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長坂常率いるスキーマ建築計画が空間設計を担当したオンラインとリアルスペースが交差する「裏側を見る/つくる/つなぐ」がコンセプトのBaBaBa

高田馬場駅前の商店街を抜けて神田川を渡り、住宅地に入るとその一角に「BaBaBa(バババ)」がある。長坂常率いるスキーマ建築計画が空間設計を担当したBaBaBaは、印刷工場跡をリノベーションしたオンラインとリアルスペースが交差する「裏側を見る/つくる/つなぐ」がコンセプトのケーススタディスタジオと位置付けられている。2021年4月22日(木)にオープンしたばかりのこのスペースではリアルなギャラリースペースとオンラインマガジンという2つのメディアを通じて今後活動を行っていく予定。

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そのオープニングエキシビジョンとして、第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(VBA)日本館展示チームと連動した企画展「Dear Takamizawa House」が、2021年6月13日(日)まで現地で開催している(2021年5月30日(日)までの予定だった会期が延長された)。門脇耕三がキュレーションを務めるVBA日本館展示(主催:国際交流基金)では、高度なデータ解析と日本の現代建築・施工技術により、解体された木造民家から新たな建築の可能性を探り出している。「Dear Takamizawa House」では、そのモチーフとなった民家「高見澤邸」を2つのフェーズで独自の視点から切り取った展覧会。

VBA日本館展示チームに同行し、高見澤邸が解体されていく様子をカメラに収めていった写真家/建築家のヤン・ヴラノブセキ。3世代の家族が暮らしていた高見澤邸のその住人が去った後、解体前の狭間の時間をヴラノセキが写真の中に留めている。消費されていくもの、解体されるもの、留まるもの、その境目にあったはずの住人の記憶を空間から緻密にすくい上げる。

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Phase 01. Eyes of Jan Vranovský

VBA日本館展示チームに同行し、高見澤邸が解体されていく様子をカメラに収めていった写真家/建築家のヤン・ヴラノブセキ。3世代の家族が暮らしていた高見澤邸のその住人が去った後、解体前の狭間の時間をヴラノセキが写真の中に留めている。消費されていくもの、解体されるもの、留まるもの、その境目にあったはずの住人の記憶を空間から緻密にすくい上げる。

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Phase 02. Models_Work in Progress

本来であれば、昨年5月から開催される予定だったVBAはCOVID-19(新型コロナウイス感染症)の流行を受け、会期が2021年5月22日(土)から11月21日(日)に変更となった。門脇耕三(明治大学准教授・アソシエイツパートナー)がキュレーターを務め、5名のVBA設計担当建築家(長坂常、岩瀬諒子、木内俊克、砂山太一、元木大輔)が参加している今回の日本館の展示テーマは「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」と題されている。

本展「Dear Takamizawa House」のモチーフとなった高見澤邸は昭和に都内に建てられた普通の木造住宅で、耐用年数を過ぎて役目を終え、解体されたあとその一部をヴェネチアまで移送された。その古材は輸送の過程で多くの部材が失われ、日本館展示チームはその欠損を新しい材料や現地の材料で補いながら現地の職人とともにその再生と再構築に挑んだ。2019年に日本館キュレーター選出指名コンペで門脇耕三が選出された際の案では、建築家は日本から職人を帯同して現地へ行き、現地で職人と作業にあたる計画だったが、コロナ禍のためその当初の計画を取りやめ、日本館チームは現地への渡航をせず、施工監理を遠隔から行うこととなった。会場では参加建築家の提案を受け、施工者のTANKが東京で製作したモックアップが展示されている。

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会場でまず目に留まるのは元木大輔による高見澤邸の屋根の部分を再利用して作られたベンチだ。普段見ることのない小屋組みを覗いて観られる仕掛けが本展の導入部となっている。このベンチは日本館の庭園の展示スペースに置かれ、日本の普通の住宅のスケール感を伝える導入部となっている。続いて木内俊克、砂山太一によるトイレの3D点群データを用いたターポリン、長坂常の古材を利用した柱、岩瀬諒子はメッシュスクリーンで再構されたモルタル壁を展示し、どれも会場で間近に見ることができる。さらに会場奥に設置されているモニターにはモックアップをヴェネチアと東京で制作する様子が映し出されている。

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日本館チームにグラフィックデザイナーとして参加している長嶋りかこからは展示に関する議論を進める中で、日本から移送した古材を展示後廃棄するのであれば、イタリアへごみを移送することになる、その問題について建築家はどう考えているのかという問いかけがあった。それに応える形でリサイクルの概念を会期終了後にも引き継ぐ形で日本館の展示はVBA会期終了後、オスロへ巡回される予定だ。今回のVBAはヴェネチアに行くのを断念した方も多いのではと推察されるけれど、ぜひ高田馬場で展示の一部分だけでも観覧していただきたい。私たちを取り巻く環境は、予めほかの物質や生命が存在する前提によって成り立つ空間であり、その連鎖の中にいる意味を改めて、日本館のテーマである「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」に見出すことができる。

Dear Takamizawa House展覧会概要

タイトルDear Takamizawa House
会期2021422日(木)〜6月13日(日)
会場BaBaBa 東京都新宿区下落合2-5-15-1F
URLbababa.jp
主催アンダーデザイン株式会社
協力17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示チーム