文化の多様性が融合する料理の空間

建築事務所Atelier Zébulon Perronは商業施設向けの独自のインテリアデザインで高い評価を受けているが、ニューヨーク市チェルシー地区にある芸術の中心地、Starrett-Lehighビルに、多文化的な料理の空間「Hav & Mar」を発表した。「Hav & Mar」はエチオピア生まれでスウェーデン育ちの有名シェフ、マーカス・サミュエルソンとの2回目のコラボレーション作品となり、サミュエルソンはニューヨークの多様な料理シーンでキャリアを磨いてきた。

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Hav & Mar
Photo credit: Alex Lesage

アフリカ、スカンジナビア、アメリカという多様な背景を持つサミュエルソンは、これらの文化的影響を美しく調和させるレストランを構想してた。「Hav」はスウェーデン語で「海」、そして「Mar」はエチオピアのアムハラ語で「蜂蜜」を意味する。Hav & Marは2022年後半のオープン以来、世界中の風味豊かで華やかな料理を提供し続けている。Atelier Zébulon Perronの創設者でありリードデザイナーのゼブロン・ペロンは「Hav & Marは文化の多様性と出会いをテーマにしており、そのテーマはアーティストデレク・アダムスによる人魚のモチーフや、リーダーシップを取る有色人種の女性たちにも反映されています」と語っている。

デザインの再構築:温かみと快適さの融合

Hav & Marはサミュエルソンの人生の集大成として設計されており、そのデザインは通常のレストランの経験を超えた社会的な交流を促進する空間を創出することに焦点を当てている。ペロンと彼の事務所はユニークな間取りに対して独自のアプローチで注目を集めており、Hav & Marでもそのクリエイティブなデザイン思考が発揮されている。空間の温かみをもたらすため、合板を基礎素材として採用し、壁や照明装置、個室のブースの枠組みなどに活用。さらに内装はペロンがデザインしたカスタムメイドの家具やヴィンテージ要素、そしてLambert & Filsとの共同制作による装飾照明が含まれている。暖かいブラウンや蜂蜜色のトーンがテールカラーの大理石と対照的に使われ、国際的で多文化的なライフスタイルが反映されている。

機能的な流れとデザインの調和

Hav & Marのデザインはオープンキッチンを採用し、料理の過程と訪問者との交流を促す。メインバーはキッチンの正面にあり訪問者の視線を引きつける場所となっており、効率的なフロアプランを追求し、メインバーとキッチン近くのスペースを最も人気のある席に変えることでレストラン全体の機能的な流れを最適化した。メインバーの上には、まるで海の生き物を思わせる大きな照明器具が配置され、訪問者に特別な存在感を感じさせる。このデザインは空間全体の縦の動きと統合されており、天井、床、壁からそれぞれ様々なデザイン要素が浮かび上がるように配置されている。そして、すべての照明装置はアートのようなスカルプチャーとして機能しながらも空間を温かく照らし、訪問者に印象的な体験を提供している。

Atelier Zébulon Perron

Atelier Zébulon Perronは2008年の創設以来、北米全土で数百件のインテリアデザインプロジェクトを手がけてきた。ブティックホテルやレストラン、バー、ラグジュアリーリテール空間、博物館展示まで、多岐にわたるプロジェクトに取り組んでいる。ペロンのスタジオは、細部への徹底的なこだわりと、オーダーメイドのオブジェや照明、家具を作り出すカスタマイズアプローチにより、業界内で重要な存在として知られている。プロジェクトのコンセプトビジョンと商業的な目標の調和を重視し、完成度の高い製品を提供している。