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ミース・ファン・デル・ローエとレムケ邸

ドイツでは猛暑が続いており、湖で泳ぐ人を多く見かけるようになった。ベルリンにはたくさんの湖があり、そのひとつの湖には、バウハウス(Bauhaus)時代にミース・ファン・デル・ローエが設計した住宅が建っている。

今回はミースがバルセロナ・パビリオントゥーゲントハット邸を設計した後、バウハウス校長を務めていた頃に設計した、ベルリン郊外の湖のほとりに建つ「レムケ邸 (Haus Lemke)」を紹介する。

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)1886-1969

ドイツ出身のモダニズム建築家で、近代建築の四大巨匠の一人。ユニヴァーサル・スペースと呼ばれる、鉄骨造・鉄筋コンクリート造を用いた、内部空間を限定せずどのような用途にも対応できる空間を提唱した。「Less is more (より少ないことは、より豊かなこと)」や「God is in the detail (神は細部に宿る)」などの言葉が有名。1930年から1933年の閉校までバウハウスの第3代校長として教鞭をとった。ナチスによるバウハウス閉鎖に伴い1937年にドイツを去り、アメリカへと亡命する。

レムケ邸(Haus Lemke)1933

レムケ邸はベルリン郊外にある、ミースがアメリカに移住する前の1933年(昭和8年)にドイツで設計した最後の住宅建築。印刷工場経営者のレムケ夫妻が住んだ、湖のほとりに建つコートハウススタイルの平屋住宅である。レムケ夫妻は1945年(昭和20年)まで住んでいたが、終戦後には赤軍がガレージとして、シュタージ(秘密警察)の建物として様々な使い方をされ、改築などが施された。壁崩壊後には元の状態に修復され、「レムケ邸」は「ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス」となり、現在ではギャラリーとしてアートの展示を行いながら一般に無料で公開されている。

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レムケ邸/ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス

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通りからレムケ邸に入ると、煉瓦壁と車庫の鉄扉から重厚な印象を受けるが、玄関の全面ガラスのドア越しからは部屋を通して奥の庭がのぞけ、視線の抜けがあり閉塞間は感じない。

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玄関に入ると外観の重厚な見た目とは違い、天井が高く開放感がある。L字に配置された部屋とはガラスの壁で区切られており、南と西に続く2つの部屋は庭に向けて開かれ、開口には床から天井までガラスがはめられ、自然光だけでとても明るい。

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西の部屋の隣にはキッチンがあり、リビングダイニングとして使われていた。南に面した開口はテラスと庭が続いており、庭の奥には小さな湖、オーバーゼーが広がっている。現在はギャラリーとして利用され、現代アートが壁に展示されていた。

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南の部屋は書斎として使われており、西に面した開口からはテラスと西にのびる庭と植栽がのぞく。床はヘリンボーンのフローリングが続き、当時の書斎と寝室の家具はミースとパートナーのリリー・ライヒよってデザインされた。それらの家具はベルリン工芸美術館のコレクションで見ることができる。

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書斎に続く寝室部分は、開放感のある書斎やリビングルームとは違い、煉瓦壁で覆われたプライベートな空間となっている。設計段階では二階建ての案もあったが、コストの関係からこのL字型のプランになり、子供のいなかったレムケ夫妻は「晴れの日には庭まで延ばすことができる」、「小さくて控えめな住宅」を望んでいたそうである。

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L字型の建物に囲まれたテラスの中心には、シンボルツリーのクルミの木が植えられており、庭に続く植栽はゆるやかに建築と自然をつなぎ、家と庭は互いに調和しあっている。テラスにはミースが1927年にヴァイセンホーフの展覧会でデザインしたMRチェア置かれており、椅子に座りながら来場客やスタッフが談笑していた。

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庭の前には小さな湖オーバーゼーが広がっており、湖の対岸からは植栽からのぞく小さく控えめなレムケ邸が見える。大きな敷地の隅に配置された住宅からは広々とした庭が広がり、開放的な風景が室内からのぞける。

このレムケ邸はミースらしい最小限の手段で、レムケ夫妻が望んだ「小さくて控えめな住宅」を実現した建築といえよう。ベルリンを訪れる際は、このミース・ファン・デル・ローエ・ハウスを訪れてみるのもいいだろう。