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独立の背景と、スタンダードを疑うことから始まる構造設計

yasuhirokaneda STRUCTUREの代表であり、デンマークのコペンハーゲンを拠点に構造家として国内外で活躍されている金田泰裕さんを個人的に食事にお誘いした。そこで現在大学院生である私の人生相談も兼ねて、インタビューする機会を設けていただいた。

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金田さんが構造設計で関わられた2025 Expo Osaka 河森館 photo credit: Office Shogo Onodera

構造家としての建築家、施工者、スタッフとの関わり方

大場(筆者)

BIGでのインターンを通して、チームワークでプロジェクトを回すっていうのを、俺全然してこなかったなっていうのを自覚して。

金田泰裕さん(以下敬称略)

一番難しいよね。それね。

大場

いつからそれができるようになりましたか?意識し始めたとか。

金田

構造設計者って結構特別な立場というか、変な立ち位置にいて、若くても関係なくて。結局構造は安全性に関わるので。

若かろうが、施工者はそこでの意見はちゃんと汲み取ってくれるし、意匠の人も、尊重して聞いてくれる。施主も「あ、構造の人ですか」と。「安全を守ってくれてありがとう」みたいな、変な立場だから発言は結構聞いてはもらえる。

一方で、まあちょっと変なこととか、ちょっと特殊なことやろうとすると、ベテラン職人とか経験豊富な施工業者とかの人がでてきて、これやるとこうなっちゃうんですよとか、まあ色んな意見をもらうわけ。

そういうのをちゃんとこう、かわしはしないけど、ちゃんと論理的に説明していくことは当然必要で、そのためにはちゃんと構造のことを分かってなきゃいけない。

説得する相手はいっぱいいて、確認申請機関というのがあって、そこで彼らがいろんな意見を言ってくる立場だから、その人たちを納得させるっていう言葉はあまり面白くないんだけど。結局自分たちは自信を持ってやってるわけなので、それを第三者に対して説明すること。または言語化することであり、数値化して比較説明するっていうことが重要なので、それを淡々ともうやり続けるということ。

あとは意匠に対しては、僕の場合は多分スタンスは一般的な構造設計者と違うかもしれないですけど、出てきた形に対してこれはこういうふうにすると成立しますとかではなくて、そもそも出てきた形自体が正しいのかどうかっていう問いをまず立てるわけです。そこが正しくないと構造もフワッとしてしまうので。

建築がフワっとしないためには構成とか、ダイアグラム的なレベルの話でちゃんと辻褄があっているか。で、その前提には何を達成したいのか、何をこの建築を通して見通しているのかみたいなことが前提にあるわけなので。この手順をちゃんと踏んだ上で構成というものがでてきて、それに対して工法とか構造の正しい在り方というのが出てくる。それでその後は自動的に決まってくるような言語化とシステムを作っちゃう。最初にね。初期での打ち合わせで。

でも割と抽象的とも言い切れず、そこにはちゃんと根拠はあるんだけど、その建築の在り方ってのも最初に決めちゃうというか、どうあるべきかっていうのを話し合って、建築家と同じ方向を向くというかね。

大場 

なんかもうコンサルみたいですね。あの講義*でも言ってましたけど、構造家が唯一客観的にプロジェクトを見れるみたいな。

*2026年3月14日に京都工芸繊維大学で行われた、金田さんによる公開レクチャーを指す。レクチャーのタイトルは『標準との距離の取り方』

金田 

うん、そうだね。藤本さんにも建築家のコンサルタントみたいだね、みたいなのはU-35の舞台の上でもいわれたことだね。

大場 

あの舞台の上でも。そうですか。

金田

でもそのつもりはないけど、でもさっきも価値づけという言葉を使ったけど建築家すらもあんまり分かっていない、そのプロジェクトの特異性とか、こうしたら凄い強度が増すんじゃないかという提案を、そこまで抜本的に変えるっていうよりは、整理する感じかな。

そもそも彼らがプロジェクトを持ってきているし、そこで時間をかけて考えている何かがあるわけなので。それを白紙に戻すようなことはあまりしなくて。そこにある素材みたいなものの中で、何かこれよりこうあった方がいい方向に行くんじゃないかっていうような整理を毎回打ち合わせして。

そこが決まるともう、ある意味エンジニアリングってそこから組み立ててたらこうなるでしょうみたいな感じなので、もうそこから外注に出すみたいな。そこからむしろ自動的にこうドライに、数字で。僕が入ってやっちゃうとちょっとカッコよくしたいなみたいになっちゃうから(笑)

大場 

なるほど。

金田

ちょっと癖が出ちゃってむしろどんどんこう、色気が出てきちゃうのは良くないんじゃないかというか。

大場

なるほど、こう自分のやりたい事みたいなのが出すぎてしまうと。

金田 

そう、だから同じこと繰り返すの苦手なので。またここで違うことやると、趣旨というか最初に建築家と考えていた方向性プラスアルファ、僕の中でもなんかフェチズムというか別の挑戦とかディテールのなんちゃらとか。細かいことでいろいろやり始めると、出来上がった時にいろいろ癖が出ちゃう。

すると、もっとこう大枠でとらえられた方がいいようなわかりやすさが、どんどん分かりづらくなっちゃう。1人でやった時って全部やっちゃうから、やりすぎたというか、時間がある故にいろいろ手をかけすぎたなというか。結果的にちょっと自分でみてキモいなみたいなことはよくあって(笑)

それをどっかで手放してドライに、この先はもう成立する合理的な方法で作られた方がいいんじゃないかみたいなのが、プロジェクトによりけりだけどあって。

大場

前提を共有してから、そこからなるべく手垢がつかないような体制にして、自分の手から離すことを意識したと。

金田

うちのスタッフがモデル組んで検討するとかは、結局は自分の手から離れてるわけで。割とこう、自分の外側で行われている。もちろんそれをチェックはするんだけど。自分でモデル組んで検討することとの違いは、やっぱりそこで変更というか、いろいろ手を加えちゃうんだよね。そこをあえて誰かにやってもらったほうが、構造の設計においてはなんかいい距離感がとれる場合もある。そこでまた客観的に見られるので。自分でやっちゃうともう自分がその中入っちゃって、「いいじゃんこれ、これいいよな」なんてなっちゃう側面もあって。プロジェクトに対して客観的になれる利点を語っておきながら、構造設計の内部でその客観性を作りだすには?ということを考えてた。独立してからしばらく全部自分一人でやってて、あるときにスタッフ雇って、その後、協力事務所と一緒やるようにしたのも、本当に良い判断だったと思ってる。

大場

どこまで金田さんが手を動かすんですか?どこまでを担当するというか。

金田

手計算レベルである程度当たりができちゃうものは、手計算で終わるし。でも割と特殊なことやろうとしてるときは、最初の解析はババって自分で組んで一回触った状態にはして、手放すみたいなほうが安心というか。ずっとその触ったときの感覚は建つときまで覚えているから、この部分が結構危ないなとか、現場で変更あった時にあそこ気をつけをつけなきゃいけないのがわかる。

大場

一回上流で触っておいて、後は手放して。

金田

そうだね。それって意匠の場合、何がそれに当たるのかな? 解析してると、こうなんか本当に生き物を一旦自分の手で触ったくらいな感じで覚えられる。

「あー、あそこはなんか柔らかかったな、壊れやすかったな」とか「あそこギリギリだったから気をつけよ」とか。意匠の場合そういう感じではないんだろうね、別のなんかパラメ-ターがあるんだと思うけど。

大場

BIGの組織の在り方としては、パートナーがほぼ何をしてるか俺らにはわからないぐらいの感じで一番上流にいて、その下にアソシエイト、シニアアーキテクト、ジュニアアーキテクトがいて、インターンの僕らが手を動かすみたいな。

パートナーみたいな人が一番人を動かしてる人だなと思って、彼らが何を考えてるのかもっと知りたかったなっていうところがあります。彼らは沢山プロジェクトを持ってるんだけど、ミーティングをするとすごく的確な事を言ってくる。どれがどんな能力なのかなっていうのはずっと考えてました。

金田

BIGは、割と分かりやすい思考の組み立て方があるというか、トップがいて彼ならこう考えるだろうなみたいなのを定型化というか、何かしら組織の中で共有できてる。

大場

ビャルケならこうするだろうな、みたいな。

金田

っていう風なものを作っていかないと大きい組織にはできない。

大場

スタイルみたいなものですね。

金田

できなくていい人はしないんだよね。自分で全部やっちゃう。安藤さんの所とかもどうなっているかわかんないけど、材料の縛りがあって厚みもなんとなくプロモーションとかが「まあこんくらいでしょう」みたいなあったとして、あとはジオメトリを使ってやるとかっていうのが決まってるから、安藤さんの最初のスケッチで割ともう決まっちゃうのかも。とかっていうわかりやすいチームだったら、そういう言語を作りやすいじゃない。

大場

組織をスケールさせるにはそれが必要だと。それは面白いですね。

金田

うちの場合、意図的じゃない限り、僕が同じこと繰り返さないようにしてるので。

毎回、ゼロから考えるようには心がけていて。

大場

それはどうしているんですか?スタッフへの共有みたいな所は。

金田

うん。難しいの(笑)。

でも何というかな、限界あると思いますよ。うちの場合。事務所のサイズ感で言うと。何か超でかい事務所にしようとしてる意識は全然ないので。

スタッフの共有の話ではないけど、僕は、提案するときに、結構、この提案は現実的な可動域にあるか、ということを意識していて。

こんなのできないんじゃないですか?を、一般解に落とし込めるようにロジックを組みなおす。そこは一般解に落とし込める範囲内でこう絶妙なずらしをしていくことで違いを出すっていうぐらいの方がいいのは、その実現可能性の部分があって。だからといって、何かじゃあそんな微妙な挑戦の中で設計したいのかっていうと、そういうわけでもない。

大場

ジレンマがある。バランスが難しいと。

金田

そうだね。でも徐々に提案したことを実現しようとしてくれる感じにはなってきたな。ロジックの組み直しが上手くなっただけかもしれないけど。

独立したての時なんかは、それこそ本当にある形を実現させるにほぼ近いぐらいしか、その可動域が小さかったよね。提案するにしても「そんな大きな変更なんであんたに言われないといけないんですか」みたいな感じじゃない?(笑)

大場

そうなんですね。生意気だなみたいな(笑)。

金田

根底を覆せるような提案とかしてたけど、中々そこがついていかないのは、やっぱり実績がないから。やっぱり出来上がってくると、やっぱり変わるよね。

大場

実際に竣工したものが増えてくると、ですね。

金田

そう。この人が提案したものがちゃんと建ってるっていう(笑)。当たり前のことなんだけど最初はなんかムズムズするなぁみたいな。他の先輩構造家はいろいろ言ってんのに、ムズムズするなみたいなあ、みたいなのはずっとあったけどね。でも、スタンス変えずにずっと続けてたから。それが良かった。

まだ何か食べる?ご飯食べる?若いから食うでしょ。

大場

全然食えます。米系…スープ雑炊良いですね。

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