まれた建築
「Né」の最大の特徴は、建築そのものが土地の循環の一部として設計されている点にある。一般的な建築で用いられるコンクリート基礎や鋼材を使用せず、多数の木杭を地中に打ち込み、土と木の摩擦によって建物を支える独自の構造を採用している。掘削による大規模な地形改変や残土の発生を抑えながら、建築と大地との新たな関係性を模索した試みである。さらに外壁には敷地内の土を使用。半年以上かけて発酵させた土を左官職人が塗り重ねることで、この土地固有の色彩や質感を建築に取り込んでいる。建築設計を担当した建築家福西健太は「自らの土地の土、自らの森の木、そして地域の職人たちの知性だけで豊かな建築は成立する」と語る。
300年続く土地の記憶を継承する
「Né」が建つのは、本間家が約300年にわたり守り続けてきた約3,200坪の敷地。さらに、施工を担当したのは新発田市で三代続く熊谷建設。また雪国特有の気候や風土を熟知した地域の職人たちも建設に携わった。グローバル化が進む現代建築において、「Né」は地域に根差した素材や技術を活用しながら、国際的な評価を獲得した稀有な事例となっている。


建築と料理で土地を体験するオーベルジュ
「Né」は建築だけでなく、食を通じて土地の文化を体験するオーベルジュとして計画された。総料理長を務める布施真は、フランス料理界の巨匠アントワーヌ・ヴェスターマンのもとで研鑽を積んだシェフである。提供される13皿のコースは、「終わりから始まりへ、そして一瞬が永遠になるまで」をテーマに構成される。山菜や川魚、野生肉、発酵食材などを用いながら、新潟の風土と時間の流れを一つの体験として表現する。建築が「この土地から何を建てられるか」を問いかけるならば、料理は「この土地から何を食べられるか」を探求する。その二つを統合した体験が「Né」の核となっている。
地域から世界へ
「Né」はすでに英国の高感度トラベルメディア「The Aficionados」において、日本で初めて選出されたパートナー施設としても知られているが、今回の受賞について主宰の熊谷幹樹は「本当に望んでいるのは、この土地の物語を理解してくれる人々が世界中から新発田を訪れること」と語る。建築、職人技術、食文化、風土。地域に根付く価値を世界へ向けて発信し、その評価を地域へ還元していく。《Né》は単なる宿泊施設ではなく、地方の文化や技術を未来へ継承するための新たなモデルとして注目を集めている。
Architizer A+Awards 2026 Architecture + Environment部門 Popular Choice Winner
ニューヨークを拠点とする建築プラットフォーム Architizer が主催する国際建築アワード。世界80カ国以上から建築・インテリア・ランドスケープ・サステナビリティ分野のプロジェクトが集まり、建築界を代表する国際賞の一つとして知られている。

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