「地域文化」という眼鏡をかけて「もの」を紐解く地域文化商社としてのナラティブの見方
福岡県に本社を置く地域文化商社・うなぎの寝床は、東京丸の内のGOOD DESIGN Marunouchiにて開催されている「山水郷(さんすいごう)」の展覧会に参加し、うなぎの寝床の10年の軌跡と九州ちくごの地域文化とものづくりについて紹介し、真鶴出版、ドット道東と共に、コンヴィヴィアリティ(共に生きる)をテーマにそれぞれの地域と活動を紹介している。
「山水郷のデザイン2 - 3つのコンヴィヴィアリティ」企画概要
2020年よりオンライン配信する、日本の自然豊かな地域に根ざした活動を行うクリエイターとのトーク番組「山水郷チャンネル」の展示企画として、昨年に続いて開催する展覧会。今回は、うなぎの寝床(九州ちくご)、真鶴出版(神奈川県真鶴町)、ドット道東(北海道道東地区)の三者と共に、コンヴィヴィアリティをテーマにそれぞれの地域と活動を紹介。「山水郷」は山水の恵み豊かな地域と、そして人と人がつながり生まれる郷(さと)を意味する造語で、日本各地の山水郷で、土地で共に生きる仲間と、そこでしかできない生業や生き方を愉しみながら生み出す、そんなコンヴィヴィアルなデザインの力が、日本を少しずつ変えはじめている。本展ではその土地に暮らし活動する彼らデザイナーの目線、思考、そして言葉によって、活動の内容とともに、それぞれの土地で彼らが見出しているコンヴィヴィアリティそのものを伝える。
山水郷の展示にあたって(うなぎの寝床・白水高広)
小さな行動の積み重ねが文化をつくる
小さな行動の集まりが生態系をつくる15年前、大学生のころ建築を学んでいた。安藤忠雄さんのコンクリート打ちっぱなしが全盛期の時代で、かっこいい建築物を誰もがつくろうとしていた。僕もそれに憧れていたが、ふと街をみるとかっこいい建築物が1つあっても地域にとって、暮らしは豊かにならないのではないか?と疑問が浮かんだ。人口減少で、使われていない建物も多く存在する中で、新しい建物を建てたり、新しい都市や町並みをつくっていくことに実感が湧かなかった。建築だけに限らず、今ある地域資源を有効に使った方がよいのではないか?僕と大学の友人であり、今一緒に仕事をしているパートナーの春口(ハル)は大学を卒業後就職せずに、訳も分からず地域に入り込みデザインの活動や、地域の人の話をひたすら聞いて、何か自分たちがやれることを探すという活動をはじめた(かっこよく言ったが立派なニートだ)。地域にはネット上に存在しない、面白い活動をしている人々が多く存在する。そういう方々に会うたびに「なんで、こんな面白い人たちの活動が知られていないのだろうか?」と疑問に感じていた。山水郷というものは短期間でつくりあげるものではなく、人々と自然の関わりであり、小さな生活の積み重ね、小さな行動の積み重ね、小さな意識の積み重ね、そしてそれらの交わりによって文化化され表層化したものである。地域に住む人々は自分たちが暮らしていく場所を見つめ、未来を想像して、議論し、大きな何か理想的な視点と、今日1日の行動をどうとるべきか?というマクロとミクロを行き来しながら、不安を抱え、喜び、悲しみ、楽しみ、様々な感情とともに、毎日を過ごしていくべきだと僕は考えている。それがどこに到達するかは、未だわからないがニョロニョロと活動を続けてみようと思う。
うなぎの寝床 白水高広
うなぎの寝床について
うなぎの寝床は福岡県⼋⼥市を拠点とし、地域に伝わる歴史や⽂化を独⾃に研究し、現代において経済的・社会的につないでいく仕組みを⾒出す「地域⽂化商社」。2012年7⽉の創業から、次世代へ継承していく「地域⽂化(ものづくり、まちづくり、⾷⽂化など)」の価値を⾒⽴て、社会とコミュニケーションを取れる商品・サービスを構築し、それが浸透していく仕組みを整え、つくりて(⽣産者)、つなぎて(地域⽂化商社)、つかいて(⽣活者)、そしてその先にある地域資源や⾃然も含めた⽣態系をつないでいく。
「山水郷のデザイン2 - 3つのコンヴィヴィアリティ」開催概要
会場 | GOOD DESIGN Marunouchi |
会期 | 2022年 7月15日(金)から8月14日(日)まで |
時間 | 11:00〜20:00 |