持続可能なデザイン、没入型体験、公共アクセスを組み合わせた最先端のプロジェクト
緑豊かな市民公園を兼ねた階段状の波型の屋根が特徴の建物のデザインは、中国・三亜の建築設計事務所aoeが担当した。屋上緑化は、来場者が楽しめる魅力的な公共空間を提供すると同時に、都市のヒートアイランド現象の緩和、エネルギー消費の削減、空気の質の向上にも貢献。また、屋上テラスの市民公園は、海の波をイメージしてレベルや傾斜を変えてデザインされる。
三亜亜州湾の熱帯気候の中で自然換気を促進するため、建物は大きな開口部、開閉可能な窓、天候に応じて調整できるルーバーを組み込み、日射遮蔽のルーフテラスはさらに太陽熱の上昇を緩和し、同時に訪問者がリラックスできる屋外スペースを提供している。この施設は一般に開放されており、海水浴、ダイビング、サーフィン、カヤックなど、さまざまなアクティビティを楽しめ、屋上テラスの展望台からは、素晴らしい海の眺めを臨むことができる。
ダイナミックなリテールとレジャーのストリートは、複合ビル内のさまざまなプログラムをつなぐこの通りは、訪問者がショッピングや食事をしたり、アクティビティの後にリラックスできる、活気ある社交の拠点となる。商業エリアは、この建物の海洋のテーマを反映したモダンな美的デザインで設計される。
深海博物館とスポーツセンターは、ルーフテラスで結ばれた2つの区画に設置。館内では、海洋生物や海洋探検に関する展示が行われ、最先端のテクノロジーを駆使して深海を体験することができる。また、来館者は海中生息地や潜水艦など、深海へのダイビングをシミュレートしたインタラクティブな展示を見学できる。
スポーツセンターには、ダイビングのトレーニングや水球の試合用に深さを調節できるプール、スプリングボードや台が設置されたダイビングプール、人工波のあるサーフィンプール、カヤックエリア、ビーチバレーコートなど、水上アクティビティ用の最新設備が用意され、プロのアスリートからレクリエーション目的の来場者まで幅広く対応できるように設計されている。
持続可能性は、このプロジェクトにおけるAOEの設計哲学の中核をなすもので、エネルギー効率の高い素材、再生可能エネルギー源、革新的な技術を使用し、二酸化炭素排出量を削減。また、屋上緑化、雨水利用システム、中水リサイクルシステムにより、水消費量の削減にも貢献している。
深海博物館・スポーツセンターは、教育を通じて環境保全の取り組みを促進することを目的としている。海洋保護に関するインタラクティブな展示もあり、汚染や乱獲から海を守るために人間がどのように貢献できるかを紹介する。更に、経済的持続可能性計画の一環として地元の人々に雇用機会を創出することも目的とし、建設過程では地元労働者の雇用、継続的な運営ではライフガード、メンテナンス要員、小売店アシスタントなどのスタッフが必要となる。このプロジェクトは、中国で最も象徴的なランドマークのひとつになる可能性を秘めており、同時に地元の人々や観光客に持続可能な観光の機会を提供するものでもある。
aoe
aoeは、2016年9月に設立された北京を拠点とする受賞歴のある建築設計事務所。aoeという名前は、アメリカの建築家バーナード・ツクミの「イベントのない建築はない」という表現に由来。この言葉を超えて、建築哲学はaoeの実践の核となる価値観である。