ADFミラノサローネデザインアワード2022 最優秀賞・優秀賞のご紹介
青山デザインフォーラム(ADF)主催の「ADF ミラノサローネデザインアワード2022」の最優秀賞・優秀賞受賞作品についての審査員からのコメントのご紹介と、最優秀賞を受賞された小川莉咲(Lisa Ogawa)さん/川島 与実(Tomomi Kawashima)さん、そして優秀賞を受賞された小林楓太さんとGaurav Waliさん/Yashika Munjalさんへのインタビューを踏まえたご紹介をいたします。
最優秀賞
「The beauty of wasting」
受賞アーティストのお2人が「自然界にみつけた魅力を突き詰めた作品。石は、古来より人の身近にあるにも関わらず、硬く冷たく無機質で、どこか遠い存在。そんな石という素材の価値を探求し、消耗という行為を結びつけることで、人の身近に置ける姿をデザインした。」と語る作品。各審査員から高い評価を得て、このたびの最優秀賞受賞となりました。本作品は、6月に延期になったミラノサローネ期間中にフォーリサローネのADFの会場で展⽰される予定です。
各審査員からのコメント
Piet Boon (Studio Piet Boon):これは持続可能な消耗品のための感動的なデザインです。 シンプルさと機能性から、時代を超越するものを感じます。 この作品には、さらなる形や物へと変わって行く可能性があります。 壊れて新しいものに生まれ変わるオブジェクトを作成し、使い捨て社会に貢献しない姿勢を評価しました。
Kota Bando (Bando x Seidel Meersseman):私が高評価した作品の共通点はデザインの良さ(形状の美しさ、機能性、マテリアルの選択、使い勝手の良し悪し、ユニークさ)です。使用者の立場になって良いな、使いたいな、欲しいなと思った作品を選ばせてもらいました。その中でもやはりアイデア的にそして”RE”に対しての回答が群を抜いて巧妙であると評価しました。この作品は、「re-」というテーマから表面的な印象にごまかし逃げてしまったり、曖昧で捉え所のなさに翻弄されたりする事なく、しっかりと熟考し明瞭で確固とした回答を導き出した深い作品だと感じました。面白い着眼点、素晴らしい発想力+閃きだけに満足せず、それらをしっかりと内包した美しい洗練された形体に落とし込められていると思います。複数のバリエーション、CGに頼らないプロトタイプ、美しいプレゼンテーションには非常に説得力があります。タイトル ”The beauty of wasting”はちょっと疑問なのですが、逆説的な皮肉なのでしょうか?
Magnus Gustafsson (Yarō Studio):Lisa OgawaさんとTomomi Kawahimaさんのプロジェクトは、「re_」のコンセプトを文字通りに解釈することで、ADFミラノサローネデザインアワードのすべての要素をひとつに集約し、反映しています。 所有者によって再循環および再構築(つまりre-BORN)される製品設計のアイデアは、永遠に所有するという現在の考え方とは対照的、革新的かつ独創的です。 気候変動への解決策が世の中の最優先課題のひとつである現代において、私たちの生き方は消費方法から変えていかなければならないと理解することが重要です。 それと同時に、このプロジェクトは各個人のヒストリー(経験)について対話することを勧めています。
Eric Clough (212box):一般的に、製品は損傷を受けたり、破損したり、弱体化したりすることを嫌いますが、「The beauty of wasting」の魅力は、非常にシンプルで美しく、概念的に強くて、大変思慮深いデザインであるということです。 自身で製品を作り直すことができることも非常に魅力的な特徴です。
受賞者 小川莉咲/川島 与実
両者とも、1997年東京生まれ、2020年多摩美術大学プロダクトデザイン学科卒業。それぞれのポリシーは、「絡まった糸を丁寧に解いて、一本の筋道を通すこと」(Ogawa)、「暮らしの些細な違和感に自分の感性で解釈を見つけること」(Kawashima)。代表作品には、空間演出の可能性を広げる、フレキシブルなシリーズランプや、座る行為から生まれるユニット式キッチンダイニングなどがあります。
シリーズランプ:北欧住宅のように、廊下や壁を作らない住まいが、日本でも広がりつつある。開放的な間取りは、家族との距離を縮めるには最適だが、パーソナルスペースの確保という点においては、一考の余地がある。やわらかく、ほのかな照明を、部屋に一つひとつ散りばめることで、あかりの元に自分だけの空間が広がる。「Fami」は、家族のくつろぎの空間、パーソナルな空間の両立を図る。(Ogawa)
ユニット式キッチンダイニング:車いすに合わせたローキッチンとダイニングテーブルを1つにすることで、家族の座る行為を集め、コミュニケーションの中心となる空間を生み出す。何らかの後遺症でハンディを背負うと家族との関係が介護する、されるに変わる。どちらかに寄り添うと片方には使いづらく、結局気まずさや遠慮が残ってしまうことが多い、そんな関係性を変えたくて”異なる条件の人が共に暮らす”ということに着目し、制作した。ただ便利にするのではなく、その先の姿を想像したときに、家は家族みんなが笑顔で過ごせる空間であってほしい。(Kawashima)
今後の夢は、「素敵な映画をみたときの弾むような衝動、魅力的なものに出会えたときのきゅんする小さな感動。誰かのエネルギーになるデザインをつくりたい」(Ogawa)、「お気に入りの道具を使う時や、休みの日にする二度寝のような、無意識の小さな幸せを感じられるものや空間をつくりたい。」(Kawashima)。